飲食店必見|厨房機器の導入費を抑える補助金活用法

飲食店を経営するうえで避けられないのが厨房機器の導入や更新です。冷蔵庫やオーブン、食洗機といった機器は高額で、まとまった投資が必要になります。しかし、実は国や自治体が提供する補助金を上手に活用すれば、導入コストを大幅に削減することが可能です。

この記事では「厨房機器×補助金」をテーマに、最新の補助金制度の概要から申請時の注意点までを徹底解説します。飲食店経営者の方が、補助金を賢く使いながら設備投資を進められるようにまとめました。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は資金調達の支援実績300件以上、事業計画書の策定支援実績500件以上など中小企業支援に特化。中小企業にとってメリットの大きい経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用も支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc 

目次

1. 厨房機器導入に補助金を活用できる理由

飲食店にとって厨房機器は、日々の営業を支える「心臓部」といえる存在です。冷蔵庫やオーブン、フライヤー、食洗機などは高額なうえ、数年単位で更新が必要になります。しかし、設備投資を自己資金だけでまかなうのは大きな負担となり、資金繰りを圧迫してしまうことも少なくありません。

 

そこで注目されているのが**「厨房機器導入に使える補助金」**です。国や自治体は飲食業界の生産性向上や省エネルギー化を推進するために、さまざまな支援策を用意しています。特に、省エネ性能の高い厨房機器や、人手不足を補う自動化機器は、政策目的に合致しやすく、補助対象になりやすい傾向があります。

 

例えば、省力化補助金や小規模事業者持続化補助金などは、厨房機器の導入を通じた業務効率化や売上拡大を後押しする制度として利用可能です。つまり、補助金を活用することで「必要な投資」と「経営改善」の両立が実現できるのです。

2. 飲食店が利用できる代表的な補助金制度

飲食店が厨房機器導入時に検討できる補助金は複数あります。制度ごとに目的や対象が異なるため、自店の状況に合ったものを選ぶことが重要です。

2-1. 小規模事業者持続化補助金

この制度は、小規模事業者が自ら策定した経営計画に基づき、販路開拓やその取組と一体の業務効率化(生産性向上)を行う際の経費を支援するものです。飲食店にとっては、厨房機器の導入が新メニューの展開、提供方法の刷新、回転率の向上、顧客体験の強化と結び付く場合に有効です。単なる入替・更新では対象外になり得るため、“売上に繋がる取組”としての設計が必須です。

 

基本の補助上限は50万円、補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)。さらにインボイス特例で+50万円賃金引上げ特例で+150万円両方満たせば+200万円まで上乗せされます。いずれの特例も要件を満たさない場合は全体が交付対象外となるため、申請時点から逆算した体制づくりが重要です。

 

対象経費は機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費など。厨房機器は機械装置等費で計上します。ただし、通常活動のための費用や単なる取替・更新は対象外1点50万円(税抜)以上は処分制限財産となり、見積要件や処分時の承認・返還規律が発生します。中古品は原則“単価50万円未満”かつ“中古販売事業者からの相見積が必要”など制約が明確です。ウェブやシステム関連は“ウェブサイト関連費”で計上するのが原則です。

2-2. ものづくり補助金

制度の目的は、物価高や賃上げ等の環境変化に対応し**“稼ぐ力”を強化するための革新的な新製品・新サービス開発、又は海外需要開拓のために必要な設備投資**の補助です。機械を入れるだけの更新は対象外で、新製品・新サービスの開発やプロセスの革新が条件です。飲食店で厨房機器を入れる場合でも、例えば「新調理法の確立」「提供スピードと品質の両立」「新しい付加価値メニューの創出」などに結び付く計画設計が必要になります。

 

上限額・補助率(製品・サービス高付加価値化枠)は従業員規模に応じ、5人以下で750万円、6〜20人で1,000万円、21〜50人で1,500万円、51人以上で2,500万円が上限。中小企業は1/2、小規模事業者は2/3が原則です。特例(大幅賃上げ・最低賃金引上げへの取組)に該当すると上限上乗せ(+100〜1,000万円)や補助率2/3が適用される運用が明示されています。

 

補助対象経費には、厨房機器を含む機械装置・システム構築費(専用ソフトや据付・改造・修繕を含む)が入り、機械装置等は原則1点50万円(税抜)以上が必要です。中古機器も条件付きで可(中古流通業者が型式・年式を記載した相見積もりを取得する等)。外注費・専門家経費・クラウド利用費・広告宣伝費などの周辺経費も一定範囲で対象になります。

 

この制度は賃金や最低賃金水準の目標設定等の基本要件が特徴で、未達時の返還の考え方、特例の返還免除の考え方まで整理されています。単純更新では不可付加価値の増加・賃上げまでを見据えた事業計画が要諦です。

2-3. 中小企業省力化投資補助事業

制度の目的は、人手不足に悩む中小企業等の省力化投資を後押しし、デジタル技術やロボット等の活用で業務の自動化・効率化を進めることです。オーダーメイド設備の定義、省力化指数付加価値額・労働生産性の算定式が明確に示され、導入で「どれだけ業務が減るか」を定量で示すことが中心思想です。

 

事業の流れは公募→申請→審査→交付決定→実施→確定検査→支払い→効果報告という一般的ステップで、補助対象事業者は“生産・業務プロセス、サービス提供方法の省力化”を行う者。上限額は**従業員5人以下:750万円(特例時1,000万円)、6〜20人:1,500万円(2,000万円)…101人以上:8,000万円(1億円)**と段階設定され、補助率は1,500万円までの部分は中小企業1/2(特例時2/3)、小規模事業者2/3、超過部分は1/3という二段建てです。

 

基本要件として、最低賃金+30円水準の確保、一般事業主行動計画の公表(従業員21人以上)、省力化指数の提示などが求められます。さらに「機器導入前後で削減される業務に要していた時間」を根拠に省力化を示すこと、新規出店等でも将来の削減時間を見込める場合は計上可など、“省力化の実証・説明責任”が極めて重要です。

 

対象経費は、機械装置・システム構築費(必須)に加え、運搬、技術導入、知財、外注、専門家、クラウド等が並ぶ設計で、3〜5年の保守・メンテ契約や、外部Slerの連携・継続体制の確保にも触れられています。重複補助や適さない事業の列挙も詳細で、他制度との重複受給は不可等の原則も再確認されています。

3. 厨房機器で補助金対象になりやすい設備とは?

補助金の対象となる厨房機器には共通する特徴があります。大前提は「単なる入替ではなく、新しい価値や効率化を生む投資」であること。ここでは、代表的な補助金制度ごとに対象になりやすい厨房機器の傾向を整理します。

3-1. 持続化補助金に適した厨房機器

持続化補助金は、販路開拓や売上拡大と一体の取組でなければなりません。そのため、厨房機器単体ではなく、集客や新しい顧客層獲得に結び付けられる設備が対象になりやすいです。

 

  • 新メニュー開発を可能にする調理機器(例:低温調理器で新しいテイクアウト商品を展開)

  • 短時間で大量提供を可能にする機器(例:高速オーブンを活用したランチ強化→回転率増)

  • 商品保存・持ち帰り品質を高める設備(例:高性能冷蔵・真空パック機でEC販売へ展開)

 

ここでは「設備導入 → 新商品・サービス誕生 → 販路拡大」という売上ストーリーを描けるかどうかが成否を分けます。

3-2 ものづくり補助金に適した厨房機器

ものづくり補助金では、新製品・新サービスの開発や生産プロセスの革新を伴うことが必須です。したがって、機器そのものが革新的であるか、既存メニューにない新しい調理方法を可能にするかがポイントになります。

 

  • 高温短時間調理を可能にする高速加熱オーブン

  • AI制御による火加減調整付きの自動調理機器

  • 温度・湿度を精密に管理し、新しい調理法を確立できるスチームコンベクション

 

これらは「従来にない商品提供」や「工程革新」として説明でき、補助金の趣旨に合致します。

3-3 省力化補助金に適した厨房機器

省力化補助金は、人手不足の解消や省力化効果の定量的な説明が中心です。導入前後で「どれだけ作業時間が削減できるか」を算出できる設備が対象として評価されやすいです。

 

  • 自動フライヤー(油量・温度管理を自動化し、人手削減に直結)

  • 自動麺ゆで機・自動盛付機(単純作業の時間短縮と均質化)

  • 連続式食洗システム(従業員の後片付け時間を大幅削減)

 

重要なのは「1皿あたり〇分削減 × 1日の提供数 = 年間削減時間」を提示し、省力化指数や労働生産性改善に直結させることです。

3-4. 共通の“落とし穴”と注意点

  • 単なる更新では不可(老朽化した冷蔵庫を買い替えるだけでは対象外になりやすい)

  • 導入効果を定量化できるかがカギ(時間削減、売上増、粗利改善を数字で示す)

  • 周辺経費も含めた計画設計(据付費・ソフト費・保守費・広告宣伝費まで含められる制度もある)

 

つまり、厨房機器の導入を「経営改善につながる投資」として位置づけられるかどうかが、採択率を左右します。

4.補助金申請の流れと注意すべきポイント

厨房機器導入のために補助金を活用するには、制度ごとのルールに沿った申請手続きが不可欠です。基本的な流れは共通していますが、求められる書類や評価ポイントには違いがあります。ここでは全体像と制度別の注意点を整理します。

4-1. 共通の申請フロー

どの補助金でも大枠の流れは次の通りです。

 

1.事業計画の策定

厨房機器導入をどう売上や効率化につなげるかを、数値を交えて計画書にまとめます。

 

2.必要書類の準備

見積書、会社概要、決算書などを揃えます。補助金ごとに求められる添付書類が異なるため要注意です。

 

3.申請(電子申請が主流)

ものづくり補助金はjGrants、省力化補助金は専用サイト、持続化補助金は商工会議所・商工会を通じて申請します。

 

4.審査・採択

書面審査中心で、事業の新規性や省力化効果、販路開拓効果などが評価されます。

 

5.交付決定後に着手

交付決定前に発注・支払いした経費は対象外です。必ず決定通知を待ってから契約します。

 

6.事業実施・報告

厨房機器を導入し、稼働状況や効果を実績報告書にまとめます。精算払いのため、自己資金を先に用意しておく必要があります。

4-2. よくある失敗と回避策

  • 交付決定前に発注してしまう → 全額対象外

  • ただの更新投資として記載 → 採択落ち

  • 導入効果を数値で示さない → 評価不足

  • 特例の条件を満たさず申請 → 不交付

 

解決策はシンプルで、「経営改善ストーリーを数値で語る」ことと「申請要件を事前に潰す」ことです。

補助金活用で期待できる効果

補助金を活用して厨房機器を導入することは、単なる経費削減策ではなく、飲食店経営全体の改善と成長を後押しする取り組みとなります。ここでは、実際にどのような効果が期待できるのかを整理します。

5-1. 投資回収のスピード化

補助金を活用すれば、自己資金の負担を大幅に減らせます。

例:500万円の厨房機器を導入する場合

 

  • 補助金なし → 全額500万円を負担

  • 補助金2/3 → 自己負担は約167万円

 

この差により、投資回収期間を大幅に短縮できます。導入後すぐに売上増や効率化効果が表れれば、初年度から資金繰りに余裕が生まれ、次の成長投資にもつなげられます。

5-2. 人材戦略と賃上げ対応

補助金制度では賃上げ要件が組み込まれているケースが多くあります。これを単なる義務と捉えるのではなく、従業員の定着と採用力強化の機会として活かすことが重要です。

 

厨房機器による効率化で残業削減や労働負荷の軽減を実現すれば、働きやすい環境を整備できます。その結果、賃上げを実行しても収益性を維持できる構造を築くことが可能です。

まとめ:厨房機器補助金を活用して賢く投資する

飲食店にとって厨房機器の導入は、日々の営業を支える大きな投資です。補助金を活用すれば、自己負担を抑えつつ投資回収を早め、売上拡大や人材戦略の強化につなげられる可能性があります。

 

  • ものづくり補助金:新しい調理法やサービス開発と一体で機器を導入する場合に有効

  • 省力化補助金:人手不足解消や自動化による省力化を明確に説明できる場合に有効

  • 持続化補助金:新メニュー開発や販路拡大と結びつく厨房機器導入に活用可能

 

いずれの制度でも共通するのは、単なる更新では対象にならないという点です。厨房機器導入が「経営改善」に直結することを数値や計画で示すことが、採択のカギとなります。

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