小規模事業者持続化補助金|月給制の場合の1か月平均所定労働時間数の算出方法を徹底解説

小規模事業者持続化補助金の「賃金引上げ特例」を活用する際、審査の重要な判断基準となるのが 事業場内最低賃金の確認 です。特に月給制で従業員を雇用している場合には、単純に「月給額」だけではなく、これを時間当たりに換算して比較する必要があります。その際の基準となるのが「1か月平均所定労働時間数」です。
ところが実務上、この「1か月平均所定労働時間数」をどのように算出すべきか迷う事業者は少なくありません。「月の暦日数を基準にしてよいのか?」「休日数のカウントはどう扱うのか?」「うるう年はどうするのか?」といった細かな点で不明確さが残るケースが多いのです。
本記事では、補助金事務局が公式に示している算出方法をもとに、具体的な計算手順、実務での注意点、そして誤解されやすいポイントについて徹底的に解説します。これを読めば、月給制の従業員についても自信を持って賃金台帳を整備し、補助金申請に臨むことができるはずです。
この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
応用情報処理技術者、Linux Professional、ITIL Foundation etc
目次
なぜ「1か月平均所定労働時間数」が必要なのか
賃金引上げ特例では「事業場内最低賃金を50円以上引き上げる」ことが条件です。最低賃金は時間当たりで判断されるため、従業員が時給制であればそのまま比較が可能ですが、月給制の場合はそうはいきません。
月給制の場合、給与の支払いは固定額ですが、実際に働く時間数は会社ごとに異なります。したがって、「月給額÷1か月平均所定労働時間数」=時間当たり賃金 という計算を行う必要があります。この数値を算出しなければ、最低賃金との比較ができず、補助金要件を満たしているかどうか確認できないのです。
月給制における時間当たり換算の考え方
月給制の時間換算において重要なのは、「平均化」 という考え方です。
例えば、4月は30日、5月は31日と月ごとに暦日数が異なるため、単純に「月給÷その月の労働時間数」としてしまうと月によって時間単価が変動してしまいます。
そのため、1年間を基準として、休日数を差し引いた「所定労働日数」と1日の所定労働時間を掛け合わせ、さらに12か月で割るという方式が採用されています。これにより、年間を通じた標準的な「1か月あたりの労働時間」が導き出され、安定した時間換算が可能になります。
公式が示す算出方法
補助金事務局が示している算出式は以下のとおりです。
1か月平均所定労働時間数 = (365日-1年の休日合計日数) × 1日の所定労働時間数 ÷ 12か月
この式を分解すると以下の意味になります。
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365日:1年間の日数
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休日合計日数:会社の就業規則やカレンダーで定められた休日数(法定休日、祝日、年末年始休暇、夏季休暇など)
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1日の所定労働時間数:就業規則や雇用契約書で定められた勤務時間(例:8時間、7.5時間など)
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12か月:年間を12で割り、1か月平均に換算する
この方法により、1年間を通じて標準化された労働時間数を算出することができます。
うるう年(2024年2月を含む場合)の取り扱い
特例として、対象期間に2024年2月を含む場合は「365日」ではなく「366日」として計算する必要があります。これは、うるう年で1日多くなるため、年間の暦日数に応じて労働時間を調整する必要があるからです。
この修正を怠ると、時間当たり賃金に誤差が生じ、最低賃金の判定に影響が出る恐れがあります。特に長期雇用契約が前提となる月給制では、うるう年を正しく反映することが不可欠です。
実際の計算例
ここで具体的に計算例を示します。
例1:休日120日、1日8時間勤務の場合
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年間所定労働日数:365日-120日=245日
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年間総労働時間:245日×8時間=1,960時間
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1か月平均所定労働時間数:1,960時間÷12か月=163.3時間
月給20万円の従業員の場合、時間当たり賃金は以下の通りです。
200,000円÷163.3時間=約1,225円
例2:休日105日、1日7.5時間勤務の場合
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年間所定労働日数:365日-105日=260日
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年間総労働時間:260日×7.5時間=1,950時間
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1か月平均所定労働時間数:1,950時間÷12か月=162.5時間
月給18万円の従業員の場合:
180,000円÷162.5時間=約1,108円
このように、休日数や所定労働時間数によって時間当たり賃金は大きく変動します。
実務での注意点とよくある誤解
誤解①:暦日数や出勤日数をそのまま使用してしまう
→ 正しくは年間ベースで計算し、休日数を差し引く必要があります。
誤解②:給与明細や雇用契約書だけで代替できる
→ 賃金台帳と算出根拠を明示しなければ、審査で差し戻される可能性があります。
誤解③:小数点を切り捨ててしまう
→ 時間当たり賃金に誤差が出るため、小数点第1位または第2位まで計算することが望ましいです。
誤解④:休日数を適当に見積もってしまう
→ 就業規則や勤務カレンダーを確認し、実際の休日数を正確に算出する必要があります。
まとめ:正確な算出で賃上げ特例に対応する
月給制の従業員における「1か月平均所定労働時間数」は、補助金申請の審査において必須資料です。公式が定める算出方法に従い、休日数・所定労働時間数・うるう年の考慮を正しく反映することで、信頼性の高いデータを準備できます。誤りのない算定は、補助金申請の採択可能性を高める重要なポイントです。

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小規模事業者持続化補助金の申請は、数字の整合性や算出根拠の明示が非常に重要です。とりわけ月給制の従業員がいる場合、時間当たり賃金の算出を誤ると申請全体が差し戻されるリスクがあります。
当社は中小企業庁認定の経営革新等支援機関として、数多くの補助金サポート実績を持っています。御社の状況に合わせた最適な算出方法をアドバイスし、スムーズな申請をサポートいたします。