小規模事業者持続化補助金における「不動産の取得」該当工事とは?増築やコンテナ設置を検討する際の注意点

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化のために幅広い経費が認められる一方で、「不動産の取得」にあたる工事は対象外とされています。ここでいう「不動産の取得」とは、土地や建物を購入する場合だけではなく、建物の増築や増床、あるいはコンテナハウスやプレハブの設置といった工事も含まれる可能性があります。
特に注意したいのは、固定資産税の課税客体である「家屋」の認定基準を準用して判断される という点です。つまり、見た目は簡易な工事であっても「家屋」とみなされれば補助金対象から外れてしまうのです。
この記事では、「不動産の取得」とみなされる三つの要件(外気分断性・土地への定着性・用途性)を詳細に解説し、補助金活用を検討する事業者が誤った申請を避けられるよう整理します。
この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc
目次
1. 補助金制度の基本的な考え方と不動産取得の扱い
小規模事業者持続化補助金をはじめとする公的補助金は、本来「事業の販路開拓や経営改善」を目的としています。そのため、事業者の長期的な資産形成、つまり土地や建物そのものの取得を助成する性質の経費は補助対象から外されます。
もし補助金を活用して建物を新築・増築してしまえば、それは「将来にわたり資産価値を持つ不動産投資」に該当してしまいます。補助金はあくまで販路開拓や業務効率化といった“経営活動を後押しする一時的な支援”であるため、固定資産税課税対象の「不動産取得」に該当する工事は対象外となるのです。
2. 「不動産の取得」と判断される三つの基準
2-1. 外気分断性の有無
建造物が屋根と壁を備え、外部環境から独立して利用できる場合には「外気分断性」があるとされます。
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該当例:三方向以上を壁で囲み、扉を有するプレハブ、恒久的な倉庫
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非該当例:屋根と支柱だけのカーポート、壁のないテラス席
外気分断性を持つ構造は「家屋」とみなされやすく、不動産取得に該当します。
2-2. 土地への定着性の有無
基礎工事などにより建物が土地と一体化している場合は「土地への定着性」が認められます。
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該当例:コンクリート基礎に固定されたコンテナハウスや物置
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非該当例:ブロック上に置いただけで移動可能な仮設小屋
「簡単に移動できるかどうか」が判定の大きな基準となります。
2-3. 用途性の有無
建造物が居住、業務、保管などの目的で利用できる空間を備えている場合は「用途性」が認められます。
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該当例:事務所として使えるプレハブ、倉庫や冷蔵施設として利用可能な建物
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非該当例:屋根だけの簡易資材置き場、仮設のヤード
用途性があると「単なる構造物」ではなく「建物」として扱われます。
3. 三要件をすべて満たすと対象外となる仕組み
外気分断性・土地への定着性・用途性の三要件をすべて満たした場合、その工事は「不動産の取得」とみなされ、補助対象外となります。
逆に、三つのうち一つでも欠ければ不動産取得には該当せず、補助金の対象になる可能性があります。
たとえばコンテナハウスでも「基礎工事を伴わず移動可能」「壁がなく外気分断性を欠く」といった場合には、不動産とは認定されず補助金対象に含められることがあります。
4. 不動産取得に該当する典型的な工事例
- 事務所や倉庫の増築工事で床面積を拡張する場合
- 基礎工事を伴う恒久的なコンテナハウスの設置
- 三方以上を壁で囲み扉を備えたプレハブ建造物の恒久設置
これらは固定資産税課税対象の「家屋」として扱われるため、補助金の対象にはなりません。
5. 不動産取得に当たらないとされる工事例
- 屋根のみで壁がないカーポートやオープンテラス
- 基礎固定のない簡易プレハブや移動式コンテナ
- 店舗内装の改修や什器の導入、パーテーションによる区画変更
これらは「建物」ではなく「構造物」として扱われるため、補助対象経費に計上できる場合があります。
6. 申請時に注意すべきチェックポイント
申請にあたり、以下の点を確認することが重要です。
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見積書や工事仕様書に「新築」「増築」「基礎工事」といった文言が含まれていないか
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工事内容に「壁と屋根の設置」「恒久利用」が含まれていないか
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判断が難しい場合は、補助金事務局や自治体の固定資産税担当に事前確認する
工事内容の記載方法ひとつで「補助対象外」と判定されるリスクがあるため、注意が必要です。
7. まとめ:不動産取得リスクを避けて補助金を最大限活用する
- 「外気分断性」「土地への定着性」「用途性」の三条件をすべて満たす場合は不動産取得とされ補助対象外
- 増築や基礎固定を伴う恒久的な工事は対象外になりやすい
- 移動可能な設備や内装改修、什器導入などは対象となる可能性が高い
- 曖昧な場合は必ず事前相談を行い、リスクを回避することが重要
補助金は事業活動を後押しする制度であり、不動産投資を助成する仕組みではありません。正しい理解と準備を行うことで、補助金を有効に活用し、事業成長につなげることができます。

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補助金申請において「不動産取得にあたるかどうか」の判断は非常に難しいテーマです。誤って申請すると、不採択や補助金返還のリスクにもつながります。
当社は中小企業庁認定の経営革新等支援機関として、補助金活用に関する豊富な支援実績を有しています。工事内容が補助対象となるかどうか迷う場合は、ぜひ一度ご相談ください。