新事業進出補助金と持続化補助金の違いを徹底比較|どちらを選ぶべき?

コロナ禍以降、多くの中小企業が活用してきた代表的な2つの補助金――
「新事業進出補助金」と「小規模事業者持続化補助金」。
どちらも国が中小企業を支援する制度ですが、対象・目的・申請条件・補助金額が大きく異なります。
「自社が使えるのはどちら?」「両方申請してもいいの?」と迷う経営者も多いはずです。
本記事では、両者の違いをわかりやすく比較し、自社の目的に合った選び方と申請のポイントを専門的に解説します。
補助金を“もらえるお金”で終わらせず、“事業を成長させる資金”として使うための視点をお伝えします。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は資金調達の支援実績300件以上、事業計画書の策定支援実績500件以上など中小企業支援に特化。中小企業にとってメリットの大きい経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用も支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc
目次
第1章 そもそも補助金とは?融資との違い
まず押さえておきたいのが、**「補助金は返済不要の資金」**であるということ。
金融機関の融資と異なり、採択されれば使った経費の一部が国から支給されます。
ただし、
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申請→採択→実施→報告→精算→支給という流れで「後払い」
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採択率は50%前後(制度により変動)
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申請書類が多く、事業計画の完成度が問われる
といった特徴があります。
したがって「確実にもらえるお金」ではなく、「しっかり準備すればもらえるチャンスがある資金」と理解しましょう。
第2章 新事業進出補助金とは|業態転換・新分野展開のための大型支援
新事業進出補助金は、コロナ以降の経済構造の変化に対応して新たな挑戦を支援する制度です。
従来の事業を転換したり、新分野に進出したりする中小企業を対象としています。
2-1. 制度の概要
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目的:新分野展開・事業転換・業種転換など、思い切った事業再構築を支援
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補助金額:100万円〜最大8,000万円(事業規模により異なる)
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補助率:中小企業2/3、再生事業者3/4など
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対象経費:建物改修費、機械装置費、広告宣伝費、人件費の一部など
たとえば、飲食店が「冷凍弁当EC事業」を新設したり、製造業が「医療機器部品」へ転換したりするケースが典型です。
2-2. 審査のポイント
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既存事業との明確な違いが説明できているか
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数字に基づいた市場分析・収益計画があるか
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補助事業終了後の持続的成長戦略が描けているか
採択率はおおむね30〜40%前後。
事業計画書の完成度が成否を大きく左右します。
第3章 小規模事業者持続化補助金とは|販路開拓・広告費に使える身近な制度
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や個人事業主でも申請しやすい販路開拓支援です。
店舗改装・チラシ制作・ホームページ制作・広告など、比較的小規模な取り組みに向いています。
3-1. 制度の概要
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目的:新たな顧客開拓・売上拡大・経営改善の支援
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補助金額:最大200万円(通常枠は50〜100万円)
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補助率:2/3(賃金引上げ枠・インボイス枠など条件で加算あり)
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対象経費:広告費、展示会出展費、設備費、販促物制作など
3-2. 審査のポイント
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自社の強みと課題が分析されているか
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具体的な販路開拓計画(SNS・EC・広告など)が明示されているか
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投資額と期待効果のバランスが現実的か
採択率は50〜60%前後と比較的高く、初めて補助金に挑戦する事業者におすすめの制度です。
第4章 新事業進出補助金と持続化補助金の違いを比較表で整理
項目
新事業進出補助金
小規模事業者持続化補助金
主な目的
新分野展開・業態転換・構造改革
販路開拓・広告・顧客拡大
対象者
中小企業・中堅企業
小規模事業者・個人事業主
補助金額
100万円〜8,000万円
最大200万円(通常枠50万円)
補助率
2/3〜3/4
2/3(条件により変動)
審査難易度
高い(計画の整合性が重要)
中程度(初申請者向け)
主な経費
設備・建物改修・人件費・広告
広告・HP制作・販促物・展示会
採択率
約30〜40%
約50〜60%
申請先
- 新事業進出補助金事務局(電子申請)
商工会・商工会議所経由
目的の方向性
“業態を変える”支援
“今の事業を伸ばす”支援
**つまり、「再構築=変革」、「持続化=拡販」**と覚えると理解しやすいです。
第5章 どちらを選ぶべき?タイプ別おすすめ活用法
5-1. 新事業進出補助金をおすすめしたい人
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既存の事業が縮小傾向にあり、新分野へ転換したい
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店舗や設備の大規模改修を予定している
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売上規模が大きく、投資額が500万円以上になる
例:飲食店 → ゴーストキッチン/製造業 → 医療機器分野/宿泊業 → ワーケーション施設
5-2. 持続化補助金をおすすめしたい人
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初めて補助金に申請する個人・小規模事業者
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ホームページ・SNS・チラシなど広告費に使いたい
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店舗改装や新サービスPRをしたい
例:美容院 → 新メニュー導入/整骨院 → チラシ広告/ECショップ → SNS運用強化
5-3. ステップアップ活用も可能
まず持続化補助金で販路拡大・顧客基盤を作り、
次のステップで新事業進出補助金
に挑戦する流れもおすすめです。
「小規模 → 成長 → 再構築」へ段階的に進むのが理想的です。
第6章 併用できるケースと申請の注意点
両方の補助金を同時に申請・採択されることは原則不可ですが、
対象経費や事業目的が明確に分かれている場合は時期をずらして併用可能です。
6-1. 併用のポイント
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同じ内容・同じ経費で申請しない
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一方の補助金で採択後、別の目的で申請する
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補助金終了後に次の計画を立てる
例:
「持続化補助金で広告制作 → 翌年、再構築補助金で新事業立ち上げ」など。
6-2. 注意点
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補助金は事前着手NG(契約・支払い前に採択が必要)
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実績報告書や領収書をしっかり管理する
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申請代行業者トラブルに注意(認定支援機関と連携が安全)
まとめ
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再構築補助金:新分野・業態転換を支援する“攻めの投資”
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持続化補助金:販路開拓・広告支援を中心とした“地道な成長”
どちらを選ぶかは、「今の課題が“転換”なのか、“拡大”なのか」で決まります。
どちらも正しく活用すれば、事業を数年単位で成長させる大きな武器になります。

