創業融資の利息を完全解説!金利負担を最小化する戦略ガイド

創業融資を受ける際、利息負担は事業採算性を大きく左右する重要な要素です。しかし、多くの起業家は利息についての正確な知識を持たず、表面的な金利だけで融資を選択してしまいます。利息は金利だけでなく、返済期間、融資額、返済方法によって大きく変わります。正確な利息計算方法を理解し、複数の融資機関の利息を比較検討することで、返済負担を最小化できます。
本記事では、創業融資の利息計算方法、融資機関による利息の違い、利息を抑えるための戦略、利息と事業採算性の関係など、利息に関する完全な知識を詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資の利息と金利の基本概念
利息と金利は異なる概念です。金利は借入金に対する年間の利息の割合であり、利息は実際に支払う利息額です。同じ金利であっても、返済期間や返済方法によって、実際の利息額は大きく異なります。創業融資の利息を正確に理解するためには、この違いを認識することが重要です。
金利と利息の違い
金利は、年間に支払う利息を借入金額で割った割合です。例えば、1000万円を借りて年間30万円の利息を支払う場合、金利は3%です。一方、利息は実際に支払う利息額であり、返済期間が長いほど、実際の利息額は大きくなります。同じ1000万円で金利3%であっても、返済期間5年と返済期間10年では、支払う利息額が大きく異なるのです。返済期間5年の場合、総利息額は約78万円、返済期間10年の場合は約164万円というように、返済期間によって利息額が2倍以上に異なることもあります。
単利と複利の概念
融資の計算では、通常単利方式が採用されます。単利とは、元金に対してのみ利息がかかり、利息に対しては利息がかからない計算方法です。創業融資の場合、ほぼすべての融資が単利方式であり、複利方式は採用されていません。したがって、創業融資の利息計算は、単利方式に基づいて行われます。
固定金利と変動金利
創業融資には、固定金利と変動金利の2種類があります。固定金利は、返済期間中ずっと同じ金利が適用されるもので、金利上昇リスクがありません。変動金利は、市場金利の変動に応じて金利が変わるもので、金利上昇時に返済負担が増加するリスクがあります。日本政策金融公庫の創業融資は、通常固定金利であり、返済期間中の金利は変わりません。民間銀行の一部は変動金利を採用しており、長期返済では金利上昇リスクが存在します。
創業融資の利息計算方法
利息がどのように計算されるのかを理解することで、返済額を正確に予測できます。
基本的な利息計算式
利息は、以下の基本的な計算式で算出されます:年間利息=借入金額×金利。例えば、1000万円を借りて金利が2%の場合、初年度の年間利息は200万円です。ただし、返済金の一部が元金返済に充てられるため、翌年以降の利息は減少していきます。毎月の利息額は、残りの元金に金利を12で割った月利を掛けることで、計算されます。
元利均等返済方式
創業融資で最も一般的な返済方法が、元利均等返済方式です。この方式では、毎月の返済額が一定に設定され、その返済額の一部が利息、残りが元金返済に充てられます。返済が進むにつれて、利息分は減少し、元金返済分は増加します。例えば、1000万円を金利2%で120ヶ月(10年)返済する場合、月々の返済額は約91,000円で、初月の利息は約16,700円、元金返済は約74,300円となります。月が進むにつれて、利息分は減少し、元金返済分は増加していきます。
元金均等返済方式
元金均等返済方式では、毎月の元金返済額が一定に設定され、利息額は残元金に応じて変動します。返済初期は利息が多く、返済が進むにつれて利息が減少します。1000万円を120ヶ月返済する場合、毎月の元金返済額は約83,300円で、利息は初月が約16,700円、最終月が約139円となります。元金均等返済方式では、返済初期の返済額が高いため、返済初期の生活負担が大きくなります。一方、総利息額は元利均等返済方式より少なくなります。創業融資では、元利均等返済方式が採用されることが一般的です。
利息額の計算シミュレーション
融資機関のウェブサイトやツールを使用して、利息額を計算することができます。借入金額、金利、返済期間を入力することで、月々の返済額、総返済額、総利息額が自動的に計算されます。複数の融資機関の条件を入力して、比較することで、どの融資がいかに有利であるかが明確になります。
融資機関による利息の違い
異なる融資機関の利息を比較することが、最適な融資選択の鍵になります。
日本政策金融公庫の利息
日本政策金融公庫の創業融資は、金利1%から3%程度と低く設定されています。例えば、1000万円を金利2.5%で120ヶ月返済した場合、総利息額は約1,309,000円です。金利が民間銀行より低いため、利息額も大きく低く抑えられます。日本政策金融公庫の金利は固定金利であり、返済期間中に金利が上昇するリスクがないことも大きなメリットです。
民間銀行の利息
民間銀行の創業融資は、金利2%から5%程度に設定されていることが多いです。同じ1000万円を金利3.5%で120ヶ月返済した場合、総利息額は約1,841,000円となります。日本政策金融公庫との比較で、利息額が約532,000円多くなります。この差は、事業の利益に直結し、事業採算性に大きな影響を与えます。民間銀行は変動金利を採用することもあり、金利上昇時にはさらに利息が増加するリスクがあります。
信用金庫・地方銀行の利息
信用金庫や地方銀行の創業融資は、民間銀行と日本政策金融公庫の中間程度の金利が設定されていることが多いです。金利2.5%から4%程度が一般的であり、地域密着型のサービスと比較的低い金利が特徴です。利息額は日本政策金融公庫より多くなりますが、民間銀行より少ないことが多いです。
自治体融資の利息と利息補給制度
自治体の創業融資では、利息補給制度を備えていることが多いです。この制度では、実際に支払う利息の一部を自治体が補給するため、実質的な金利負担が軽くなります。例えば、名目金利が2.5%で、利息補給により0.5%が補給される場合、実質的な金利負担は2%となります。自治体融資を利用できる場合は、この利息補給制度を活用することで、大きなコスト削減が実現できます。
返済期間が利息に与える影響
返済期間の長さは、利息額に大きな影響を与えます。
短期返済と長期返済の利息比較
同じ金利であっても、返済期間が異なると、利息額は大きく異なります。1000万円を金利3%で返済する場合、返済期間5年では総利息額は約788,000円、返済期間10年では約1,643,000円、返済期間20年では約3,653,000円となります。返済期間が長いほど、総利息額は大きくなります。一方、毎月の返済額は、返済期間が長いほど少なくなります。5年返済では月々約176,000円、10年返済では月々約91,000円、20年返済では月々約49,000円です。
事業キャッシュフローと返済期間の最適化
返済期間を決定する際には、事業の利益と月々の返済額のバランスを考慮することが重要です。月々の返済額が利益を超えれば、返済は不可能になります。一般的に、月々の返済額が月間利益の50%程度までに抑えることが、事業経営の安定性の目安とされています。初期段階で利益が少ない場合は、返済期間を長くして、月々の返済額を低く抑える方が、事業成功の確度が高まります。
繰上返済による利息削減
返済期間中に、繰上返済によって元金を早期に返済することで、利息を削減することができます。繰上返済により、その後の月日の利息が発生しなくなるため、総利息額が減少します。事業が予定より早く黒字化した場合、余裕資金で繰上返済を実行することで、返済負担を軽減できます。
利息を抑えるための戦略
創業融資の利息を最小化するための複数の戦略があります。
自己資金比率の向上
自己資金比率が高いほど、融資機関のリスク認識が低下し、金利が低減される傾向があります。融資機関が定める3分の1の自己資金要件を上回り、50%以上の自己資金を準備できれば、金利交渉の余地が生じます。金利を0.5%から1%低減できれば、総利息額を数百万円削減することが可能です。
複数融資機関の金利比較
複数の融資機関に相談し、各機関の金利を比較検討することが重要です。同じ条件であっても、融資機関によって提示される金利が異なることがあります。複数の見積もりを取得することで、最も低い金利を提供する融資機関を選択できます。
優遇金利制度の活用
女性起業家、若年起業家、シニア起業家など、特定の属性に対して優遇金利が提供されている場合があります。対象となる属性がある場合、その優遇制度を活用することで、金利が0.2%から0.5%低減される可能性があります。
担保提供による金利低減
不動産などの担保を提供できる場合、金利が若干低減される傾向があります。担保提供により、融資機関のリスクが軽減され、より有利な金利が適用されることがあります。
信用保証協会の活用
信用保証協会の信用補保を受けることで、金利が若干改善される場合があります。特に、担保がない場合や、個人信用情報に問題がある場合、信用補保により、融資が通りやすくなり、金利交渉の余地が生じることがあります。
利息と事業採算性の関係
利息負担が事業経営に与える影響は極めて大きいです。
損益分岐点に対する利息負担の影響
事業から生じる利益が、融資の返済額をカバーできることが、事業継続の前提条件です。利息を含めた返済額が月間利益の50%以上に達する場合、事業の経営難度が著しく高まります。利息が低いほど、月々の返済額が少なくなり、事業経営に余裕が生まれます。
利息削減による利益の拡大効果
利息を1%削減できれば、1000万円の融資であれば年間利息が約100万円減少します。この削減分は、事業の利益に直結し、事業拡大や給与増加に充てることができます。長期的には、利息削減による効果は極めて大きいのです。
利息と事業成長のトレードオフ
返済期間を短くして利息を削減したいという気持ちは理解できますが、毎月の返済額が多くなれば、事業成長投資に充てられる資金が減少します。初期段階では、利息が多くなっても、返済期間を長くして、月々の返済額を低く抑え、事業成長投資に資金を充てる方が、長期的には事業利益が大きくなる可能性があります。
利息計算と返済計画の具体例
具体的な数字で、利息と返済計画を理解しましょう。
シナリオ1:1000万円、金利2%、10年返済の場合
月々の返済額:約91,566円 総返済額:約11,008,000円 総利息額:約1,008,000円
この場合、事業が月間利益50万円を達成すれば、月々の返済額は利益の18%程度に収まり、事業経営に大きな支障はありません。
シナリオ2:1000万円、金利3.5%、10年返済の場合
月々の返済額:約98,364円 総返済額:約11,804,000円 総利息額:約1,804,000円
利息額がシナリオ1より約796,000円増加します。この差は、事業利益に大きな影響を与えます。
シナリオ3:700万円、金利2%、7年返済の場合
月々の返済額:約92,800円 総返済額:約7,774,000円 総利息額:約496,000円
融資額を減らし、返済期間を短くすることで、利息額を大きく削減できます。ただし、月々の返済額はシナリオ1と同程度です。
利息軽減措置と政府支援制度
政府が提供する利息軽減措置が存在します。
利息補給制度
一部の自治体では、創業企業の利息補給制度を提供しており、実質的な金利負担を軽くしています。この制度を利用できれば、大幅な利息削減が可能です。
無利子融資制度
特定の条件を満たす創業企業に対して、無利子融資を提供する制度も存在します。ただし、対象が限定されており、すべての起業家が利用できるわけではありません。
返済猶予制度
返済初期に返済を猶予し、事業が黒字化してから返済を開始する制度も提供されていることがあります。この制度により、初期段階での返済負担を軽減できます。
まとめ
創業融資の利息は、金利、返済期間、融資額によって決定され、返済総額に大きな影響を与えます。日本政策金融公庫の低い金利を最大限に活用することで、民間銀行との利息差を数百万円削減することが可能です。自己資金比率の向上、複数融資機関の比較検討、優遇制度の活用により、利息をさらに低減できます。
利息を含めた月々の返済額が、予想される事業利益の50%以下に抑えることで、事業経営の安定性が確保されます。返済期間と返済額のバランスを慎重に判断し、短期的な利息削減よりも、長期的な事業成長を重視した返済計画を立てることが、事業成功の鍵になります。政府の利息補給制度や無利子融資制度が利用可能な場合は、積極的に活用することで、利息負担をさらに軽減できるでしょう。

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