経営力向上計画でソフトウェア導入の税制優遇を受ける方法

ソフトウェア導入は経営力向上計画の対象となり、即時償却や税額控除といった大きな税制優遇を受けられます。しかし取得価額や機能要件など満たすべき条件があり、工業会証明書の取得も必要です。本記事ではソフトウェアを対象とした経営力向上計画の活用方法から申請プロセス、注意点まで詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
経営力向上計画におけるソフトウェアの位置づけ
ソフトウェアは経営力向上計画における中小企業経営強化税制の対象資産として明確に位置づけられています。機械装置や器具備品と同様に税制優遇措置を受けられる重要な投資対象です。
ソフトウェアが税制優遇対象となる理由
中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画では、ソフトウェアが生産性向上設備のA類型として認められています。これは現代のビジネス環境において、ソフトウェアが企業の生産性向上に不可欠な投資となっているためです。
ERPシステムや生産管理システム、在庫管理システム、CADソフトウェアなど、業務効率化や経営の見える化を実現するソフトウェアが対象となります。情報収集機能と分析・指示機能を有するソフトウェアであれば、業種を問わず税制優遇の対象として申請できます。
JISAである一般社団法人情報サービス産業協会が工業会として証明書を発行しており、多くのパッケージソフトウェアが事前登録されています。これにより中小企業はソフトウェア投資による生産性向上と税制メリットの両方を実現できる仕組みとなっています。
即時償却と税額控除の選択メリット
経営力向上計画の認定を受けてソフトウェアを取得すると、即時償却または税額控除のいずれかを選択できます。どちらを選ぶかは企業の財務状況や経営戦略によって判断します。
即時償却を選択した場合、ソフトウェア取得価額の全額を取得年度の経費として計上できます。通常は数年かけて償却するソフトウェアを初年度に全額経費化できるため、その年度の大幅な節税効果が期待できます。利益が多く出ている年度に特に有効です。
税額控除を選択した場合は、取得価額の10%を法人税額から直接控除できます。ただし資本金3000万円超1億円以下の法人は7%となります。税額控除は法人税額から直接差し引けるため、確実な節税効果があります。企業の利益水準や税負担を考慮して最適な方法を選択することが重要です。
対象となるソフトウェアの要件と基準
経営力向上計画で税制優遇を受けるには、ソフトウェアが一定の要件を満たす必要があります。取得価額の基準と機能要件の両方をクリアすることが求められます。
取得価額と機能要件の詳細
ソフトウェアの取得価額は一の取得価額が70万円以上であることが必須条件です。これは他の設備と比べて比較的低い金額基準となっており、中小企業にとって活用しやすい制度設計となっています。
機能要件として最も重要なのは、情報収集機能と分析・指示機能の両方を有することです。情報収集機能とは、データベースやセンサーなどから必要な情報を収集・蓄積する機能を指します。分析・指示機能とは、収集した情報を分析し、その結果に基づいて指示や提案を行う機能です。
例えばERPシステムであれば、各部門のデータを収集し売上や在庫を分析して発注提案を行う機能が該当します。生産管理システムでは生産実績データを収集分析し、最適な生産計画を提示する機能がこれに当たります。単に情報を表示するだけ、あるいは計算結果を出力するだけの機能では要件を満たしません。
また中古資産は対象外となり、新品のソフトウェアを取得する必要があります。リース契約での取得も税制優遇の対象外となるため注意が必要です。
対象外となるソフトウェアの種類
すべてのソフトウェアが対象となるわけではありません。明確に対象外とされているものがあります。まず複写して販売するための原本は対象外です。ソフトウェア開発会社が販売用に作成したマスターコピーなどが該当します。
開発研究用のソフトウェアも対象外となります。これは研究開発目的で使用されるシミュレーションソフトなどを指します。サーバー用オペレーティングシステムのうち一定のものも除外されています。
機能面では、設計図の作成をコンピュータで行って図面を出力する機能しかないもの、法令等により定められた項目の金額を算出し文書として出力する機能しかないもの、分析結果の一覧を帳票として出力する機能しかないものは対象外です。販売価格の見積計算の結果を文書として出力する機能しかないもの、情報をグラフや表などに加工して表示する機能しかないものも要件を満たしません。
貸借対照表で無形固定資産のソフトウェア以外の区分で資産計上されるものも対象外となります。これらの除外規定を理解した上で、自社が導入予定のソフトウェアが対象となるか確認することが重要です。
工業会証明書の取得プロセス
ソフトウェアで経営力向上計画の税制優遇を受けるには、JISAが発行する工業会証明書の取得が必須です。証明書取得のプロセスと事前登録制度を理解しておく必要があります。
JISAによる証明書発行手続き
ソフトウェアの工業会証明書は一般社団法人情報サービス産業協会であるJISAが発行します。ソフトウェアは無形資産でありカスタマイズを伴うケースが多いため、JISAでは独自の手引き書を用意しています。
証明書発行の申請は基本的にソフトウェアベンダー側が行います。企業がソフトウェアを購入する場合、ベンダーにJISAへの証明書発行申請を依頼する流れとなります。申請から証明書発行までには4週間から6週間程度の期間がかかります。
申請時には中小企業経営強化税制ソフトウェア証明書発行の手引きと、生産性向上設備ソフトウェアの機能要件に関する考え方の2つの資料を熟読する必要があります。機能要件が確認できない場合は証明書の発行に至らないため、特に後者の資料は重要です。
カスタマイズを施したソフトウェアでも、情報収集機能と分析・指示機能の要件を保持していれば証明書発行の対象となります。ただしカスタマイズにより機能要件を満たさない変更が生じる場合は通常の発行手続きが必要です。
事前登録ソフトウェアの活用法
JISAでは事前登録制度を設けており、事前登録番号を取得したパッケージソフトウェアのリストを公表しています。このリストに掲載されているソフトウェアは、中小企業等経営強化法施行規則の要件を満たしていることが確認済みです。
事前登録されたソフトウェアを導入する場合、証明書発行手続きが簡略化される可能性があります。ただし型番やバージョン、販売開始年度が登録と異なる場合は事前登録番号を使用できず、通常の発行手続きが必要となります。
事前登録リストには多様な業務ソフトウェアが掲載されており、ERP、生産管理、在庫管理、設備CAD、会計システムなど幅広い分野のソフトウェアが含まれています。ソフトウェア導入を検討する際は、まずこのリストを確認することで効率的に制度を活用できます。
新しいバージョンやメジャーアップデート版については改めて事前登録手続きが必要となり、申請手続きと手数料は新規の事前登録と同じです。中小企業経営強化税制の適用には取得価額70万円以上などの要件も同時に満たす必要があります。
経営力向上計画の申請から認定まで
工業会証明書を取得した後は経営力向上計画の申請を行います。申請から認定までの流れと注意すべきタイミングを把握しておくことが重要です。
証明書取得から認定までの全体フロー
経営力向上計画におけるソフトウェア導入の全体フローは、まず工業会証明書の取得申請から始まります。ソフトウェアベンダーがJISAに証明書発行を申請し、4週間から6週間程度で証明書が発行されます。
証明書取得後、企業は経営力向上計画書を作成します。計画書には企業概要、現状認識、経営指標の目標、経営力向上の内容としてソフトウェア導入計画などを記載します。作成した計画書と工業会証明書の写しを添付して、事業分野別の主務大臣に申請します。
経営力向上計画の申請から認定までは約30日かかります。経済産業部局宛のみの電子申請であれば約14日に短縮されます。認定を受けた後にソフトウェアを取得し事業の用に供することが原則です。
税務申告時には工業会証明書、経営力向上計画の申請書および認定書の写しを添付します。これにより即時償却または税額控除の適用を受けることができます。一連の手続きには時間がかかるため、ソフトウェア導入スケジュールには十分な余裕を持つことが重要です。
申請時の重要な注意点とタイミング
経営力向上計画においてソフトウェアを対象とする際、最も注意すべきは取得タイミングです。原則として経営力向上計画の認定を受けてからソフトウェアを取得する必要があります。認定前に取得したソフトウェアは原則として税制優遇の対象になりません。
例外として設備取得後に申請する場合は、ソフトウェア取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。この場合でも、遅くとも事業の用に供した事業年度内に認定を受けなければ税制の適用は受けられません。
工業会証明書の申請は経営力向上計画の申請より前に行う必要があります。令和3年8月2日以降は特例措置として、工業会証明書の申請手続きと計画認定の審査を同時並行で行うことが可能となりました。ただし証明書申請は計画申請より先に行うという原則は変わりません。
決算期末近くにソフトウェアを導入する場合は特に注意が必要です。年度内に認定を受けられないと税制適用が翌年度になってしまうため、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。計画書の不備による差戻しも考慮し、早めの申請を心がけることが成功のポイントです。
まとめ
経営力向上計画を活用することでソフトウェア導入時に大きな税制優遇を受けられます。対象となるのは取得価額70万円以上で情報収集機能と分析・指示機能を有するソフトウェアです。
JISAが発行する工業会証明書の取得が必須で、証明書発行には4週間から6週間程度かかります。事前登録されたパッケージソフトウェアリストを活用すれば手続きが効率化できます。
工業会証明書取得後に経営力向上計画を申請し、認定を受けてからソフトウェアを取得することが原則です。即時償却または10%の税額控除を選択でき、企業の財務状況に応じた最適な節税が可能です。
決算期を考慮した計画的なスケジュール管理により、確実に税制メリットを享受できます。

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