小規模事業者持続化補助金|賃金引上げ要件が未達だった場合のリスクと実務対応

小規模事業者持続化補助金では、「事業場内最低賃金の引上げ」を行うことで補助上限額が拡大される特例が設けられています。採択率を高める上で有利に働く一方、計画通りに賃金を引き上げられなかった場合には大きなリスクが伴います。

実際に、補助事業終了時に要件未達であれば補助金は支払われず、さらに1年後の状況報告でも未達だった場合には、今後18か月間にわたり他の補助金申請で大幅な減点対象となるのです。本記事では、賃金引上げ要件未達時の具体的な扱いやペナルティ、そしてリスクを避けるための実務上のポイントについて詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc 

目次

賃金引上げ要件とは?持続化補助金における位置づけ

小規模事業者持続化補助金には「賃金引上げ特例」が設けられており、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることで、補助上限額を引き上げることが可能です。これは、中小企業の生産性向上や人材確保を促す国の方針に基づくものであり、採択においても重要な評価ポイントとなります。

 

ただし、この特例を利用する場合、計画した賃金引上げが確実に実行されていることを実績として証明する必要があります。したがって、要件未達=補助金が交付されない、あるいは今後の申請にマイナス影響が生じる ことを理解しておくことが不可欠です。

要件未達の場合の扱い(補助事業終了時点)

補助事業が終了し、実績報告書を提出する段階で賃金引上げが確認できない場合、その補助事業に係る補助金は支払われません。

 

この時点では「賃金台帳」や「給与明細」などを根拠資料として提出することが求められ、計画通りの引上げがなされていない場合は不交付となります。つまり、補助事業そのものは遂行しても、補助金は受け取れない という大きなリスクを伴います。

要件未達の場合の扱い(1年後の状況報告時点)

補助事業終了後から1年後に「事業効果及び賃金引上げ等状況報告書(様式第14)」を提出する義務があります。この時点で賃金引上げが未達であると、以下のような影響が発生します。

 

  • 災害などの正当な理由が認められない限り、18か月間にわたり中小企業庁所管の補助金申請で「大幅減点」扱いとなる。

  • 減点は採択可能性を大きく下げ、実質的に補助金の活用が難しくなる。

 

つまり「補助金が支払われないリスク」だけでなく「将来の補助金活用制限」という長期的な不利益も伴います。

正当な理由が認められるケースと注意点

すべての未達がペナルティにつながるわけではありません。中小企業庁は以下のようなケースを「正当な理由」として考慮する場合があります。

 

  • 自然災害や感染症流行など不可抗力による業績悪化

  • 景気の急変や取引先の倒産など外部要因による雇用環境の変化

  • その他、合理的理由があると判断される場合

 

ただし、正当な理由として認められるかどうかは事業者の自己判断ではなく、証拠資料を添えて説明した上で事務局が判断します。そのため、日頃から経営状況や人件費に関する資料を整理し、説明責任を果たせる体制を整えることが重要 です。

要件未達による実務的な影響

賃金引上げ特例を利用して未達となった場合、以下のような影響が考えられます。

 

  • 補助金が交付されないため、自己資金負担が想定以上に膨らむ

  • 1年後の報告で未達が確認されれば、今後18か月間の補助金申請が大幅減点

  • 金融機関や取引先に提出した事業計画との整合性が崩れるリスク

 

補助金の活用は資金調達の一環であり、未達は財務計画や信用にも波及する可能性があります。

未達リスクを防ぐための計画とシミュレーション

賃金引上げ特例を利用する際は、採択を得るために「高めの引上げ額」を設定するのではなく、実現可能性を重視することが肝要です。

 

  • 賃上げ原資を売上増加・生産性改善の計画と結びつける

  • 補助事業の成果が賃上げにどうつながるかを数値シミュレーションする

  • 早期に専門家へ相談し、無理のない計画を策定する

 

これにより、補助事業終了時点・1年後の両方で要件を確実に達成できる可能性が高まります。

まとめ:要件未達は「不交付+将来の減点」につながる

  • 補助事業終了時に要件未達 → 補助金不交付

  • 1年後の報告時に要件未達 → 原則18か月間の大幅減点

  • 正当な理由があれば例外的に認められる可能性あり

  • 未達リスクを防ぐには、無理のない計画とシミュレーションが不可欠

 

賃金引上げ特例を利用することで得られるメリットは大きい一方、未達時のリスクは極めて重いものです。

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小規模事業者持続化補助金は、中小企業にとって大きな成長のチャンスですが、賃金引上げ特例を利用する際には「未達リスク」を十分に理解しなければなりません。

当社は中小企業庁認定の経営革新等支援機関として、多数の補助金サポート実績を有しています。採択を目指す段階から、賃上げ計画の妥当性検討、資金繰りシミュレーション、実績報告対応までトータルで支援いたします。

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