経営力向上計画の繰越制度完全ガイド|税額控除と特別償却の活用術

経営力向上計画の認定を受けた企業が設備投資を行う際、税制優遇措置を最大限活用するには繰越制度の理解が不可欠です。税額控除の繰越、特別償却の繰越、繰越欠損金との関係など、複雑な仕組みを正しく把握することで大きな節税効果が得られます。
本記事では、経営力向上計画における繰越制度のすべてを解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
経営力向上計画の繰越制度完全ガイド|税額控除と特別償却の活用術
経営力向上計画に基づく中小企業経営強化税制では、税額控除を選択した場合に控除しきれなかった金額を翌年度に繰り越すことができます。
繰越税額控除限度超過額とは
中小企業経営強化税制の税額控除は、取得価額の10パーセント(資本金3000万円超1億円以下の法人は7パーセント)を法人税額から直接差し引ける制度です。しかしその年の法人税額が少ない場合、控除限度額を使い切れないケースがあります。
税額控除の控除上限は、その事業年度の調整前法人税額の20パーセント相当額までと定められています。この上限を超えるために控除しきれなかった金額を「繰越税額控除限度超過額」と呼びます。
例えば1000万円の設備を導入し100万円の税額控除が認められたとします。しかし当期の法人税額が300万円で、20パーセントの上限が60万円だった場合、40万円が控除しきれません。この40万円が繰越税額控除限度超過額となります。
この繰越税額控除限度超過額は、1年間に限り翌事業年度に繰り越して使用することが認められています。ただし翌年度も同様に法人税額の20パーセントが上限となるため注意が必要です。
繰越控除を受けるための手続き
繰越税額控除限度超過額の繰越控除を受けるためには、厳格な手続き要件が定められています。まず繰越税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、繰越税額控除限度超過額の明細書を添付する必要があります。
さらに繰越控除を受けようとする事業年度の確定申告書等に、繰越控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告しなければなりません。
書類の添付を失念すると、繰越控除の適用を受けられなくなる可能性があります。中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の税額控除は合計で法人税額の20パーセントが上限とされるため、複数の税制を利用する場合は特に注意が必要です。
税理士と相談しながら、確定申告時には必ず別表6(24)などの関連書類を正確に作成し、漏れなく提出することが重要です。継続的な書類管理が繰越控除の適用を確実にします。
特別償却における繰越の仕組み
即時償却を選択した場合にも、償却しきれなかった金額を繰り越せる制度があります。税額控除とは異なる仕組みを理解しましょう。
償却不足額の翌事業年度繰越
中小企業経営強化税制で特別償却を選択した場合、取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額、つまり実質的に全額の即時償却が認められます。しかしその事業年度において償却限度額まで償却費を計上しなかった場合はどうなるでしょうか。
特別償却においては、償却限度額まで償却費を計上しなかった場合、その償却不足額を翌事業年度に繰り越すことができます。つまり初年度に全額即時償却しなくても、その残額を次の年度に償却することが可能です。
例えば1000万円の設備で即時償却が認められた場合、初年度は600万円だけ償却し、残り400万円を翌年度に繰り越すという選択ができます。これにより利益の状況に応じて柔軟な償却計画を立てることができます。
ただし特別償却は課税の繰り延べ効果であり、耐用年数全体で見た場合の減価償却費の総額は通常償却と変わりません。一方税額控除は法人税額そのものを減少させるため、長期的には税額控除のほうが有利になるケースが多いです。
特別償却と税額控除の選択基準
特別償却と税額控除のどちらを選ぶべきかは、企業の状況によって異なります。短期的なキャッシュフロー改善を優先するなら特別償却、長期的な節税効果を重視するなら税額控除が適しています。
特別償却を選択するメリットは、初年度に多額の減価償却費を計上できるため、その年の法人税納税額を大きく減らせる点です。設備投資直後は資金繰りが厳しくなりがちなため、浮いた税金を運転資金や再投資に充てられます。
一方税額控除を選択すると、設備投資直後の節税効果は特別償却より小さくなりますが、10年間といった長期で見ればトータルの納税額が減少します。また損益計算書上の利益を圧迫しないため、金融機関からの評価を気にする企業にも適しています。
ただし税額控除には控除限度額があるため、ある程度の課税所得がないと限度額まで使い切れません。繰越は1年間のみ認められているため、2年連続で赤字の場合は税額控除のメリットを活かせなくなります。
繰越欠損金との関係性
特別償却によって所得がマイナスになった場合、繰越欠損金として節税効果を長期間繰り越すことができます。税額控除との大きな違いです。
繰越欠損金制度の概要
法人が事業年度において欠損金額、つまり赤字が生じた場合、その欠損金額を翌事業年度以後に繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度が繰越欠損金制度です。現行制度では最長10年間の繰越が認められています。
特別償却によって多額の減価償却費を計上した結果、その年度の所得がマイナスになった場合、この繰越欠損金制度の対象となります。税額控除の繰越が1年間のみなのに対し、繰越欠損金は最長10年間繰り越せるため、長期的な節税効果が期待できます。
例えば1000万円の即時償却により当期の所得が500万円の赤字になったとします。この500万円の欠損金は翌年度以降10年間繰り越すことができ、将来の黒字と相殺して法人税を軽減できます。
ただし中小企業者等以外の法人では、繰越欠損金の控除限度額がその年度の所得金額の50パーセントに制限されています。中小企業者等は全額控除が認められているため、経営力向上計画の対象となる中小企業にとっては有利な制度です。
税額控除との比較優位性
税額控除は課税所得がなければ適用を受けられませんが、特別償却で生じた繰越欠損金は将来10年間にわたって節税効果を発揮できます。この点が両者の決定的な違いです。
税額控除の繰越は1年間のみのため、2年連続で赤字または小規模な黒字だった場合、控除しきれなかった税額控除は消滅してしまいます。一方、特別償却で生じた繰越欠損金は10年間有効なため、将来的に大きな黒字が出たときに効果を発揮します。
業績の波が大きい企業や、創業間もなく安定的な利益が見込めない企業にとっては、特別償却による繰越欠損金の活用が有効です。ただし金融機関の評価を重視する場合、特別償却で利益を圧縮すると決算書の見栄えが悪くなる点には注意が必要です。
また特別償却準備金方式という経理方法を使えば、利益の変動を抑えながら特別償却のメリットを享受できます。この方法については税理士と相談して最適な選択をすることをおすすめします。
繰越制度を最大限活用するポイント
繰越制度を効果的に活用するには、事前の計画と適切な申告手続きが不可欠です。実務上の注意点を押さえましょう。
事前の収益予測と資金計画
繰越制度を最大限活用するには、複数年度にわたる収益予測が重要です。当期だけでなく翌期以降の利益見込みも考慮して、特別償却と税額控除のどちらを選択するか判断する必要があります。
税額控除を選択する場合、当期の法人税額が控除限度額の20パーセント以上なければ全額を使い切れません。翌期の利益予測も加味し、2年間で控除しきれるかシミュレーションすることが大切です。
特別償却を選択する場合も、即時償却によって生じる繰越欠損金を何年で解消できるか検討すべきです。10年以内に黒字化できる見込みがあれば、繰越欠損金による節税効果を最大限享受できます。
また設備投資計画が複数年度にまたがる場合、各年度でどの税制を適用するか戦略的に考える必要があります。中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制を組み合わせることで、より大きな節税効果を得られる可能性もあります。
確定申告における書類管理
繰越制度の適用を確実にするには、確定申告時の書類管理が極めて重要です。特に税額控除の繰越では、毎年度必要な書類を添付しなければ繰越控除が認められません。
繰越税額控除限度超過額が生じた年度は、別表6(24)に加えて繰越税額控除限度超過額の明細書を必ず添付します。翌年度も継続して明細書を添付し、繰越控除を受ける金額とその計算根拠を明確に示す必要があります。
特別償却の場合も、適用初年度に別表や付表を正確に作成することが重要です。償却不足額を繰り越す場合は、その金額を翌年度の申告書に適切に反映させる必要があります。
税理士と密に連携し、申告書作成時には経営力向上計画の認定書、工業会証明書または経産局確認書などの関連書類をすべて確認しましょう。書類の保管も重要で、税務調査に備えて少なくとも7年間は保管することをおすすめします。
まとめ
経営力向上計画における繰越制度は、税額控除の繰越、特別償却の繰越、繰越欠損金の活用という3つの側面があります。税額控除の繰越は1年間のみ認められ、控除しきれなかった金額を翌年度に持ち越せます。
特別償却では、償却限度額まで償却しなかった場合の償却不足額を翌年度に繰り越すことができます。さらに即時償却によって所得がマイナスになった場合、繰越欠損金として最長10年間の繰越が可能です。
税額控除と特別償却のどちらを選ぶかは、短期的なキャッシュフロー重視なら特別償却、長期的な節税効果重視なら税額控除が基本です。ただし企業の収益見込みや資金繰り、金融機関評価など総合的に判断する必要があります。
繰越制度を最大限活用するには、複数年度の収益予測に基づく戦略的な選択と、確定申告時の適切な書類管理が不可欠です。税理士と相談しながら、自社にとって最適な繰越制度の活用方法を見つけることで、経営力向上計画の税制優遇措置を最大限に活かすことができるでしょう。

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