経営力向上計画実施状況報告書の記載例と完成ガイド

経営力向上計画の実施状況報告書は、計画実行期間終了後、企業が計画の成果を政府に報告する重要な書類です。報告書の記載方法、各セクションの具体的な記入内容、よくある記載誤りを正確に理解することで、企業は高質な報告書を完成させ、計画実行の成果が正式に認められます。
一方で、報告書作成方法を十分に理解していない企業も多く、不十分な報告により計画の完全な完了が認められない可能性があります。経営力向上計画実施状況報告書の役割、報告書の構成、各セクションの具体的な記載例、良い記載と悪い記載の比較、記載時のコツ、よくある誤りを正確に理解することで、企業は高質な報告書を作成でき、計画の完全な完了が正式に認められます。
本記事では、報告書の定義と役割、報告書の構成、各セクションの具体的な記載例、良い記載例と悪い記載例の比較、記載上のポイント、よくある誤り、成功事例など、報告書作成に関する実践的な情報を詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
経営力向上計画実施状況報告書の基本的な理解
報告書の定義と役割を理解することが重要です。
報告書の定義
経営力向上計画に係る実施状況報告書とは、計画実行期間終了後、企業が計画の実行状況と成果を、政府に対して報告する公式書類です。計画の完全な完了を示すのです。
報告書の法的性質
報告書は、政府の支援制度における計画実行の完成を示す、公式な報告書です。報告により、計画期間中の税制優遇措置の適用が最終確定されるのです。
報告書の極めて重要な役割
報告書により、計画が実際に実行されたこと、期待された成果が達成されたことが、正式に確認されるのです。報告がなければ、計画実行が不完全と見なされます。
報告書の対象期間
報告書は、認定計画の有効期限終了後、通常6ヶ月以内に提出されるべきです。期限内の提出が重要です。
経営力向上計画実施状況報告書の構成
報告書に含まれるべきセクションがあります。
基本情報セクション
企業名、申請番号、計画期間、認定年月日などの基本情報が記載されるセクションです。
計画実行状況セクション
計画期間中に実行された投資、施策、人員配置などが、具体的に報告されるセクションです。
成果測定セクション
改善目標に対する達成状況が、定量的に報告されるセクションです。KPIの測定結果が示されるべきです。
投資実績セクション
実際に投資された資産、設備、ソフトウェアなどが、具体的に報告されるセクションです。
財務成果セクション
計画実行による売上変化、利益変化などが、財務数値で報告されるセクションです。
課題と教訓セクション
計画実行過程での課題、得られた教訓などが、記載されるセクションです。
経営力向上計画実施状況報告書の基本情報セクション記載例
基本情報セクションの具体的な記載例があります。
企業名と申請番号の記載例(良い例)
企業名:◎◎株式会社、申請番号:◎◎◎-2023-001、申請年月日:令和5年6月15日、認定年月日:令和5年7月30日。
企業名と申請番号の記載例(悪い例)
企業名:◎◎、申請番号:001、申請年月日:6月。
計画期間の記載例(良い例)
計画期間:令和5年8月1日から令和8年7月31日まで(3年間)。有効期限内に全ての計画が実行されました。
計画期間の記載例(悪い例)
計画期間:約3年間。
経営力向上計画実施状況報告書の計画実行状況セクション記載例
計画実行状況の具体的な記載例があります。
計画実行状況の記載例(良い例)
初年度(令和5年):新型自動化機械の導入実施、クラウド会計システムの導入完了。二年度(令和6年):営業人員3名の新規採用完了、顧客管理システムの導入実施。三年度(令和7年):既存生産ラインの自動化完了、全従業員のデジタル技能研修完了。
計画実行状況の記載例(悪い例)
初年度:機械導入。二年度:新規採用。三年度:その他実行。
投資実行の具体的記載例(良い例)
初年度投資:設備機械(◎◎工業製、型式△△△)2台導入、2500万円。クラウドシステム導入、300万円。合計2800万円。二年度投資:新型検査装置導入、1800万円。合計投資額:4600万円。
投資実行の具体的記載例(悪い例)
初年度投資:機械導入。二年度投資:その他設備。投資合計:数千万円。
経営力向上計画実施状況報告書の成果測定セクション記載例
成果測定の具体的な記載例があります。
KPI達成状況の記載例(良い例)
改善目標1:売上増加。初年度目標:12.1億円(前年同等)→ 実績12.0億円。達成率99%。二年度目標:12.8億円(5%増)→ 実績12.7億円。達成率99%。三年度目標:13.5億円(5%増)→ 実績13.6億円。達成率101%。計画期間全体で売上が6%増加し、目標をほぼ達成しました。
KPI達成状況の記載例(悪い例)
改善目標1:売上を増加させました。初年度から三年度まで、売上が増加しました。目標達成状況:良好。
利益率改善の記載例(良い例)
改善目標2:利益率の改善。初年度目標:15%→ 実績14.8%。二年度目標:16%→ 実績16.2%。三年度目標:18%→ 実績17.5%。計画期間を通じて、利益率が約2.7ポイント向上し、ほぼ目標を達成しました。
利益率改善の記載例(悪い例)
改善目標2:利益率を改善しました。実績:改善されました。
経営力向上計画実施状況報告書の投資実績セクション記載例
投資実績の具体的な記載例があります。
設備投資実績の記載例(良い例)
設備投資1:CNC複合加工機械(◎◎工業製、型式△△△)2台。取得価格:各1250万円。取得時期:初年度9月。導入による効果:加工時間が40%削減され、生産能力が30%向上しました。
設備投資実績の記載例(悪い例)
設備投資1:加工機械を導入しました。投資額:約2500万円。効果:良好。
ソフトウェア投資実績の記載例(良い例)
ソフトウェア投資:クラウド型ERP(◎◎社製)導入。投資額:300万円。取得時期:初年度12月。導入による効果:受注から納品までのプロセスが統合され、処理時間が月20時間削減されました。
ソフトウェア投資実績の記載例(悪い例)
ソフトウェア投資:システム導入。投資額:300万円。効果:処理効率が向上。
経営力向上計画実施状況報告書の財務成果セクション記載例
財務成果の具体的な記載例があります。
売上・利益成果の記載例(良い例)
初年度:売上12.0億円(前年比99%)、営業利益1800万円(利益率15%)。二年度:売上12.7億円(前年比105%)、営業利益2050万円(利益率16.2%)。三年度:売上13.6億円(前年比107%)、営業利益2380万円(利益率17.5%)。三年間で売上が13%増加し、営業利益が32%増加しました。
売上・利益成果の記載例(悪い例)
初年度:売上12億円、利益1800万円。二年度:売上12.7億円、利益2050万円。三年度:売上13.6億円、利益2380万円。成果:良好。
ROI(投資回収率)の計算例(良い例)
投資総額4600万円に対して、三年間で営業利益が580万円増加しました。投資回収期間は7.9年と計算されます。ただし、設備の耐用年数が15年であることを考慮すると、投資回収期間は十分に短いと判断されます。
経営力向上計画実施状況報告書の課題と教訓セクション記載例
課題と教訓の具体的な記載例があります。
課題と対応の記載例(良い例)
計画実行過程での主要な課題:初年度の機械導入時に、従業員のスキル不足により、導入期間が予定より1ヶ月延長されました。対応策:予定外の従業員研修を実施し、スキル向上を図りました。今後への教訓:設備導入時には、従業員研修計画を更に充実させる必要があります。
課題と対応の記載例(悪い例)
課題がありました。対応を実施しました。教訓:今後改善します。
成功要因の記載例(良い例)
計画実行が成功した要因:経営層の強いリーダーシップにより、全従業員が計画実行に協力したこと。経営改善への社内合意形成が得られたこと。商工会議所などの外部機関のアドバイスを適切に活用できたこと。
経営力向上計画実施状況報告書でよくある誤り
報告書作成時に起こりやすい失敗があります。
計画との乖離の不明確な説明
計画目標と実績が大きく異なる場合、その理由が十分に説明されていないケースがあります。乖離がある場合は、理由の説明が必須です。
データの不一貫性
異なるセクションで記載された数値が、矛盾しているケースがあります。全体の一貫性が確認されるべきです。
投資実績と計画内容の対応不足
実際に投資した資産と計画に記載された資産が、対応していないケースがあります。大幅な変更の説明が必要です。
根拠書類の不十分性
実績データを立証する領収書などの根拠書類が、不十分なケースがあります。重要なデータについては、根拠書類の添付が必須です。
期限超過による提出
報告期限を超過して提出されるケースがあります。報告が受け付けられない可能性があるのです。
経営力向上計画実施状況報告書作成のコツ
報告書の品質を向上させるテクニックがあります。
データの時系列での整理
実績データが、時系列(月別、四半期別など)で整理されることで、変化の過程が明確に示されるのです。
定性的評価の組み込み
定量的なデータに加えて、経営改善による定性的な効果(従業員モチベーション向上など)も記載されるべきです。
計画との対比の明確化
計画に記載された目標と、実績の達成状況が、明確に対比されるべきです。達成度が一目瞭然に理解されるべきです。
グラフ・チャートの活用
複雑なデータは、グラフやチャートで視覚化されることで、分かりやすく表現されるのです。
複数回の見直し
報告書が完成した後、複数回にわたって見直され、誤りや漏れがないことが確認されるべきです。
経営力向上計画実施状況報告書の相談機関での活用
相談機関がどのようなサポートをするかがあります。
報告書作成方法についての相談
商工会議所などが、報告書の記載方法についての相談に応じます。
報告書の品質レビュー
相談機関が、完成した報告書のレビューを行い、改善点をアドバイスします。
提出前の最終確認
提出前に、相談機関で報告書が提出要件を満たしているか最終確認されるべきです。
経営力向上計画実施状況報告書の提出方法
報告書をどのように提出するかを理解することが重要です。
オンライン提出プラットフォームでの提出
報告書は、オンライン申請プラットフォームを通じて提出されるべきです。紙での提出は通常受け付けられません。
ファイル形式の確認
報告書がPDF形式など、指定されたファイル形式であることが確認されるべきです。
添付書類の準備
領収書、財務諸表など、報告書に添付すべき書類が準備されるべきです。
提出期限の厳守
報告期限内での提出が必須です。期限超過は報告書の受理拒否につながります。
経営力向上計画実施状況報告書の成功事例
報告書作成に成功した企業の実例があります。
詳細で説得力のある報告書事例
企業が、データを詳細に集計し、計画との対比を明確にし、計画を上回る成果を示す報告書を完成させたケースがあります。
課題への対応を示した報告書事例
企業が、計画実行過程での課題を率直に報告し、その対応策を示す誠実な報告書を提出したケースがあります。
経営力向上計画実施状況報告書の総合戦略
複数要素を統合した報告書策定戦略が重要です。
計画実行期間中からのデータ収集
計画期間中から、定期的にデータが収集・管理されるべきです。期間終了後に急いで集計するのではなく、日々の積み重ねが重要です。
実績管理システムの構築
実績追跡のための管理システムが構築されるべきです。
相談機関でのレビュー活用
報告書作成時に、相談機関でのレビューを受けることで、品質が向上するのです。
まとめ
経営力向上計画に係る実施状況報告書は、計画実行の成果を政府に報告する最終的な書類です。各セクションを具体的かつ定量的に記載することが重要です。計画期間中からのデータ収集、複数回の見直し、相談機関でのレビューを通じて、高質な報告書が完成されるべきです。期限内に報告書を提出することで、計画実行が完全に完了し、企業の経営改善が最終的に認められるでしょう。

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