経営力向上計画書の記入例で実践的に理解する

経営力向上計画書の記入方法を具体的な記入例を通じて理解することで、企業は高質な計画書を作成できます。抽象的な説明より、実際の記入例を見ることで、計画書作成の方法が明確になるのです。各セクションの適切な記入方法、よくある誤りの修正方法、良い記入例と悪い記入例の比較を通じて、企業は計画書作成能力を向上させられます。

一方で、記入例を十分に参考にしないまま計画書を作成する企業も多く、不適切な記入により認定が拒否される可能性があります。経営力向上計画書の各セクションの実践的な記入例、良い記入と悪い記入の比較、業種別の記入例、よくある誤りの修正方法を正確に理解することで、企業は高質な計画書を作成でき、認定成功の確度が著度に向上します。

本記事では、現状分析セクションの記入例、経営課題セクションの記入例、改善目標セクションの記入例、改善施策セクションの記入例、投資計画セクションの記入例など、各セクションの具体的な記入例を詳しく掲載します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

経営力向上計画書の現状分析セクション記入例

現状分析セクションの実践的な記入例があります。

企業概要の記入例(良い例)

「当社は1995年設立の精密加工部品メーカーです。自動車部品製造業に特化し、主要顧客は大手自動車メーカー3社です。従業員数は現在45名で、年間売上は約12億円です。過去3年の売上推移は、3年前13.5億円、2年前12.8億円、1年前12.1億円と、年1%程度の低下傾向にあります。」

企業概要の記入例(悪い例)

「当社は中堅の製造業企業です。ものづくりに力を入れており、多くの顧客にサービスを提供しています。売上は安定しており、経営は良好です。」

市場環境分析の記入例(良い例)

「自動車部品市場は、2023年の市場規模約28兆円から、2025年には26.5兆円への縮小が予測されています(日本自動車部品工業会統計)。特に、従来の内燃機関部品需要が減少し、EV向け部品需要は年率15%の成長が予測されています。当社の主要顧客である大手自動車メーカーは、EV転換を加速しており、従来部品の発注が減少傾向にあります。」

市場環境分析の記入例(悪い例)

「市場は難しい状況になっています。競争が厳しくなっており、価格も低下しています。将来の成長は不確実です。」

競合分析の記入例(良い例)

「同業他社との比較では、当社の技術力は中位水準です。大手競合企業(A社、B社)は、EV部品への早期転換により、受注が増加しています。一方、中小同業企業の多くは、従来部品に依存しており、受注減少に対応できていません。当社の強みは、30年の加工実績と顧客信頼ですが、技術革新への対応が課題です。」

競合分析の記入例(悪い例)

「競争相手はたくさんいます。彼らは強いですが、私たちもいい部品を作っています。」

内部分析の記入例(良い例)

「当社の強み:30年の加工実績、大手自動車メーカーとの長期取引関係、従来部品の高い品質管理。当社の弱み:EV部品の開発経験不足、新技術への投資不足、従業員の平均年齢55歳で新技術習得の課題。」

経営力向上計画書の経営課題セクション記入例

経営課題セクションの実践的な記入例があります。

課題の具体的記述例(良い例)

「経営課題1:売上の減少。過去3年で約900万円(約7%)の売上が減少し、利益が40%低下しました。主な原因は、自動車メーカーのEV転換により、従来部品の発注が年8%のペースで減少していることです。経営課題2:利益率の低下。売上減少に伴い、固定費負担が相対的に増加し、利益率が過去20%から現在15%に低下しました。」

課題の具体的記述例(悪い例)

「経営課題は、売上が少し減少していることです。市場が変わってきたので、対応が必要です。」

課題の根本原因分析例(良い例)

「売上減少の根本原因:自動車産業のEV転換により、ガソリン車向け部品の需要が構造的に減少している。当社が従来部品に依存し、EV部品への転換ができていないこと。顧客の大手自動車メーカーがEV転換を加速させ、従来部品メーカーの発注を削減していること。」

課題の根本原因分析例(悪い例)

「売上が減少しているのは、市場が悪くなったからです。」

経営力向上計画書の改善目標セクション記入例

改善目標セクションの実践的な記入例があります。

改善目標の記入例(良い例)

「改善目標1:売上の回復と成長。初年度:12.1億円(前年同等)、二年度:12.8億円(5%成長)、三年度:13.5億円(5%成長)。改善目標2:利益率の改善。初年度:15%、二年度:16%、三年度:18%。改善目標3:EV部品の売上構成比。初年度:5%、二年度:15%、三年度:30%。」

改善目標の記入例(悪い例)

「売上を増やしたいです。利益も増加させたいです。EV部品に力を入れたいです。」

段階的な目標設定例(良い例)

「EV部品売上の段階的な目標:初年度5%(6,400万円)→ 二年度15%(1.9億円)→ 三年度30%(4.1億円)。段階的な達成を計画する理由:初年度は試作品開発と顧客テスト、二年度は小ロット量産化、三年度は本格量産に移行するため。」

経営力向上計画書の改善施策セクション記入例

改善施策セクションの実践的な記入例があります。

具体的な施策の記入例(良い例)

「施策1:EV部品開発。EV用高精度センサー部品の開発。実行時期:初年度から二年度中盤。具体的方法:外部の大学研究室と協力し、試作品開発。投資額:1000万円。施策2:従来部品の効率化。既存の加工工程の自動化により、単価引き下げと作業効率向上。実行時期:初年度から通年。具体的方法:CNC自動工具交換機の導入。投資額:2500万円。施策3:営業活動の強化。EV部品メーカー、新しい自動車関連企業への営業活動。実行時期:初年度から三年度通年。具体的方法:営業担当者の増員(2名追加)、顧客訪問頻度の増加。投資額:400万円。」

具体的な施策の記入例(悪い例)

「施策1:技術開発。技術を改善します。施策2:営業改善。営業をがんばります。施策3:効率化。効率を良くします。」

施策と課題の対応関係の記入例(良い例)

「課題『売上減少』に対する施策:施策1と施策2により、従来部品の受注維持と単価引き上げを実現。施策3により、EV部品への新規受注獲得。これにより、売上減少を食い止め、成長軌道への復帰が実現される。」

経営力向上計画書の投資計画セクション記入例

投資計画セクションの実践的な記入例があります。

投資計画の具体的記述例(良い例)

「投資計画1:EV部品開発投資。CNC複合加工機械(高精度、多機能)、試作用3Dプリンター、検査用精密測定機。投資額:3000万円。メーカー:◎◎工業。見積もり額:3200万円。納期:6ヶ月。導入時期:初年度6月。」

投資計画の具体的記述例(悪い例)

「機械に投資します。設備を増強します。合計で5000万円程度を投資予定。」

投資別の詳細記入例(良い例)

「投資額内訳:(1)設備投資2500万円:CNC自動工具交換機、EV部品用加工機械、検査設備。(2)人材投資400万円:EV部品技術者採用と育成、営業人員2名追加。(3)研究開発投資1000万円:大学との協力開発、試作品製作。(4)営業設備投資200万円:営業用IT機器、顧客管理システム導入。合計:4100万円。」

投資別の詳細記入例(悪い例)

「投資は全部で約5000万円です。」

投資による期待効果の記入例(良い例)

「投資額4100万円により期待される効果:EV部品売上の創出(三年度30%、年4.1億円)、加工工程効率化による単価10%引き下げ防止(年2000万円の利益効果)、従来部品売上の維持による基礎利益の確保(年1.8億円)。合計で初年度は1000万円、二年度は2500万円、三年度は4500万円の追加利益が期待される。」

経営力向上計画書の実行体制セクション記入例

実行体制セクションの実践的な記入例があります。

実行体制の記入例(良い例)

「計画実行責任者:代表取締役(当社の最高経営責任者)。実行チーム:副社長(計画全体統括)、技術部長(EV部品開発統括)、生産管理課長(設備導入管理)、営業部長(新規営業活動)。各部門の従業員も、自部門の施策実行に関与する。」

実行体制の記入例(悪い例)

「経営層が責任を持って計画を実行します。社員がそれに協力します。」

進捗管理の記入例(良い例)

「月1回の経営会議で計画進捗を確認。投資進捗、売上実績、EV部品開発状況などをレビュー。四半期ごとに計画に対する実績との乖離を分析。必要に応じて施策の修正を検討。年1回、外部の診断士に進捗状況を報告し、アドバイスを受ける。」

経営力向上計画書の成果測定セクション記入例

成果測定セクションの実践的な記入例があります。

KPI設定の記入例(良い例)

「KPI1:売上額。初年度12.1億円→二年度12.8億円→三年度13.5億円。測定方法:月次決算で毎月確認、四半期ごとに目標達成状況を評価。KPI2:EV部品売上比率。初年度5%→二年度15%→三年度30%。測定方法:顧客別売上を毎月集計、四半期ごとに集計・評価。KPI3:利益率。初年度15%→二年度16%→三年度18%。測定方法:月次決算で確認、四半期ごとに目標達成状況を評価。」

KPI設定の記入例(悪い例)

「売上を増やしたいです。利益も増やしたいです。うまくいくことを期待しています。」

経営力向上計画書の業種別記入例

業種によって異なる記入例があります。

製造業の記入例

「自動車部品製造業。主な製品:ガソリン車用エンジン部品(現在)、EV用センサー部品(開発中)。現在の技術水準:ISO9001認定、従来部品での精度0.01mm達成。改善方向:EV対応技術の習得、高精度化。」

小売業の記入例

「地域型スーパーマーケット。営業エリア:◎◎市内。店舗面積:2500㎡。従業員数:85名。課題:ネット通販の拡大により、来店客数が年5%減少。対応戦略:顧客情報の活用による効率的営業、ネット販売チャネルの構築。」

サービス業の記入例

「企業向けコンサルティング業。主要サービス:経営診断、組織改革コンサルティング。現在の顧客:中堅企業50社。課題:顧客企業の経営改善終了に伴い、受注が減少。対応戦略:新規サービスの開発、新規顧客の開拓。」

経営力向上計画書の記入でよくある誤り

申請時に起こりやすい記入ミスがあります。

過度に楽観的な目標設定

「売上を3年で2倍にする」というような、現実離れした目標は審査で質問されます。市場分析に基づいた現実的な目標が必須です。

施策と課題の対応不足

「売上減少の課題」に対して、「営業活動強化」だけという施策では不十分です。複数の施策が、複数の角度から課題に対応することが重要です。

投資根拠の曖昧性

「設備を導入する」だけで、どの設備か、投資額がいくらか不明なことが多いです。具体的な機器名、金額が必須です。

数値の一貫性不足

申請書に「売上12.1億円」と記載されたのに、計画書では「売上120億円」と記載されるなど、数値の一貫性が欠けることがあります。複数の書類で数値が一致していることが重要です。

記入スペースの無視

指定されたスペースを無視し、冗長な記述になる場合があります。簡潔かつ要点を押さえた表現が推奨されます。

経営力向上計画書の記入を参考にする際の注意点

記入例を参考にする際に気をつけるべき点があります。

他企業の例をそのまま模倣しない

他企業の記入例は参考にしても、内容をそのまま模倣することは避けるべきです。企業の状況に応じた独自の内容が必要です。

業種別の特性を反映させる

自社の業種に応じた記入が必要です。製造業と小売業では、計画内容が大きく異なります。

複数の記入例を比較検討する

複数の記入例を見比べることで、良い記入方法と悪い記入方法の違いが明確になります。

相談機関のアドバイスを活用する

記入例を参考にした上で、相談機関でレビューを受けることで、記入内容が最適化されるのです。

経営力向上計画書の記入に関する相談窓口

記入方法に関する相談が可能な機関があります。

商工会議所・商工会

計画書の記入方法についての相談が無料で提供されます。記入例を示しながら、指導が行われます。

中小企業診断士

民間の中小企業診断士に相談することで、業種に応じた記入方法のアドバイスが得られます。

経済産業局

記入要件についての確認が可能です。疑問な記入方法については、事前に確認すべきです。

まとめ

経営力向上計画書の各セクションの実践的な記入例を通じて、企業は高質な計画書作成方法を学習できます。具体的で定量的な記入、明確な課題と施策の対応関係、現実的な目標設定が、審査官に良い印象を与えるのです。記入例を参考にしながら、相談機関でのレビューを受けることで、企業の計画書が最適化され、経営力向上計画の認定成功が確実に実現できるでしょう。

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