小規模事業者持続化補助金における従業員数の数え方|役員・パートは含まれるのか?

小規模事業者持続化補助金を申請する際、最も重要なチェックポイントの一つが「常時使用する従業員数」です。業種ごとに定められた人数制限を超えると、どれだけ事業計画が優れていても申請資格を満たせません。

ところが「従業員数」と一口にいっても、役員を含めるのか、パートやアルバイトはどう扱うのか、育児休業中の社員は数に入れるのかなど、現場で迷いやすいグレーゾーンが多く存在します。実際に補助金の申請支援を行っていると「正社員は当然数えるけど、役員や短時間パートはどうすればいいの?」という質問を数多くいただきます。

この記事では、公式の公募要領に基づき、「常時使用する従業員数」の考え方を整理し、役員・パート・休職者の扱いについて詳しく解説します。これを理解することで、自社が申請対象となるかを正確に判断でき、安心して申請準備を進めることができます。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc

目次

1. 従業員数の基準と申請資格の重要性

小規模事業者持続化補助金の対象となる従業員数は業種ごとに異なります。

 

  • 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):5名以下

  • 宿泊業・娯楽業:20名以下

  • 製造業その他:20名以下

 

ここでいう「常時使用する従業員」は、単なる「在籍社員数」ではありません。雇用契約の内容や労働時間、役員との兼務の有無など、詳細なルールに従って算定する必要があります。

 

例えば「5名以下」という条件は小売業や飲食業にとって非常にシビアです。正社員3名に加え、週30時間勤務のパートが3人いれば、実質6名とカウントされる可能性があり、要件を超えてしまいます。このように、従業員数のカウント次第で申請資格が変わるため、慎重に確認することが不可欠です。

2. 常時使用する従業員に含めないケース

会社役員の扱い

取締役や監査役といった役員は原則として従業員には含まれません。役員は会社の経営者としての立場が強く、労働者として常用雇用されているわけではないためです。

ただし、役員でありながら日常的に現場業務を担い、従業員として給与を受け取っている「兼務役員」の場合は従業員に含めます。この線引きを誤ると申請差し戻しのリスクがあります。

個人事業主本人と同居親族

個人事業主本人は当然ながら従業員に含まれません。また、同居している親族従業員も対象外です。これは、事業の経営主体と一体であると考えられるためです。

 

休職中の従業員

育児休業や介護休業、長期病気休職中の社員も、申請時点で休職中であれば人数に含めません。ただし復職したタイミングからは再度カウント対象となります。

 

パート・アルバイトの扱い

全員が自動的に従業員数に含まれるわけではなく、労働時間や契約形態により扱いが異なります。次の章で詳しく説明します。

3. パートタイム労働者の「4分の3基準」の詳細

パート・アルバイトが従業員に含まれるかどうかは「通常の従業員の労働時間」と比較して判断します。

 

  • 1日または1週間の労働時間、かつ1か月の所定労働日数が通常の従業員の4分の3以下 → 含めない

  • それ以上働いている → 含める

 

ここでいう「通常の従業員」とは、正社員に限らず、その事業所で基幹的な働き方をしている人を指します。正社員がいない場合でも、フルタイムで勤務している契約社員がいれば、その人が基準となります。

例えば、正社員の労働時間が1日8時間・月20日である場合、1日6時間・月15日勤務のパートは「4分の3以下」に該当し、カウントされません。逆に1日7時間・月20日働いていれば従業員に含める必要があります。

4. 判断が難しいケースと具体的な判断方法

従業員数の判定では、次のような迷いやすいケースが多く見られます。

 

  • 契約社員 → 長期雇用を前提にしている場合は通常従業員として含める

  • インターン → 無償なら対象外、有償で長期雇用に近ければ含める場合あり

  • シフト制のアルバイト → 実労働時間を集計し、4分の3基準で判断

  • 家族従業員(同居でない場合) → 一般の従業員と同様にカウント

 

不明確な場合は、就業規則・労働契約書・賃金台帳などの証拠資料をもとに判断し、必要に応じて商工会議所や支援機関に確認することが望ましいです。

5. よくある誤解と申請差し戻しリスク

  • 「役員だから従業員に入れるべき」と誤解して全員をカウントしてしまう

  • 短期アルバイトをすべて含めてしまい人数オーバーになる

  • 育休中の社員を誤って含めてしまう

  • 「正社員がいない=通常従業員がいない」と考えてしまう

 

これらは申請時によくある誤解です。誤ってカウントした場合、審査で補助金対象外と判断される恐れがあります。特に人数上限ギリギリの企業は、数え方次第で申請可否が大きく変わるため注意が必要です。

6. まとめ:従業員数の定義を正しく理解することが申請の第一歩

  • 役員・同居親族・休職中の社員は含めない

  • パートは労働時間が通常の4分の3を超える場合のみ含める

  • 判断基準は就業規則や労働契約に基づいて行う

  • 誤った従業員数は申請資格の喪失や差し戻しの原因となる

 

正しい理解があれば「申請できるのか」という根本的な不安を解消し、補助金申請をスムーズに進めることができます。

無料相談・お問い合わせ

従業員数の定義に迷ったまま申請を進めるのは危険です。当社は中小企業庁の認定支援機関として、数多くの持続化補助金申請を支援してきました。

「役員兼務はどう扱う?」「短時間パートは含める?」といった具体的な疑問をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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