創業融資に必要な見積書の作成方法と活用ガイド

創業融資の申し込みにおいて、見積書は事業計画の信ぴょう性を左右する極めて重要な書類です。融資機関は、事業計画書に記載された資金計画が、実際の市場価格に基づいているのか、妥当な金額であるのかを、見積書を通じて検証します。適切な見積書がない場合、融資機関は資金計画の根拠に疑問を持ち、融資承認を躊躇する傾向があります。

本記事では、創業融資に必要な見積書の役割、見積書取得の方法、見積書の活用方法、複数見積もりの比較、見積書と資金計画の一貫性、融資機関による見積書の評価など、創業融資における見積書に関する完全なガイドを詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

創業融資における見積書の重要性

見積書は、創業融資の審査において、事業計画書に次ぐ重要性を持つ書類です。

見積書が融資審査で果たす役割

見積書は、事業計画書に記載された資金計画が、市場の現実に基づいているのかを検証するための重要な根拠資料です。融資機関は、見積書を通じて、以下の点を確認します。資金計画に計上された各費目の金額が、実際の市場価格と乖離していないか。複数の見積もりを比較することで、提示金額が相場に基づいているか。資金計画に計上されたすべての費目について、確実に実行されるのか。見積書は、事業計画書の信ぴょう性を証明するための客観的な根拠として機能します。

見積書がない場合のリスク

見積書がない状態で融資申し込みを行った場合、融資機関は複数のリスクを認識します。資金計画が、申し込み者の主観的な予測に基づいているのではないか。実際の工事費や設備費が、申告額を大きく上回るのではないか。事業開始後、追加の資金が必要になるのではないか、というリスクです。これらのリスクがあると判断された場合、融資機関は融資額を削減するか、融資を不承認にすることがあります。

融資機関による見積書の重視度

融資機関が見積書を重視する理由は、見積書が最も客観的で改ざんが困難な根拠資料だからです。融資申し込み者は見積書を作成できないため、業者から正式に取得した見積書は、客観性が高いのです。融資機関は、見積書に基づいて資金計画の現実性を判断し、融資額を決定します。

創業融資で必要となる主な見積書

事業分野ごとに、必要となる見積書が異なります。

店舗・事務所の内装工事見積書

飲食店、小売店、事務所などを開業する場合、店舗の内装工事見積書が最も重要な見積書です。内装工事は、多くの場合、資金計画において最も大きな費目です。複数の内装工事業者から見積もりを取得し、工事内容と金額を比較することが重要です。見積書には、工事範囲、工事期間、支払い条件などが詳細に記載されるべきです。

機械装置・設備の見積書

製造業、加工業などを開業する場合、生産設備の見積書が重要です。機械装置は、個別にカスタマイズされることが多いため、複数の業者から見積もりを取得することが重要です。見積書には、機械仕様、納期、アフターサービス、支払い条件などが詳細に記載されるべきです。

什器・備品の見積書

店舗什器、オフィス家具、什器棚などの見積書が必要です。複数の什器・備品メーカーから見積もりを取得し、品質と金額を比較することが重要です。見積書には、什器の仕様、数量、納期などが詳細に記載されるべきです。

初期在庫・商品の見積書

小売店を開業する場合、初期在庫の仕入れ見積書が重要です。複数の仕入れ先から見積もりを取得し、商品の種類、数量、単価などを確認することが重要です。見積書には、納期、返品条件、支払い条件などが詳細に記載されるべきです。

車両の見積書

営業用車両を購入する場合、自動車販売店からの車両見積書が必要です。見積書には、車種、仕様、価格、納期などが詳細に記載されるべきです。

情報システム・パソコンの見積書

情報システムの構築、パソコンやサーバーの購入が必要な場合、IT業者からの見積書が必要です。見積書には、システム仕様、納期、保守サービス、支払い条件などが詳細に記載されるべきです。

創業融資用見積書の取得方法

効果的な見積書取得の方法があります。

複数の業者から見積もり取得

同じ費目について、複数の業者から見積もりを取得することが重要です。一般的には、3社から5社からの見積もり取得が推奨されます。複数の見積もりを比較することで、提示金額が相場に基づいているか、または適正であるかが判断できます。融資機関も複数見積もりの存在を確認することで、金額の妥当性を認識します。

見積もり依頼時の詳細な仕様説明

業者に見積もりを依頼する際、自分の事業に必要な仕様を詳細に説明することが重要です。曖昧な仕様の依頼では、後で実際の工事費が見積もり額を大きく上回る可能性があります。事業計画に基づいた具体的な仕様を、業者に正確に伝えることが重要です。

正式な見積書の取得

見積もり依頼後、業者から正式な見積書を取得します。見積書には、業者の印鑑が押印され、見積もり有効期間が記載されていることが重要です。ただし、初期段階の見積もりであることが明記されていてもかまいません。融資機関は、見積書が一定の客観性を持つ根拠資料であることを確認します。

見積書の内容の詳細確認

受け取った見積書の内容を詳細に確認します。工事範囲、工事期間、支払い条件、アフターサービス、その他の条件など、すべての項目が事業計画と一致しているか、確認することが重要です。不明確な点は、業者に確認し、見積書に反映させることが重要です。

見積書の保存と整理

取得した見積書をすべて保存し、融資申し込み時に提出する準備をします。見積書は、原本で提出することが推奨されます。複数の見積書がある場合は、見積もり内容の比較表を作成し、融資申し込み書類に添付することで、見積もり検討の過程が明確になります。

創業融資における見積書の活用方法

見積書を資金計画に適切に反映させることが重要です。

見積書と資金計画の一致確認

取得した見積書の金額が、事業計画書の資金計画に記載された金額と一致しているか、確認します。一致していない場合は、事業計画書の資金計画を見積書に基づいて修正する必要があります。見積書に基づいた資金計画の方が、融資機関の信頼が高いです。

複数見積もりの比較表の作成

複数の業者から見積もりを取得した場合、見積もり内容と金額を比較する表を作成することが有効です。この表により、なぜその業者を選定したのか、その理由が融資機関に対して明確に説明できます。最も安い見積もりを選ぶのではなく、品質と価格のバランスを考慮した選定理由が説明されることが重要です。

見積書に基づいた資金配分の最適化

複数の見積もり情報に基づいて、資金配分を最適化します。必要以上に高額な費目がないか、逆に現実的でない低額な費目がないか、全体的なバランスが適切か、などを検討します。融資機関が納得できる現実的な資金配分が完成します。

見積書の有効期限の確認と管理

見積書には通常、有効期限が記載されています。融資申し込みから融資実行までの期間を考慮し、見積書の有効期限内に融資が実行されるようにスケジュール管理することが重要です。有効期限が切れた見積書は、再度取得する必要があります。

創業融資で見積書を提出する際の注意点

見積書提出時に注意すべき事項があります。

見積書の原本と複製の使い分け

融資申し込み時には、取得した見積書の原本を提出することが推奨されます。業者の印鑑が押印された原本は、最も客観性が高い根拠資料です。複製が必要な場合は、原本の認証を受けた複製を提出するか、業者に複製を認証してもらうことが重要です。

見積書の改ざんの絶対回避

見積書の改ざんは、融資詐欺に該当し、重大な違法行為です。見積書の金額を改ざんしたり、見積もり内容を変更したりすることは、絶対に避けるべきです。発覚した場合、融資契約が解除され、融資全体が不承認になる可能性もあります。

架空の見積書の使用の回避

実際に見積もり依頼をせず、架空の見積書を作成することは、融資詐欺に該当します。架空の見積書の使用は、法的責任を問われるリスクが高いため、絶対に避けるべきです。

見積書と実際の発注との整合性

融資が実行された後、見積書に基づいて実際に発注・工事が行われることが重要です。見積書と異なる業者に発注したり、見積書と異なる内容で工事が行われたりすることは、融資機関から指摘される可能性があります。

複数見積もりの比較と選定プロセス

複数見積もりを適切に比較・検討することが重要です。

見積もり比較表の作成

複数の業者から取得した見積もりを、見積もり比較表にまとめます。各業者の工事内容、金額、納期、支払い条件、アフターサービスなどを、わかりやすく表示することで、各業者の特徴が一目瞭然になります。

金額以外の要素の検討

見積もり選定において、金額だけでなく、以下の要素を検討することが重要です。業者の信頼性と実績、工事品質の評価、納期の確実性、アフターサービスの充実度、支払い条件の柔軟性など。最も安い見積もりが、最適な選択肢とは限りません。

業者との交渉と見積もり調整

複数の見積もりを提示して、業者と交渉することで、より有利な条件を得られることがあります。ただし、無理な値下げ要求は、工事品質の低下につながる可能性があるため、適切な交渉が重要です。

選定理由の明確な記録

複数の見積もりから特定の業者を選定した理由を、明確に記録しておくことが重要です。融資機関から質問された場合、選定理由を説明できる準備が必要です。

融資機関による見積書の評価ポイント

融資機関は、見積書をどのような観点から評価するのでしょうか。

見積書の客観性と信ぴょう性

融資機関は、見積書の出所、業者の印鑑の有無、見積もり有効期間の記載など、見積書の客観性を厳しく評価します。客観性の高い見積書であれば、資金計画の根拠として認識されます。

資金計画との一致度

見積書の金額が、事業計画書の資金計画に記載された金額と一致しているか、融資機関は確認します。一致していない場合、なぜ相違が生じたのか、その理由が説明される必要があります。

複数見積もりの有無

複数の業者から見積もりを取得した形跡があれば、融資機関は申し込み者が慎重に業者選定を行ったと評価します。複数見積もりがない場合、融資機関は申し込み者の検討が不十分ではないか、と疑う傾向があります。

見積もり内容の合理性

見積もり内容が、事業開始に本当に必要な内容であるか、融資機関は評価します。過度に豪華な工事、不要な設備、不合理な金額設定などが見られた場合、融資機関は投資の合理性に疑問を持ちます。

創業融資で見積書が不十分な場合の対応

見積書の準備が不十分な場合の対応方法があります。

追加見積書の取得

融資申し込み前に気づいた場合、不足している見積書を取得することが重要です。すべての費目について見積書が揃っていることが、審査の加速につながります。

見積書取得のスケジュール確保

見積書の取得には、業者への見積もり依頼から回答までの時間が必要です。融資申し込みスケジュールを立てる際に、見積書取得に必要な時間を確保することが重要です。

部分的見積書での対応

見積書がすべて揃わない場合でも、取得できた見積書で申し込みを進めることもできます。ただし、申し込み書類に「○○に関する見積書は、融資実行時に提出予定」などと注記することで、融資機関に対して見積書取得の意思を示すことが重要です。

まとめ

創業融資の申し込みにおいて、見積書は事業計画の信ぴょう性を証明する極めて重要な根拠資料です。融資機関は、見積書を通じて、資金計画が市場の現実に基づいているか、妥当な金額であるかを厳しく検証します。複数の業者から見積もりを取得し、金額と内容を比較することで、最適な選択肢を導出します。

 

見積書と事業計画書の資金計画が一致していることが、融資機関の信頼を獲得する最重要条件です。見積書の改ざんや架空の見積書の使用は、違法行為であり、融資契約解除や法的責任につながるため、絶対に避けるべきです。適切な見積書を取得し、これを根拠として資金計画を立案することで、融資申し込みの成功確度が大幅に向上するでしょう。

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