新規事業大会議とは|イベント概要と社内会議を成功させる8つの秘訣

新規事業を推進する上で、「会議」は最大の難関であり、同時に最大のチャンスでもあります。社内承認を得るための会議、実践者が集まる大規模イベント、どちらも事業の成否を左右する重要な場です。
本記事では、国内最大級の事業開発イベント「新規事業大会議(ダイカイギ)」の概要とともに、新規事業の社内会議を突破し、成功に導くための実践的な手法を解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
新規事業大会議(ダイカイギ)とは
新規事業大会議は、Sansan株式会社が主催する国内最大級の事業開発イベントです。通称「ダイカイギ」と呼ばれ、社内新規事業や事業開発の責任者・実践者だけが集まるパブリック会議として開催されています。
イベントは年に複数回、東京や大阪で2日間にわたって開催されます。事業開発SUMMITとゼロイチSUMMITの2つのトラックが用意され、参加者は自由に行き来しながら、自社の課題やフェーズに合わせた学びを得られる仕組みです。
事業開発SUMMITでは、PoC後からスケール段階にある事業の責任者向けに、マネタイズや組織課題の突破法、営業連携などの実践的なテーマが扱われます。一方、ゼロイチSUMMITでは、アイディエーション段階の支援者向けに、社内プログラムの設計や運営事例、初期検証ワークが共有されます。
講演だけでなく、ワークショップや交流会も充実しており、同じ課題に向き合う他社の担当者とのネットワーキングが可能です。ソニーや三井住友フィナンシャルグループなど、大手企業のキーパーソンによる実践事例も数多く紹介されます。
なぜ新規事業に「大会議」が必要なのか
新規事業の成功には、組織全体を巻き込んだ意思決定と実行が不可欠です。そのため、「大会議」という形式が多くの企業で採用されています。
企業は生き延びるために変わり続けなければなりません。しかし、組織が大きくなればなるほど、変革の難しさは増します。そこで、社内の文化変革・人材育成・事業創出を目指して、多くの大企業が社内新規事業創出制度に取り組んでいるのです。
ただし、多くの企業がその運用に苦労しています。アイデアが集まらない、集まっても活かされない、社員のやる気が削がれるといった課題が頻発します。一社で悩んでいても解決しないならば、同じ悩みを持つ者たちがともに頭を悩ませ、知恵を絞り、解決策を探す場が必要です。
新規事業大会議のような外部イベントは、成功企業のキーパーソンや事業開発を担う実践者たちのリアルな経験から学び、新たなアプローチを知る機会を提供します。単なる情報交換の場や机上の空論ではなく、明日から実践できるノウハウを持ち帰れることが価値なのです。
企業における新規事業会議の種類と事例
企業内でも、新規事業を推進するための様々な会議体が存在します。それぞれの目的と特徴を理解することが重要です。
あした会議(サイバーエージェント)
サイバーエージェントの「あした会議」は、新規事業創出の成功事例として広く知られています。年に1〜2回、合宿形式で開催され、執行役員が事業責任者や専門分野に長けた人材を選抜してチームを組成します。
約1ヶ月間の熟考を重ねた後、30程度の提案のうち15案から20案程度が決議されます。この会議から、ゲーム事業など現在のサイバーエージェントの事業柱となるビジネスが数多く生まれており、累計売上高約3,259億円、営業利益約455億円を創出しています。
代表の藤田氏がその場で決議し、経営陣や社員も議論に参加することで、意思決定の納得感が生まれ、実行に向けてのアクションがすぐに行われます。設立が決定してから最短3日で設立手続きが完了するスピード感も特徴です。
新規事業開発担当幹部交流会議
一般社団法人企業研究会が主催する「新規事業開発担当幹部交流会議」は、企業で新規事業開発を推進する幹部・リーダーを対象とした異業種交流会です。
毎月の定例会では、先進企業の成功・失敗事例や今日的トピックスに関する具体的な講演を題材に、講師を囲んでのインタラクティブな討議が行われます。同種業務に携わる参加者同士の信頼と協力関係をベースとした交流を通じて、新規事業の足掛かりとなる人脈を形成する場としても機能しています。
社内承認会議
最も多くの企業で行われているのが、新規事業の企画を経営層に提案し、承認を得るための社内会議です。この会議の突破が、新規事業担当者にとって最大の難関となることが少なくありません。
役員などが出席することも多く、企画する事業の内容や収益性を短時間で伝える必要があります。いくら新規事業の企画内容が良くても、プレゼンテーションの構成がしっかりしていないと、企画の意図や事業性が十分伝わらず、承認を得られないこともあります。
新規事業の社内会議を突破する8つの秘訣
新規事業の社内会議を突破するには、戦略的なアプローチが必要です。実践者の事例から導き出された8つの秘訣を紹介します。
顧客を憑依させる
社内会議でどのような質問が来ようとも回答できるようにするため、見込み顧客の現場に入り込み、顧客の課題やインサイトについて熟知している状態をつくることが重要です。
一般的なアンケート調査では表層的な課題しか把握できません。実際に顧客の業務に同行したり、長時間インタビューを重ねたりすることで、深いインサイトを獲得できます。顧客の言葉で課題を語れる状態になれば、経営層からの質問にも説得力を持って答えられます。
販売前にユーザーを獲得する
商品・サービスの販売前に1社でもいいので見込み顧客にユーザーになってもらい、改善に協力してもらうことが効果的です。リリース初期の商品はまだ品質が磨かれていないことが多く、簡単には売れません。
しかし、「一緒にこのプロダクトを良くしてください」「あなたの会社の要望を反映できますよ」「初期拡販のパートナーになってください」といったスタンスでお願いすれば、了承してくれる顧客もいます。実際の利用データや顧客の声があれば、社内会議での説得力は格段に上がります。
インキュベーション事務局を活用する
社内に新規事業を推進するインキュベーション事務局が存在する場合、この部門に経営陣や幹部のコントロールに協力してもらうことが有効です。
経営幹部にはそれぞれ好き嫌いや得意不得意があり、新規事業のテーマに関しても評価が分かれるケースがあります。
新規事業のテーマと相性のよい経営幹部とつないでもらい、社内会議の前に好意的な意見をもらっておくことで、会議の場で「経営幹部の○○さんからはこのような前向きなご意見をいただいております」という情報を伝えられます。
ステージに応じた評価基準を明確にする
新規事業にはステージがあり、そのステージごとに答えるべき問いがあります。意思決定の場で既存事業の考えをそのまま適用し、ステージにそぐわない質問をすると、質問に答えられずやめた方がいいという判断になってしまいます。
初期段階の事業に「儲かるのか」「具体的なのか」という質問をしても、可能性をつぶすだけになります。ENTRY段階では魅力的で検証可能な事業仮説の提示、PoC段階では検証結果と次のステップ、といったように、ステージに応じた評価基準を社内で共有することが重要です。
事前根回しを徹底する
社内政治の観点から、事前の根回しは非常に重要です。会議の場で初めて提案するのではなく、事前に個別に経営層や関係部署に説明し、理解と賛同を得ておくことで、本番の会議がスムーズに進みます。
特に反対しそうな人や影響力のある人には、丁寧に説明し、懸念点を事前に解消しておくことが効果的です。会議の場では既に多くの賛同者がいる状態を作り出すことで、承認の確率が大きく上がります。
主観的な根拠を使う
新しいことにチャレンジする場合、強い客観的根拠を示すことが難しいのは当然です。客観的な根拠を使った説得が難しいときは、個人の主観的な根拠を使うことも有効です。
「難しいのはわかっています。しかし、どうしてもやりたいです」という熱意を伝えることで、相手が他に思い入れのある代替案を持っていない場合、意外と社内調整を通ってしまうことがあります。提案者がやりたいと思っているということ自体は否定しようがないからです。
計算して粘る
新規事業には情熱が大事だと言われますが、いわゆる情熱だけではなく、計算して粘ることも重要です。相手と案件内容によって、どの社内調整なら粘るべきか、あるいは粘らないかを、戦略的に見極めて実行します。
一度の会議で却下されても、相手の記憶が薄れた頃に再度提案することで、承認されるケースもあります。自分と他の人間との記憶力・意思力の差をつく戦略的なアプローチです。
会議の設計そのものを変える
どうしても社内調整が難しかったときの最終手段として、会議の設計そのものを変えることも考えられます。少人数の、会議の目的によって選抜されたメンバーの会議ほど効率がよく、プロジェクトのアウトプットの質も高くなります。
大人数の会議では意思決定が遅れがちです。意思決定者を絞り込んだ小規模な会議体を設定するか、段階的な承認プロセスを設計することで、新規事業の推進スピードを上げられます。
効果的な新規事業会議の設計ポイント
新規事業会議を成功させるには、会議そのものの設計も重要です。以下のポイントを押さえることで、生産性の高い会議を実現できます。
明確な目的設定
会議の目的を明確にすることが第一歩です。情報共有なのか、意思決定なのか、アイデア創出なのか、目的によって会議の進め方は大きく変わります。
新規事業の会議では、「このステージで何を決めるのか」を明確にし、参加者全員で共有することが重要です。目的が曖昧なまま会議を進めると、時間ばかりが過ぎて何も決まらない状況に陥ります。
適切な参加者選定
会議の参加者は、目的に応じて厳選する必要があります。情報共有だけが目的の人を意思決定の場に呼ぶ必要はありません。
新規事業の初期段階では、意思決定権を持つ経営層と、事業に深く関わる実務担当者に絞ることで、議論の質とスピードが上がります。関係者が多すぎると、調整に時間がかかり、意思決定が遅れる原因になります。
事前準備の徹底
充実した会議にするには、参加者が事前に準備しておくことが大切です。資料を事前に共有し、参加者が目を通してから会議に臨むことで、当日は議論に集中できます。
新規事業の提案では、事前に想定される質問とその回答を準備しておくことも重要です。顧客データや市場調査結果など、根拠となる資料を整理し、すぐに提示できる状態にしておきましょう。
アイスブレイクの活用
お互いを知らない場合、自由に意見が言い合える雰囲気はまだできていません。アイスブレイクを行って打ち解けた雰囲気を作ることで、「意見を言っても大丈夫そうだ」という雰囲気が作れます。
特に社外の有識者を招いた会議や、部署横断のプロジェクト会議では、簡単な自己紹介やゲームを取り入れることで、話がしやすい状態で会議をスタートできます。
オープンな議論の促進
新規事業の会議では、オープンな議論を促進する仕組みが重要です。メルカリの子会社ソウゾウが実施した「できつく会議」では、各チームのプレゼンをオープンにし、ランダムチャンネルで皆がコメントを投げ合える仕組みを採用しました。
フィードバックもセットで提供することで、施策としての解像度が上がり、経営陣の思考も知れる機会となります。参加者の満足度も高く、新規施策への熱量を高める効果があります。
まとめ
新規事業大会議は、外部イベントとしても社内会議としても、事業開発を加速させる重要な場です。Sansanが主催する「ダイカイギ」のような大規模イベントでは、他社の実践事例から学び、同じ課題に向き合う仲間とのネットワークを築けます。
一方、社内会議を突破するには、顧客インサイトの獲得、事前根回し、ステージに応じた評価基準の設定など、戦略的なアプローチが不可欠です。サイバーエージェントの「あした会議」のように、組織として新規事業を生み出す仕組みを設計することも有効です。
新規事業の成功には、情報のインプット、社内外のネットワーク構築、効果的な会議設計の3つが重要です。本記事で紹介した手法を実践し、自社の新規事業を前進させる「大会議」を実現してください。

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