経営力向上計画の税抜き判定|設備投資要件を徹底解説

経営力向上計画で中小企業経営強化税制を活用する際、設備投資の取得価額が税抜きか税込みかという判定基準は、実務上非常に重要です。本記事では、経理方式による判定の違い、各設備の取得価額要件、税制優遇を受けるための具体的な計算方法まで、中小企業の経営者や経理担当者が知っておくべき情報を分かりやすく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
経営力向上計画における税抜きと税込みの基本
経営力向上計画を利用して中小企業経営強化税制の適用を受ける場合、設備投資の取得価額が基準額を満たしているかどうかが重要な判断ポイントとなります。このとき、判定に用いる金額が「税抜き」なのか「税込み」なのかは、企業が採用している経理処理の方法によって決まります。
取得価額の判定方法を誤ると、本来であれば対象となるはずの設備投資であっても、要件未達と判断されて税制優遇が受けられなくなる可能性があります。そのため、制度を活用する前提として、税抜き・税込みの考え方を正しく理解しておくことが不可欠です。
特に実務では、「設備の見積金額は要件を超えていると思っていたが、判定方法を誤っていたため対象外となった」といったケースも少なくありません。経営力向上計画を確実に活用するためには、取得価額の判定ルールを事前に整理したうえで計画を策定することが重要です。
取得価額の判定基準
中小企業経営強化税制では、導入する設備の種類ごとに「最低取得価額」が明確に定められています。この基準を満たしているかどうかが、税制優遇を受けられるかを判断する最初の関門となります。
具体的には、機械装置は160万円以上、器具備品と工具はそれぞれ30万円以上、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上といった取得価額要件が設定されています。設備投資を検討する際は、まずこの金額基準を超えているかを確認する必要があります。
ここで注意すべき点が、取得価額の判定に消費税を含めるかどうかという考え方です。
この判断は一律ではなく、事業者が採用している経理方式によって変わります。資産の会計処理を税込経理で行っている場合は消費税を含めた金額で判定し、税抜経理を採用している場合は消費税を除いた金額で判定することになります。
この取り扱いは、税務上の考え方として整理されており、公的なQ&Aでも示されています。そのため、設備の見積金額だけを見て判断するのではなく、自社がどの経理方式で資産を処理しているかを正確に把握することが、取得価額を正しく判定するための前提条件となります。
税込経理と税抜経理の違い
企業が行う会計処理には、大きく分けて税込経理方式と税抜経理方式の2つがあります。
どちらの方式を採用しているかによって、設備投資の取得価額をどう判定するかが変わるため、経営力向上計画を活用するうえで見落とせないポイントです。
税込経理方式では、売上や仕入、経費といったすべての取引を消費税を含めた金額で帳簿に記録します。この考え方に基づくため、設備投資についても消費税を含んだ総額を取得価額として扱います。結果として、取得価額の判定では消費税分も含めて金額要件を満たしているかを判断できます。
一方、税抜経理方式では、消費税を取引金額とは切り分け、仮受消費税・仮払消費税として別管理します。売上や経費はあくまで税抜金額で処理されるため、設備投資の取得価額についても消費税を除いた金額のみで要件判定を行う必要があります。
どちらの経理方式を採用しているかは、会社ごとに異なり、制度上の優劣があるわけではありません。ただし、経営力向上計画や中小企業経営強化税制を利用する場面では、この違いが要件を満たすか否かの分かれ目になることがあります。
自社の経理方式は、日常の会計処理や決算書の表示内容、会計ソフトの設定から確認できます。判断に迷う場合は、過去の処理実態も踏まえて、顧問税理士や会計事務所に確認することが確実です。
経理方式の確認方法
自社が税込経理と税抜経理のどちらを採用しているかは、日常業務の中に必ずヒントがあります。特別な資料を用意しなくても、いくつかのポイントを確認すれば判断できます。
まず確認したいのが、決算書の損益計算書です。売上高や各種経費の金額が、消費税を含んだ総額で表示されている場合は税込経理、消費税を除いた金額で整理されている場合は税抜経理で処理されている可能性が高いと考えられます。特に売上高の金額は、最も分かりやすい判断材料になります。
次に見るべきなのが、貸借対照表の勘定科目です。「仮受消費税」や「仮払消費税」といった科目が計上されている場合は、消費税を取引金額と分けて管理しているため、税抜経理方式が採用されています。これらの科目が存在しない場合は、消費税を取引金額に含めて処理している税込経理である可能性が高くなります。
さらに、会計ソフトの設定画面を確認する方法もあります。多くの会計ソフトでは、消費税の処理方法として「税込」「税抜」が明示されており、初期設定時に選択されています。ここを確認すれば、現在の経理方式を確実に把握できます。
なお、経理方式は原則として会計年度の途中で変更することはできません。もし変更を検討する場合は、期首からの適用が必要となるため、事前に税理士や会計事務所と相談したうえで判断することが重要です。
経営力向上計画や税制優遇を活用する場面では、この経理方式の違いが取得価額の判定に直結します。「なんとなく」で判断せず、必ず一度は明確に確認しておくことが、申請ミスを防ぐ近道です。
設備別の取得価額要件と判定方法
中小企業経営強化税制では、導入する設備の種類ごとに最低取得価額が定められており、この金額を満たしているかどうかが制度適用の前提条件となります。
そのため、設備投資を検討する際には、「いくらで購入したか」だけでなく、どの設備区分に該当するか、そして自社の経理方式ではどの金額で判定するのかをセットで確認する必要があります。
取得価額の判定は、すべての設備で共通ルールというわけではありません。
機械装置、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなど、それぞれに異なる基準が設けられており、同じ金額の投資であっても、設備区分によっては要件を満たさないケースもあります。
また、この取得価額の判定には、前章で解説した税込経理・税抜経理の違いが直接影響します。
税込経理を採用している企業であれば消費税を含めた金額で判定し、税抜経理の場合は消費税を除いた金額で判定することになります。
経理方式を誤って認識したまま判定すると、「要件を満たしているつもりだったが、実は対象外だった」という事態につながりかねません。
設備投資は金額も大きく、税制優遇の影響も大きいため、設備区分 × 取得価額 × 経理方式の3点を必ずセットで確認することが重要です。
この後の各設備別の解説では、それぞれの取得価額要件と、実務で判断する際のポイントを具体的に見ていきます。
機械装置の取得価額判定
中小企業経営強化税制において、機械装置は最低取得価額が160万円以上と定められており、対象設備の中でも最も金額要件が高い区分に該当します。そのため、判定の考え方を正確に理解していないと、制度の適用可否を誤って判断してしまうリスクがあります。
取得価額を判定する際は、まず自社が採用している経理方式を前提に金額を確認します。
税込経理を採用している企業の場合、消費税を含めた金額で取得価額を判定します。消費税率10%を前提とすると、機械本体の税抜価格が約145万5千円以上であれば、消費税込みで160万円を超えるため、金額要件を満たすことになります。
一方、税抜経理を採用している企業では、消費税を含めず税抜金額そのもので160万円以上であることが必要です。
また、機械装置の判定では、本体価格だけを見るのではなく、どこまでを一体の設備として扱えるかが重要なポイントになります。
機械本体と同時に導入し、常にセットで使用する自動制御装置、原動機、専用の制御盤などは、本体と切り離して使用できない場合、取得価額を合算して判定することが可能です。複数の機器を組み合わせて一つの生産ラインやシステムとして稼働させるケースでは、個別に金額を見るのではなく、全体を一つの機械装置として評価することで要件を満たすことも少なくありません。
ただし、金額要件を満たせばそれだけで制度が適用できるわけではありません。
対象となる機械装置は、販売開始から原則10年以内であること、さらに旧モデルと比較して年平均1%以上の生産性向上が見込まれることといった性能要件も同時に満たす必要があります。これらの要件は、工業会証明書や経済産業局の確認書によって裏付けることが求められます。
機械装置は投資額が大きい分、税制優遇のインパクトも大きくなります。
その反面、取得価額の判定や設備の位置付けを誤ると、計画全体が成立しなくなる可能性もあるため、金額・設備構成・性能要件をセットで確認することが不可欠です。
器具備品と工具の判定基準
中小企業経営強化税制において、器具備品と工具はいずれも取得価額30万円以上が要件とされています。機械装置と比べると金額基準は低いものの、対象となる設備の範囲が広いため、判定の考え方を誤りやすい区分でもあります。
取得価額の判断は、他の設備と同様に企業が採用している経理方式を前提に行います。
税込経理を採用している場合は、消費税を含めた金額で判定するため、税抜価格が約27万3千円以上であれば、消費税込みで30万円を超え、要件を満たすことになります。
一方、税抜経理を採用している場合は、消費税を含まない税抜金額で30万円以上であることが必要です。
加えて、器具備品と工具には販売開始からの年数制限が設けられています。
器具備品は原則として販売開始から6年以内、工具は5年以内の設備であることが求められ、比較的新しいモデルであることが前提となります。中古品や旧型設備は対象外となるため、導入時期や型式の確認が欠かせません。
器具備品の範囲には、単なる備品だけでなく、測定機器や検査用工具も含まれます。製造業や建設業で使用される精密測定器、検査装置、品質管理用の器具などは、生産性向上や業務効率化に直接結びつく設備として評価されやすい傾向があります。日常業務で使っている設備でも、制度上は十分に対象となり得る点が特徴です。複数の器具備品や工具を同時に導入する場合は、原則として一単位ごとに取得価額を判定します。個別に使用できる設備であれば、それぞれ単独で30万円以上かどうかを確認する必要があります。
ただし、セットで使用することが前提となっており、単体では機能しない設備については、一体の器具備品として合算判定できるケースもあります。この判断は設備の使用実態が重視されるため、導入前に確認しておくことが重要です。
器具備品や工具は金額要件を満たしやすい反面、「合算できるかどうか」「対象年数に収まっているか」で判断を誤りやすい分野です。設備の構成や使用方法を整理したうえで、取得価額を正しく判定することが、税制優遇を確実に受けるためのポイントとなります。
建物附属設備とソフトウェア
中小企業経営強化税制では、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上という取得価額要件が定められています。いずれも日常的な設備投資やIT投資と密接に関係するため、制度の対象になり得るかどうかを正しく見極めることが重要です。
まず、建物附属設備については、建物そのものではなく、建物に付随して機能する設備が対象となります。代表的なものとして、電気設備、給排水設備、空調設備、換気設備、昇降設備などが挙げられます。これらは建物と一体で使用されるものの、税務上は建物本体とは区分され、独立した減価償却資産として扱われます。
取得価額の判定は、他の設備と同様に経理方式を前提に行います。
税込経理を採用している企業では消費税込みで60万円以上、税抜経理を採用している企業では税抜で60万円以上が基準となります。また、建物附属設備には販売開始から14年以内という比較的長い期間要件が設定されており、一定程度年数が経過した設備であっても対象となる可能性があります。
一方、ソフトウェアは取得価額70万円以上が要件とされ、販売開始から5年以内のものが対象となります。業務管理システム、生産管理システム、顧客管理システム、在庫管理システムなど、業務効率化や生産性向上に直接寄与するソフトウェアが該当します。単なる事務処理の補助にとどまらず、業務全体の改善に資する設計であるかどうかが重要な視点となります。
ソフトウェアの取得価額を判定する際に特に注意すべきなのが、どこまでを取得価額に含められるかという点です。
ソフトウェア本体の購入代金に加えて、導入時に必要となる初期設定費用や業務に合わせたカスタマイズ費用については、内容によって取得価額に含めることが認められる場合があります。これらはソフトウェアを使用可能な状態にするために不可欠な支出と考えられるためです。
一方で、導入後に発生する保守費用やサポート費用、年間ライセンス料、クラウド利用料などは、原則として取得価額には含まれません。これらは継続的な利用対価や役務提供に該当するため、取得時点の投資額とは明確に区分して整理する必要があります。
建物附属設備とソフトウェアは、金額要件を満たしやすい反面、範囲の切り分けや費用区分を誤りやすい分野でもあります。設備やシステムの内容、契約書や見積書の内訳を丁寧に確認し、取得価額として計上できる部分を正確に把握することが、税制優遇を確実に活用するための重要なポイントとなります。
税制優遇措置と取得価額の関係
経営力向上計画の認定を受けた企業が対象設備を導入した場合、即時償却または税額控除のいずれか一方を選択して税制優遇を受けることができます。どちらを選ぶかによって、税負担の軽減効果が表れるタイミングや金額の影響は異なりますが、その前提となる取得価額の考え方は共通です。
即時償却は、設備の取得価額の全額を取得した事業年度に一括で経費として計上できる制度です。一方、税額控除は、取得価額の一定割合を法人税額から直接差し引く仕組みとなっています。制度の仕組みは異なりますが、いずれの場合も「どの金額を取得価額として扱うか」が、優遇額を左右する重要な要素になります。
取得価額の計算においては、これまで見てきたとおり、税込経理か税抜経理かによって判定基準が変わる点に注意が必要です。取得価額の考え方を誤ると、本来受けられるはずの税制優遇額が想定より小さくなったり、要件を満たさないとして適用自体が否定されたりする可能性があります。
また、即時償却と税額控除のどちらを選択する場合であっても、対象となる設備が金額要件・性能要件・取得時期の要件をすべて満たしていることが前提となります。そのため、税制優遇の効果を正しく比較・判断するためには、制度選択の前段階として、取得価額を正確に整理しておくことが不可欠です。
次の章では、即時償却と税額控除それぞれについて、取得価額がどのように税務上のメリットに反映されるのかを具体的に見ていきます。どちらが自社にとって有利かを判断するためにも、仕組みの違いを理解しておきましょう。
即時償却の計算方法
即時償却とは、設備を取得した事業年度に、その取得価額の全額を一度に経費として計上できる税制優遇措置です。経営力向上計画の認定を受けた企業が対象設備を導入した場合、通常の減価償却に代えて、この即時償却を選択することができます。
通常の減価償却では、機械装置や建物附属設備などは耐用年数に応じて、数年にわたって分割して経費計上します。一方、即時償却を適用すると、取得初年度に全額を損金算入できるため、その年度の課税所得を大きく圧縮できる点が最大の特徴です。結果として、法人税や所得税の負担を大幅に軽減する効果が期待できます。
即時償却に用いる取得価額は、企業が採用している経理方式に基づいて判断します。
税込経理を採用している場合は、消費税を含めた金額がそのまま即時償却の対象となります。たとえば、消費税込みで220万円の機械装置を取得した場合、その220万円全額を取得年度の経費として計上できます。
一方、税抜経理を採用している場合は、消費税を除いた税抜金額が即時償却の対象となり、その金額を基準に損金算入を行います。
即時償却は、当期の利益が大きく見込まれる場合に特に効果を発揮する制度です。利益が出ている年度に税負担を前倒しで軽減できるため、短期的には資金繰りの改善にもつながります。設備投資と同時に税負担を抑えられる点は、多くの中小企業にとって大きなメリットといえます。
ただし、即時償却には注意点もあります。取得初年度にすべての償却を行うため、翌年度以降に計上できる減価償却費は発生しません。将来の利益が大きく見込まれる場合には、税負担の平準化という観点で不利になることもあります。そのため、短期的な節税効果だけでなく、数年先の利益計画も踏まえたうえで選択することが重要です。
即時償却を選ぶかどうかは、単なる制度の理解だけでなく、取得価額・利益水準・今後の事業計画を総合的に見て判断すべき選択肢といえます。
税額控除の計算方法
税額控除とは、対象となる設備投資の取得価額に一定割合を乗じた金額を、法人税額から直接差し引くことができる制度です。経営力向上計画の認定を受けた企業は、即時償却に代えてこの税額控除を選択することができます。
控除率は企業の資本金規模によって異なり、資本金3,000万円以下の法人は取得価額の10%、資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%が控除対象となります。
たとえば、取得価額1,000万円の機械装置を導入した場合、資本金3,000万円以下の企業であれば100万円、3,000万円超の企業であれば70万円を、計算された法人税額から直接差し引くことができます。
ここで用いる取得価額の考え方は、即時償却と同様に企業の経理方式に連動します。税込経理を採用している場合は消費税込みの金額を基準に計算し、税抜経理を採用している場合は消費税を除いた金額を基準に控除額を算定します。経理方式の違いによって控除額が変わる点には注意が必要です。
税額控除には、法人税額の20%を上限とする制限が設けられています。この上限は、中小企業経営強化税制単独ではなく、中小企業投資促進税制など他の税額控除制度と合算して判定されます。そのため、複数の税制を併用する場合には、控除可能額が想定より小さくなるケースもあります。上限を超えて控除しきれなかった金額については、翌事業年度へ繰り越すことが可能です。これにより、当期に十分な法人税額がない場合でも、将来的に税負担を軽減できる余地が残されます。
税額控除の大きな特徴は、通常の減価償却を継続しながら、税負担を直接減らせる点にあります。即時償却のように初年度へ負担軽減を集中させるのではなく、長期的に安定した節税効果を得たい企業にとって、有効な選択肢といえるでしょう。
経理方式による優遇額の違い
同一の設備投資であっても、税込経理か税抜経理かによって、受けられる税制優遇の金額が変わる場合があります。これは、即時償却や税額控除の計算に用いる「取得価額」の考え方が、経理方式と連動しているためです。
税込経理を採用している企業では、設備の取得価額を消費税を含めた金額で扱います。そのため、即時償却や税額控除の計算も消費税込みの金額を基準に行うことができ、結果として優遇額が大きくなりやすいという特徴があります。
たとえば、本体価格200万円、消費税20万円の設備を導入した場合、税込経理では220万円全体を基準として税制優遇を受けることが可能です。
一方、税抜経理を採用している企業では、設備の取得価額は消費税を除いた金額で判定します。この場合、同じ設備であっても計算の基準は200万円となり、税込経理と比較すると税制優遇額は小さくなります。
ただし、税抜経理には別の利点もあります。消費税を仮受・仮払として明確に管理できるため、将来の納税額を把握しやすく、資金繰り計画を立てやすいという実務上のメリットがあります。特に課税売上高が大きい企業では、消費税負担を可視化できる点が経営管理に役立ちます。
このように、どちらの経理方式が有利かは一概には判断できません。税制優遇の大きさだけでなく、企業規模、業種、利益水準、資金繰りの安定性、経理業務の運用体制などを総合的に踏まえて選択することが重要です。
経営力向上計画を活用した設備投資を検討する際には、経理方式も含めて事前に整理しておくことで、制度のメリットを最大限に引き出すことができます。
実務上の注意点とよくある質問
経営力向上計画を活用して税制優遇を受ける際、取得価額の判定は最もミスが起こりやすい実務ポイントの一つです。計算方法や前提条件を誤ると、本来受けられるはずの即時償却や税額控除が適用できなくなるおそれがあります。
ここでは、実務の現場で特に注意すべき点や、企業から相談が多いポイントを整理します。事前にこれらを理解しておくことで、申請時の手戻りや否認リスクを避け、制度のメリットを確実に活かすことができます。
取得価額の税抜・税込の判断は、単に設備の見積書を見るだけでは決まりません。自社が採用している経理方式との整合性が取れているか、補助金や圧縮記帳を併用していないか、設備の構成が「一体資産」として認められるかなど、複数の視点から確認する必要があります。
また、経営力向上計画は「書類を提出すれば終わり」ではなく、税務申告・補助金申請・金融機関対応まで含めて一連の実務が連動します。どこか一つでも判断を誤ると、後工程で修正が効かなくなるケースも少なくありません。
この章では、実務担当者が判断に迷いやすい論点を整理し、よくある誤解や見落としがちな注意点を分かりやすく解説していきます。
制度を安全かつ有効に使い切るための「確認チェック」として、ぜひ活用してください。
圧縮記帳を適用した場合
補助金を活用して設備投資を行う際、圧縮記帳を選択した場合の取得価額の扱いには特に注意が必要です。判断を誤ると、中小企業経営強化税制の適用要件を満たさなくなるケースがあります。
圧縮記帳とは、補助金などで得た収入と、設備取得にかかった支出を同一年度内で相殺し、帳簿上の資産価額を引き下げる会計処理です。この処理を行うことで、補助金に対する課税を繰り延べる効果があります。
しかし、経営力向上計画における取得価額の判定は、圧縮記帳後の金額を基準に行われる点が重要です。帳簿上の取得価額が下がることで、制度が定める最低取得価額を下回ってしまう可能性があります。
たとえば、200万円の機械装置を導入し、50万円の補助金を受けて圧縮記帳を行った場合、帳簿上の取得価額は150万円となります。機械装置は160万円以上が要件となっているため、このケースでは中小企業経営強化税制の対象から外れてしまいます。
このように、補助金と税制優遇は必ずしも併用できるとは限りません。補助金を活用する場合には、
-
圧縮記帳を行うか
-
経営力向上計画による税制優遇を優先するか
を事前に比較検討する必要があります。
どちらが有利かは、補助金額、法人税率、当期の利益水準、将来の償却計画などによって異なります。制度を最大限に活用するためには、設備導入前の段階で全体像を整理し、慎重に方針を決めることが重要です。
複数設備を同時購入する場合
複数の設備をまとめて導入する場合、取得価額の判定には一定のルールがあります。**「何を一つの設備として見るのか」**を正しく整理することが、税制適用の可否を分けるポイントになります。
原則として、取得価額は通常一単位として取引・使用される単位ごとに判定します。たとえば、同じ型番の機械を2台同時に購入した場合でも、それぞれが独立して稼働するのであれば、1台ずつ個別に取得価額を判定します。この場合、合算して要件を満たすことはできません。
一方で、本体と附属機器が常にセットで使用され、分離しては機能しない設備については、合計金額で判定することが認められています。機械装置の本体に加えて、制御装置や原動機などを同時に設置し、一体のシステムとして稼働させるケースでは、これらをまとめて一つの設備として扱うことが可能です。
また、設備の取得時期にも注意が必要です。同じ種類の設備であっても、取得時期が異なる場合は原則として別設備扱いとなります。工業会証明書についても、取得時期ごとに対応が必要となり、同一年度内の取得であれば一通の証明書で足りますが、年度をまたぐ場合は改めて証明書を取得する必要があります。
このように、複数設備の扱いは「同時取得か」「一体利用か」「取得時期はいつか」によって判断が分かれます。設備構成を誤って整理すると、要件未達となるリスクがあるため、導入前の段階で整理しておくことが重要です。
設備取得のタイミング
中小企業経営強化税制を確実に適用するためには、**設備を「いつ取得したか」**が非常に重要になります。取得時期を誤ると、要件を満たしていても税制優遇が受けられないケースがあるため、慎重な判断が必要です。
原則として、経営力向上計画の認定を受けた後に設備を取得することが求められます。ここでいう「取得」とは、単に契約を結ぶだけでなく、発注・購入し、実際に事業の用に供する一連の行為を指します。認定前に発注や購入を行ってしまうと、税制適用の対象外となる可能性があるため、必ず認定後に手続きを進めることが基本となります。
ただし、一定の例外も認められています。計画申請前に設備を取得する場合であっても、申請書が主務大臣に到達した日から遡って60日以内の取得であれば、税制の対象とすることが可能です。この場合でも、設備を取得し、実際に使用を開始した事業年度内に認定を受けることが条件となります。
特に注意が必要なのが、決算期末が近い時期の設備投資です。設備取得後、年度をまたいで認定を受けた場合は、税制の適用を受けることができません。そのため、年度末に近いタイミングでの設備導入では、申請から認定までの期間を逆算し、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
設備投資を検討する際は、「設備の仕様」や「金額要件」だけでなく、認定取得までのスケジュールを含めて設計することが、税制メリットを確実に享受するための重要なポイントとなります。

制度活用に不安がある場合は、専門家と一緒に整理するのが近道です
経営力向上計画や中小企業経営強化税制は、正しく理解して活用すれば大きなメリットがある一方で、
「税抜き・税込みの判断は合っているか」
「この設備は本当に要件を満たしているのか」
「補助金や圧縮記帳と併用しても問題ないか」
といった実務レベルの判断で迷いやすい制度でもあります。
特に、設備投資・税制・資金繰り・補助金を同時に検討している場合、
個別に考えるのではなく、全体を俯瞰して整理することが重要です。
ProdX Crowdでは、
経営力向上計画の策定・見直しから、
設備投資の要件整理、税制優遇や補助金活用を見据えた実務設計まで、
中小企業の実情に合わせて一緒に整理・検討するサポートを行っています。
「この内容で進めて問題ないか確認したい」
「制度を使い切れていない気がする」
「計画と数字を一度プロの目で見てほしい」
そんな段階でも構いません。
まずはお気軽にご相談ください。
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