創業融資で個人保証不要の制度と活用方法

創業融資を受ける際、個人保証の負担は起業家にとって極めて大きな課題です。個人保証が不要な融資制度があれば、起業家の個人資産を守りながら、事業を立ち上げることができます。日本政策金融公庫の創業融資は、原則として個人保証不要であり、この特徴は起業家にとって極めて重要な利点です。一方で、民間銀行の融資では個人保証が必須となることが多いです。
本記事では、個人保証不要の融資制度、個人保証が不要になる条件、個人保証不要の融資を利用するメリット、個人保証不要の融資の活用戦略など、創業融資における個人保証不要制度に関する完全なガイドを詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資における個人保証の重要性と課題
個人保証は、融資の返済に関わる極めて重要な問題です。
個人保証とは何か
個人保証とは、融資の返済責任を個人が保証することです。企業が融資を返済できない場合、個人保証人がその返済責任を引き継ぎます。融資機関にとって、個人保証人は返済不能のリスクに対する保険的な役割を果たします。個人保証により、融資機関は返済を確実にすることができるのです。
個人保証人の責任と負担
個人保証人は、融資金の全額返済責任を負います。企業の返済が不能になった場合、個人保証人は個人資産から返済金を準備する必要があります。最悪の場合、個人保証人は個人破産に至る可能性もあります。個人保証は、起業家にとって極めて大きな負担なのです。
創業融資における個人保証の一般的状況
民間銀行の創業融資では、個人保証がほぼ必須となります。融資機関にとって、創業企業は返済リスクが高いため、個人保証により返済を確実にしようとするのです。一方で、日本政策金融公庫の創業融資は、原則として個人保証不要です。公庫が政府の起業促進政策を反映して、個人保証を求めない方針を採っているのです。
日本政策金融公庫の個人保証不要融資
公庫の創業融資は、個人保証が不要であることが大きな特徴です。
公庫の新規開業ローンの特徴
日本政策金融公庫の新規開業ローンは、原則として個人保証不要です。無担保無保証人での融資が基本方針です。この方針により、起業家は個人資産を保護しながら、事業を立ち上げることができるのです。公庫の融資限度額は7,200万円であり、返済期間は最大20年です。金利も1%から3%程度と低く設定されています。
公庫が個人保証不要とする理由
公庫が個人保証を求めない理由は、融資審査が事業計画書と申し込み者の適性に基づいているからです。公庫は、事業の成功可能性を判断して融資を決定するため、個人保証に頼る必要がないのです。また、政府の起業促進政策を実現するため、個人保証の負担を軽減する方針が採られているのです。
公庫融資で個人保証が求められる例外的状況
原則として個人保証不要ですが、融資額が大きい場合や、事業計画に特に不確実性がある場合には、個人保証の提供を求められることもあります。このような例外的な場合でも、個人保証を拒否することで、個人保証不要での融資が可能になることもあります。
信用保証協会を活用した個人保証不要融資
信用保証協会の信用補保により、個人保証が不要になる場合があります。
信用保証協会の役割と機能
信用保証協会は、中小企業や起業家の資金調達を支援するために、金融機関のリスクを補保する機関です。信用保証協会の信用補保を利用することで、金融機関は個人保証を求めずに融資を提供することができます。起業家は、信用保証協会に保証料を支払う必要がありますが、個人保証を提供するより有利な場合が多いです。
民間銀行と信用保証協会の連携融資
民間銀行からの融資に信用保証協会の補保を付けることで、個人保証が不要になる場合があります。融資機関は補保により返済リスクが低下するため、個人保証を要求しないのです。この方法により、民間銀行から個人保証不要の融資を受けることができるのです。
信用保証協会の保証料
信用保証協会の信用補保を利用する場合、保証料が必要です。保証料は、融資金額と融資期間に基づいて計算されます。一般的には、融資金額の1%から2%程度が保証料として設定されます。保証料を考慮しても、個人保証による負担より、保証料の支払いの方が有利な場合が多いです。
自治体融資での個人保証不要制度
自治体の創業融資では、個人保証が不要な制度が提供されています。
自治体融資の個人保証不要方針
多くの自治体では、地域の新規事業促進を目的として、個人保証不要の創業融資制度を提供しています。自治体融資は、個人保証を求めない代わりに、信用保証協会の補保を利用することが多いです。これにより、起業家の個人負担が軽減されるのです。
利息補給制度との組み合わせ
自治体融資は、個人保証不要に加えて、利息補給制度を備えていることが多いです。実質的な金利負担が0%から1%程度に軽減されることもあります。個人保証が不要であり、さらに金利負担も軽減されることで、自治体融資は起業家にとって極めて有利な制度です。
自治体融資の地域的多様性
自治体融資の内容は、自治体ごとに大きく異なります。融資限度額、返済期間、個人保証の要件など、自治体により異なるのです。事業所がある地域の自治体に確認することで、その地域での最適な融資制度が明確になります。
個人保証不要の融資を受けるための条件
個人保証不要の融資を受けるためには、複数の条件を満たす必要があります。
説得力のある事業計画書
個人保証不要の融資を受けるためには、説得力のある事業計画書が不可欠です。融資機関は、個人保証に頼らず、事業計画の質のみで融資判断を行うため、計画書の完成度が極めて重要です。市場分析、競合分析、営業戦略、財務予測など、すべての要素が詳細で根拠のあるものである必要があります。
十分な自己資金の準備
融資機関は、事業に必要な資金の3分の1以上を自己資金で準備することを原則としています。自己資金比率が高いほど、個人保証不要の融資を受けやすくなります。自己資金が充分に準備されていることで、融資機関のリスクが低下し、個人保証を求めないのです。
明確な返済能力の証明
月間売上から営業経費を控除した利益が、月間返済額をカバーできることが、個人保証不要融資の必須条件です。返済能力が明確に示される場合、融資機関は個人保証を求めずに融資を提供する傾向があります。
経営者の適性と信頼性
起業家の経営経験、業界知識、過去の返済実績などが、融資判断に大きく影響します。経営適性が高いと評価される場合、個人保証不要の融資が承認されやすいのです。
個人保証不要融資のメリットとデメリット
個人保証不要融資にはメリットとデメリットがあります。
個人保証不要融資のメリット
個人保証が不要であることで、起業家の個人資産が保護されます。事業が上手くいかなくなった場合、個人破産という最悪の事態を回避できるのです。また、個人保証人を見つける必要がないため、申し込みプロセスが簡潔になります。個人保証に関する人間関係の問題も生じないのです。
個人保証不要融資のデメリット
個人保証が不要な代わりに、融資審査がより厳格になることがあります。事業計画の現実性が極度に厳しく評価されるため、申し込み準備により多くの時間と労力が必要です。また、保証料が必要な場合、その費用が融資コストに加わるため、返済総額が増加することもあります。
個人保証不要融資と個人保証融資の比較
個人保証の有無により、融資条件が異なります。
金利の比較
個人保証不要融資の金利は、個人保証融資と比較して、異なることもあります。公庫の個人保証不要融資は1%から3%程度、民間銀行の個人保証融資は2%から5%程度とされています。ただし、これらの差は個人保証の有無だけでなく、融資機関や融資額にも影響されます。
返済期間の比較
公庫の個人保証不要融資は返済期間が最大20年と長いのが特徴です。民間銀行の個人保証融資は返済期間がより短いことが一般的です。返済期間の長さにより、月間返済額が大幅に異なります。
融資額の比較
公庫の個人保証不要融資の融資限度額は7,200万円です。民間銀行の個人保証融資は、1,000万円から5,000万円程度とされています。必要資金が融資上限を超える場合、複数の融資機関から融資を受ける必要があります。
個人保証不要融資を受けるための戦略
個人保証不要融資の申し込み成功率を高めるための戦略があります。
公庫への優先的な申し込み
個人保証不要融資を受けたい場合、公庫への申し込みが最優先です。公庫は原則として個人保証不要であり、他の融資機関より条件が有利です。公庫での融資申し込みが不承認の場合、その理由を確認した上で、改善して再申し込みするか、別の融資機関への申し込みを検討することが推奨されます。
信用保証協会を活用した民間融資の活用
公庫の融資だけでは不足する場合、信用保証協会の補保を付けて民間銀行からの融資を受けることが有効です。個人保証を提供することなく、民間銀行からの融資が可能になるのです。
自治体融資との組み合わせ
公庫融資に加えて、自治体融資を組み合わせることで、個人保証不要のまま、必要な資金が確保できます。複数の融資機関を活用することで、最適な資金計画が実現できるのです。
事業計画書の完成度の極限化
個人保証不要融資では、事業計画書の完成度が全てです。相談機関からのアドバイスを複数回反映させ、根拠資料を充実させることで、融資承認の確度が極度に高まります。
個人保証不要融資の利用後の経営管理
個人保証不要融資を受けた後の経営管理が重要です。
返済計画の確実な実行
個人保証不要であっても、融資返済は絶対的な優先事項です。返済遅延は、融資機関との信頼関係を失い、今後の融資を極めて困難にします。返済期日を厳格に守ることが重要です。
経営実績の定期的な報告
融資機関に対して、月間または四半期ごとに経営状況を報告することで、信頼関係が深まります。経営が計画通りに進捗しているか、課題が生じていないか、などを透明に報告することが重要です。
追加融資の可能性の検討
初回融資の返済実績が良好な場合、追加融資を受けることが容易になります。事業成長に伴う資金需要がある場合、追加融資を検討することが有効です。
個人保証不要融資と個人保証融資の選択
融資制度の選択は、起業家にとって重要な決定です。
個人保証不要を優先すべき理由
個人保証人を見つけることが困難な場合、または個人資産を守りたい場合は、個人保証不要融資を優先すべきです。公庫や信用保証協会を活用した個人保証不要融資を最優先に検討することが推奨されます。
個人保証を受け入れるべき状況
融資必要額が個人保証不要融資の上限を超える場合、または融資成功の確度を高めたい場合は、個人保証の提供を検討することもあります。ただし、信頼できる個人保証人が見つかることが前提です。
創業融資における個人保証不要制度の活用
個人保証不要制度を最大限に活用するための総合戦略があります。
複数融資機関の並行活用
公庫の個人保証不要融資、信用保証協会を利用した民間融資、自治体融資など、複数の個人保証不要融資制度を組み合わせることで、最適な資金調達が実現できます。
事業計画の完成度と融資成功の関連性
個人保証不要融資では、事業計画の完成度が全てです。相談機関の支援を最大限に活用し、計画書を完璧に近い水準に高めることが、融資成功を実現させるのです。
まとめ
創業融資における個人保証不要制度は、起業家にとって極めて重要な利点です。日本政策金融公庫の創業融資は原則として個人保証不要であり、低金利と長期返済が特徴です。信用保証協会の補保を利用することで、民間銀行からも個人保証不要の融資が可能になります。自治体融資では、個人保証不要に加えて、利息補給制度により、実質的な金利負担が軽減されることもあります。
個人保証不要融資を受けるためには、説得力のある事業計画書、十分な自己資金、明確な返済能力の証明が必須です。複数の融資機関を活用し、最適な資金計画を構築することで、個人資産を守りながら、事業を立ち上げることができるでしょう。

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