事業承継の準備は何から始める?中小企業のロードマップ|2025年版

中小企業庁の調査によると、
日本の中小企業の3社に1社が後継者不在 という深刻な状況にあります。

多くの経営者が、
「まだ早い」「引退はもっと先だ」「なんとかなる」
と考え、事業承継を後回しにしています。

しかし、事業承継は 会社の未来を左右する重大な経営課題 であり、
「思い立ってから半年で完了」できるような単純な作業ではありません。

実際には、
・経営権の承継
・株式・資産の整理
・相続対策
・金融機関との調整
・役員・従業員への説明
・後継者の育成
など、多岐にわたるステップが必要で、最低でも 3〜5年が必要 と言われています。

本記事では、
「事業承継、結局何から始めればいい?」
という経営者の最大の悩みに答える形で、初心者でも理解できる 事業承継のロードマップ を体系的にまとめました。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

目次

【第1章】なぜ事業承継は“早く始めるほど成功する”のか

事業承継は「急にやろうとしても絶対にうまくいかない」テーマです。

理由は3つあります。


① 後継者がすぐに育たないから

会社を知り、顧客を理解し、社員の信頼を勝ち取るには 最低3年、できれば5年 が必要です。


② 株式・相続・資産の調整には時間がかかるから

特に中小企業の株式は

・相続税

・贈与税

・事業承継税制

などが絡み、専門家でも1年で整理できません。


③ 金融機関や主要取引先との調整が必要だから

銀行は後継者の経営能力を見極められるまで慎重になるため、

早めの情報共有が不可欠です。


事業承継は 準備に5年、実行に1年 が基本です。

「早すぎる」ということはあり得ません。

【第2章】事業承継の全体像|3つの承継を理解することが出発点

事業承継には「3つの承継」があります。


① 経営権(会社の意思決定権)

・代表権

・取締役

・重要業務の引き継ぎ

会社の“舵取り”を委ねる部分です。


② 資産(株式・事業用資産)

中小企業ではオーナー社長が株式を100%持っているケースが多く、

承継方法を間違えると「相続税の負担」により事業継続が困難になります。


③ 人(従業員・顧客・取引先との関係)

後継者がスムーズに受け継ぐには、

会社の“人間関係の承継”が最も大切です。


この3つをバランスよく整えていくことが、

事業承継成功の必須条件です。

【第3章】最初にやるべきは“現状把握”|会社の棚卸しと課題の可視化

多くの経営者がいきなり「後継者探し」に進みますが、

最初にやるべきは必ず 会社の棚卸し(現状把握) です。


棚卸しの内容は大きく5つ

  1. 経営課題(売上・利益・依存構造)

  2. 財務(借入、キャッシュフロー)

  3. 株式・資産(誰のものか)

  4. 人員構成(主要メンバー・役職)

  5. 強みと弱み(事業価値の源泉)


会社の現状を可視化しない限り、

・後継者の条件

・承継方法

・最適なタイミング

が判断できません。


 

【第4章】後継者をどう選ぶか?親族・社員・第三者の違い

後継者は大きく3つの選択肢があります。


① 親族内承継:最も多い、最も安定しやすい

メリット:

・従業員、取引先の安心感がある

・育成期間をじっくり取れる

・株式承継がスムーズ


② 社内承継:社員の信頼が厚いパターン

メリット:

・すでに会社の文化に馴染んでいる

・顧客との関係も継続しやすい

デメリット:

・株式の買い取りが問題になりやすい


③ 第三者承継(M&A):後継者不在の解決策

メリット:

・後継者を外から連れてくる

・会社・従業員を守りながら引き継げる

・廃業回避につながる

後継者の適性を見極めるためには

数字よりも“会社を好きになれるか”が最重要 です。

【第5章】事業承継計画書の作り方|金融機関が重視するポイント

事業承継は“計画書があるかどうか”で成功率が大きく変わります。

金融機関は計画書をとても重視し、

特に以下のページを必ず見ます。


・会社の現状分析(数値・課題)

・後継者の経歴・強み

・承継スケジュール(5年計画)

・金融機関との関係性(借入状況)

・株式承継の方針


事業承継計画書は、

会社・後継者・金融機関の“共通言語”になります。

【第6章】5年かけて行う後継者育成ロードマップ

後継者育成は、時間をかけるほど成功します。


1〜2年目:現場理解フェーズ

・現場作業

・主要顧客への同行

・職人・社員との関係づくり


3〜4年目:経営体制への参加

・会議へ参加

・サブマネージャー職へ

・営業戦略や数字管理を実務で経験


5年目:経営権移譲の準備

・代表交代

・主要顧客への挨拶

・金融機関との面談

・株式移転の実行


育成で最も重要なのは、

“社員に信頼されるかどうか”です。

【第7章】株式・資産・個人保証|承継で最も難しい“お金の整理” 事業承継の実務で最も複雑なのが 株式と資産の承継 です。

① 株式の承継方法

・贈与

・相続

・売買

どの方法を選ぶかで税金が大きく変わります。


② 個人保証の解除

中小企業では、社長の個人保証が残っているケースが多く、

後継者への承継時に大きな壁になります。

金融機関との早期相談が必須です。


③ 事業承継税制の活用

一定の条件を満たすと、

株式の贈与税・相続税が“実質ゼロ”にできる支援制度です。


ここは専門家(税理士・M&A支援機関)と進めるべき領域です。

【第8章】税金・相続対策の基本|放置すると会社が潰れる理由

事業承継の最大のリスクは 税金(相続税・贈与税) です。

株価が高い会社ほど、

相続税が支払えず

→ 株式売却

→ 倒産

というケースが実際に発生しています。


税金対策で重要なのは以下の3つ:

・株価評価

・事業承継税制の検討

・生前贈与の計画

【第9章】第三者承継(M&A)という選択肢|会社を残すもう1つの方法

後継者が社内・親族にいない場合、

M&Aは“会社を残す手段”として非常に有効です。


M&Aは廃業の代わりではない

近年は、

・小規模企業

・地方企業

・職人企業

でもM&Aが増えています。

むしろ

「後継者がいないから事業が継続できない」

という悩みを根本的に解決する手段です。


M&A成功のポイント

・強みを正しく整理する

・早めに準備する(2〜3年)

・専門家を入れる

・従業員を守る観点を忘れない

【第10章】事業承継を成功させるための“関係者とのコミュニケーション”

事業承継は“関係者の理解”が成功を左右します。


① 従業員への丁寧な説明

突然の社長交代は、

離職・不信感・顧客離れにつながります。


② 主要取引先への挨拶

後継者との関係構築は早ければ早いほど良い。


③ 金融機関への定期的な報告

金融機関との関係は、

承継後の融資や支援にも影響します。


事業承継は「人の承継」でもあるため、

コミュニケーションが成功の鍵を握ります。

まとめ|事業承継は「経営者の最後の仕事」

事業承継は、会社の歴史と価値を未来につなぐための“経営者の最後の大仕事”です。

準備が早ければ、

・後継者が育ち

・従業員が安心し

・金融機関が支援し

・顧客がついてきて

・会社は継続の力を持つ

つまり、事業承継の準備こそ

会社の未来を守る最大の投資 です。

「まだ早い」ではなく、

今始めることに価値があります。

「事業承継、何から始めればいい?」
その悩み、まずはご相談ください。

会社の現状整理から計画書の作成、後継者育成ロードマップ、
金融機関への説明資料まで、
あなたの会社に合わせた事業承継支援をご提案します。

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