職人・ドライバー・介護職もSNSで採用できる!現場系人材の集め方

求人広告を出しても応募が集まらない——。
建設・運送・介護など、いわゆる“現場系”の業界で、この悩みを抱えている経営者は少なくありません。少子化による労働人口の減少に加え、若い世代の働く価値観が大きく変わりつつあります。給与や勤務条件よりも「雰囲気の良い職場」「人間関係が安心できる環境」を求める声が増え、従来型の求人票やハローワークだけでは心に響かなくなっています。
そんな中で注目を集めているのが、SNSを活用した採用ブランディングです。
InstagramやTikTokを中心に、「職人の手元」「ドライバーの日常」「介護現場の笑顔」など、リアルな現場の姿を発信する企業が増えています。写真1枚、動画数十秒でも、見る人の心を動かし、“この会社で働いてみたい”という想いを生み出します。
本記事では、現場系の採用にSNSがなぜ有効なのか、その具体的な運用方法、さらにAI時代の新しい採用マーケティングの形までを、実例を交えながら詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
目次
第1章 求人広告が届かない時代に、SNSが変える採用のかたち
SNSが“求人票の代わり”になる時代
以前は「給与」「勤務地」「勤務時間」といった条件が採用の中心でしたが、現在の求職者はそれだけでは動きません。SNSの普及によって、企業の内側を“見る”ことが当たり前になったからです。
たとえば、Instagramで「#トラックドライバー」「#建設職人」「#介護スタッフ」などと検索すると、実際に働く人たちの日常が溢れています。求職者はこうした投稿を見ながら、「どんな雰囲気の会社か」「上司や同僚の人柄はどうか」「長く働けそうか」といった“リアル”な情報を探しているのです。
若手が反応するのは“空気感”
Z世代・ミレニアル世代の多くは、言葉より映像で判断します。
たとえば、ドライバーが出発前にトラックを磨いている様子や、職人が集中して木材を加工する姿、介護スタッフが利用者と談笑するシーン。たった数秒の動画でも、そこで流れる空気や人間関係の良さが伝わります。
つまり、SNSは求人票には書けない“人の温度”を伝えるツールなのです。
求人広告では伝えられない「ここで働きたい」という感情を引き出すには、視覚的・感情的な訴求が欠かせません。
SNS発信が企業の“信頼指標”になる
さらに、SNSでの継続的な発信は、企業の“誠実さ”や“透明性”の象徴にもなります。
投稿が定期的に更新されている企業は、「情報がオープンで信頼できる」「今も元気に活動している」という印象を与えます。逆に、情報が古い企業やSNSが放置されたままのアカウントは、それだけで印象が悪くなることも。
現代の採用において、SNS運用はもはや“選ばれる企業”の条件と言えるでしょう。
第2章 職種別に見るSNS活用のポイント
職人(建設・製造系)——技術と誇りを映す
職人の世界では、「見て覚える」「経験で学ぶ」という文化があります。だからこそ、“技の継承”を映像で見せることが最も効果的です。
施工現場の動画、工具を扱う音、仕上がりの美しさ。こうした素材は職人を目指す若者にとって、何よりも説得力があります。
また、ベテランが若手を指導する様子や、仕事後に笑顔で談笑する場面なども好印象を与えます。
「厳しい職場」ではなく、「人と技が支え合う現場」というイメージづくりが、採用成功の鍵となります。
ドライバー(運輸・物流系)——安全と仲間意識を伝える
運送業は長時間労働や孤独な仕事というイメージを持たれがちですが、SNSで“チームワーク”を伝えることで印象は一変します。
点呼の様子、休憩中の雑談、車両整備の瞬間などを短く切り取るだけで、働く環境の良さが伝わります。
また、TikTokやInstagramリールで「1日の流れ」や「お気に入りのトラック紹介」などを発信すれば、同業者やドライバー志望者からの反応も得やすく、業界全体への好感度アップにもつながります。
介護職(福祉・医療系)——“人の温度”を伝える
介護の現場では、「やりがいはあるけど大変そう」というイメージが先行しがちです。
だからこそ、SNSで伝えるべきは“あたたかさ”です。
利用者とのコミュニケーションやイベント風景、スタッフ同士の支え合いなどを丁寧に発信することで、職場全体の安心感を伝えることができます。
写真の表情、会話の一コマ、清潔な施設内の雰囲気——そうした一瞬が、応募者の不安を解消する“信頼の証拠”になります。
職種
SNSで伝えるべき魅力
職人
技の美しさ・手仕事の誇り・人と人のつながり
ドライバー
チームワーク・安全意識・働きやすい日常
介護職
あたたかさ・笑顔・職場の信頼感
第3章 SNSを活かした採用ブランディングと発信のコツ
“数”より“共感”を重視する採用へ
SNS採用の本質は、単に応募数を増やすことではありません。大切なのは、企業の価値観や文化に共感してくれる人材を惹きつけることです。
建設会社なら「技術を継承し、未来の職人を育てる」。運送会社なら「安全とチームワークを守る仲間を求める」。介護施設なら「人の笑顔を支える現場を共に創る」。
こうした言葉を投稿の端々に込めることで、“理念に共感する人”が自然と集まってきます。
人を主役にする投稿が信頼を生む
採用活動で最も強力なコンテンツは「人の姿」です。
社長、現場リーダー、若手社員——それぞれの視点で語られるリアルな声こそが、求職者に響きます。
「この人と働きたい」と思わせる投稿は、派手な広告よりもずっと効果的です。
笑顔の写真、インタビュー形式の動画、あるいは短い“現場の声”でも構いません。人が見えることで、会社が信頼されるのです。
ストーリーを積み重ねることがブランドになる
SNSは、単発の投稿ではなく“継続的な物語”です。
「入社1年目の成長」「チームで達成したプロジェクト」「現場でのちょっとした工夫」など、日々の出来事を丁寧に発信することで、会社全体のブランドストーリーが形になります。
見た人に「この会社の人たち、いいな」と思わせた瞬間、それが最も強力な採用広告になります。
第4章 現場発信を継続させる“仕組みづくり”の重要性
継続できるチーム運用の仕組みを
SNS採用で最も多い失敗は、「最初だけ頑張って止まる」ことです。
現場が多忙で投稿が途切れ、アカウントが放置されてしまう。このパターンを避けるためには、現場と広報が連携できる“継続型の体制”を整えることが必要です。
現場で写真や動画を撮り、広報担当が編集・投稿を担当する——この役割分担を仕組み化するだけで運用は安定します。
投稿データを分析して“次”を改善
SNSは感覚ではなく、データで改善する時代です。
Instagramでは「保存率」、TikTokでは「視聴完了率」などの数値を定期的に確認し、どの投稿が反応を得ているのかを可視化します。
それを基に投稿の方向性を微調整することで、少しずつ「応募につながる投稿」が増えていきます。
SNS運用とは、試行錯誤の積み重ねそのものです。
第5章 AIが支える次世代の採用マーケティング
AIが投稿を最適化する時代
AIは、企業のSNS採用を一変させつつあります。
AIが過去の投稿内容や閲覧データを分析し、最適な投稿タイミング・ハッシュタグ・文章トーンを自動で提案する仕組みが広がっています。
「どんな投稿が伸びやすいのか」をAIが事前に予測することで、担当者の感覚に頼らない効率的な運用が可能になります。
AIが作る“伝わるクリエイティブ”
AI画像生成や自動編集を使えば、現場で撮影したスマホ動画でも、短時間で洗練されたリクルート映像を作ることができます。
AIナレーションでインタビュー動画を自然に整えたり、AIが作成した字幕を入れることで見やすいコンテンツに仕上げたりすることも簡単です。
AIはあくまで“人を引き立てるツール”。人の想いや現場の温度を損なわずに、発信の質とスピードを高めてくれます。
SNS運用代行でAIを最大限に活かす
とはいえ、AIの導入やSNS運用には専門的な知識と時間が必要です。
そのため、多くの企業がSNS運用代行サービスを活用しています。
企画・撮影・投稿・分析までをプロが一括で行い、企業の採用力を底上げする仕組みです。
“発信の習慣化”と“データ分析”の両輪を整えることで、現場は本業に集中しながら継続的に人材を惹きつけることができます。
第6章 SNS採用は経営戦略である——人が集まる企業文化をつくる
経営者の発信が“信頼”をつくる
SNS採用を成功させる企業には、ある共通点があります。それは、経営者自らが“発信の意義”を理解していることです。
「うちの会社は何を大切にしているのか」「どんな人と働きたいのか」——このメッセージを社長自身が発信することで、社員にも誇りと一体感が生まれます。
経営者の言葉は、何よりも強いブランディングツールです。
“発信する文化”が会社を変える
SNS発信は単なる採用手段ではなく、企業文化づくりの一部でもあります。
社員が「今日の現場を撮ろう」「この出来事を投稿しよう」と自発的に発信しはじめると、社内コミュニケーションが活性化します。
外に向けた発信が、内側のチームワークを強くする——これがSNSのもう一つの効果です。
SNSは“人を惹きつける経営インフラ”へ
これからの時代、SNSは単なる広告媒体ではなく、企業の信頼を可視化するインフラとなります。
「どんな会社なのか」「どんな人が働いているのか」「どんな想いで仕事をしているのか」。
この3つを伝えられる企業こそ、優秀な人材から選ばれ、地域からも支持される存在になります。
SNS採用とは、採用活動を超えた“経営の言語化”なのです。
まとめ
職人・ドライバー・介護職といった現場系の仕事こそ、SNSで「人の温度」「仕事の誇り」「仲間との信頼」を伝えることが採用成功の鍵となります。
求人票では伝わらない価値を、SNSは視覚的に、感情的に届けることができます。
AIとSNSを組み合わせれば、限られた時間と人員でも、継続的な採用発信が可能です。
そして何より、発信を続けることが、社内の自信と文化を育てます。

