創業融資に落ちた場合の対処法と再申し込み成功ガイド完全版

創業融資の申し込みに落ちることは、決して珍しくありません。多くの起業家が初回申し込みで不承認になり、その後の対応に悩んでいます。落選の原因を理解せず、同じ書類で再申し込みすれば、再び落選する可能性が高いです。
重要なのは、不承認理由を正確に把握し、その理由に基づいて計画を改善し、改善版で再申し込みすることです。
本記事では、創業融資に落ちる主な理由、落選後の対処方法、再申し込みの戦略、別の融資機関への申し込み方法など、融資獲得へのリカバリーガイドを詳しく解説します。落選から再成功へのプロセスを理解しましょう。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資に落ちることの現状と実態
創業融資の申し込みで不承認になることは、決して珍しい事態ではありません。統計によれば、創業融資の審査通過率は70%から80%程度であり、申し込みの2割から3割は不承認になっています。つまり、多くの起業家が初回申し込みで落選し、その後の対応に直面しているのです。
落選した起業家の中には、その後改善版で再申し込みして成功する人もいれば、別の融資機関に申し込んで成功する人もいます。重要なのは、落選を終わりではなく、改善の機会として捉え、その後の対応を適切に行うことです。
落選率が高い理由
創業融資の落選率が20%から30%もある理由は、融資機関のリスク管理にあります。融資機関は、融資金が確実に返済されることを最優先に考えており、返済可能性に疑問がある申し込みに対しては、厳しい態度で臨みます。事業計画の現実性が不十分、経営者の適性が不足している、自己資金が不十分、といった理由で、多くの申し込みが不承認になっています。
落選が必ずしも悪いことではない理由
融資機関の不承認判断が常に正確であるとは限りません。融資機関の審査基準や評価方法に異なる部分があり、異なる融資機関に申し込めば、承認される可能性があります。また、不承認理由を把握することで、事業計画の弱い部分が見えてきます。その弱い部分を改善した上で再申し込みすれば、融資獲得の可能性が高まります。つまり、落選は、改善の機会を与えてくれる出来事でもあるのです。
創業融資に落ちる主な理由
不承認になる理由を理解することが、改善の第一歩です。
事業計画書の現実性が不十分
最も多い落選理由が、事業計画書の現実性が不十分だと判断されることです。売上予測が根拠のない楽観的な数字である、原価率が業界標準と大きく異なっている、営業戦略が現実的でない、などの理由で、計画全体の信ぴょう性が失われるケースです。この場合、融資機関は「この計画では事業が成功するとは思えない」と判断し、返済不能のリスクを理由に不承認にします。
市場分析と競合分析の不足
営もうとする市場について、十分な調査がなされていないと判断された場合、事業成功の可能性が疑問視されます。市場規模の把握が不正確、競合企業の分析が浅い、顧客ニーズの理解が不足している、などが理由になります。融資機関は、市場理解の深さから、経営者の事業理解度を推測するため、分析が不十分だと経営能力そのものが疑問視されます。
自己資金が不十分
創業融資では、事業に必要な資金の3分の1以上を自己資金で用意することが原則です。この基準を満たさない場合、不承認になる可能性が高まります。自己資金が少ないほど、経営者の事業への真摯な取り組みが疑問視されるとともに、返済能力に対する懸念が高まります。
返済能力の不足
事業から生じる予想利益が、融資の返済額を十分にカバーできない場合、不承認になります。融資機関は、返済能力を最も重視するため、利益予測に不安がある場合は、融資を拒否します。利益が返済額の1.5倍以上あることが、目安とされることが多いです。
経営者の適性に関する懸念
営もうとする事業分野での職務経歴がない、業界知識が不足している、経営経験がない、といった理由で、経営者としての適性に疑問が持たれることがあります。特に、業界未経験での創業の場合、充分な学習と準備がなされていることを示す必要があります。
信用情報の問題
過去の債務不履行、クレジットカードの返済遅延、個人再生や破産経験など、個人の信用情報に問題がある場合、融資が不承認になります。信用情報は、融資申し込み時に信用情報機関に照会されるため、問題があれば融資機関に把握されます。
提出書類の不完全性
必要な書類が漏れている、記入漏れがある、計算ミスがあるなど、書類が不完全な場合、融資審査が進まず、最終的に不承認になることがあります。書類の質が悪いことは、事業への取り組みの甘さを示す信号として解釈されます。
融資申し込みが落ちた後の対処方法
落選後の適切な対応が、その後の融資獲得を左右します。
落選理由の詳細な確認
まず、融資機関に落選理由を詳しく聞くことが重要です。単に「計画に課題がある」という漠然とした説明ではなく、具体的にどの部分に問題があるのか、を理解する必要があります。融資担当者と直接話し、詳細な指摘を受けることで、改善すべき点が明確になります。
不承認理由の分析と改善計画の策定
落選理由が明確になったら、その理由の根本原因を分析し、改善計画を策定します。例えば、売上予測の根拠が不十分だと指摘された場合、市場調査を追加実施し、より根拠のある売上予測に修正する、といった具体的な改善が必要です。改善計画なしに再申し込みすれば、再び落選する可能性が高いため、改善に十分な時間をかけることが重要です。
専門家への相談
事業計画書の改善について、専門家のアドバイスを受けることが有効です。商工会議所、中小企業診断士、経営コンサルタントなど、起業支援の専門家に相談することで、改善点がより明確になり、改善のプロセスがスムーズになります。専門家からのアドバイスを受けることで、計画書の品質が大きく向上する傾向があります。
見積書や契約書などの根拠資料の整備
落選の理由が計画の現実性にある場合、その現実性を示す根拠資料を新たに準備することが有効です。市場調査機関のレポート、競合企業の情報、仕入れ先の見積書、顧客からの受注書など、計画の根拠を示す資料を整備します。これらの資料があることで、計画の信ぴょう性が格段に高まります。
自己資金の追加準備
自己資金が不十分だという理由で落選した場合、より多くの自己資金を準備することが必要です。親や親族からの援助、個人の貯蓄の増加など、自己資金比率を高める努力をします。自己資金の出所を明確に説明できる書類(銀行の通帳、贈与契約書など)も準備します。
創業融資の再申し込み戦略
同じ融資機関への再申し込み、または別の融資機関への申し込みを検討します。
同じ融資機関への再申し込み
初回申し込みで落選した融資機関に、改善版を提出して再申し込みすることが可能です。多くの融資機関では、修正版での再申し込みを受け付けています。落選理由に基づいた改善が行われていることで、再申し込みが通る可能性があります。ただし、短期間での再申し込みは避け、十分な改善期間を設けた上で再申し込みすることが重要です。通常、初回落選から3ヶ月程度の改善期間を経た上での再申し込みが目安とされます。
別の融資機関への申し込み
初回申し込みの落選機関とは異なる融資機関に申し込みすることも、戦略として有効です。異なる融資機関は、異なる審査基準を持っており、初回落選機関で不承認になった計画が、別の機関では承認される可能性があります。例えば、日本政策金融公庫に申し込んで落選した場合、民間銀行や信用金庫に申し込み直すことが考えられます。
複数融資機関への並行申し込み
短期間での多数申し込みは避けるべきですが、計画的に複数の融資機関に申し込みすることは有効な戦略です。例えば、初回落選から1ヶ月後に別の機関に申し込み、さらに1ヶ月後にまた別の機関に申し込む、というように段階的に進めることで、融資獲得の確度を高めることができます。
落選理由別の改善方法
具体的な落選理由に応じた改善方法があります。
売上予測の根拠が不十分な場合
より詳細な市場調査を実施し、売上予測の根拠を強化します。同業企業の売上規模、顧客あたりの平均購買金額、想定顧客数などのデータを収集し、売上予測の計算過程を明確にします。市場調査機関のレポート、業界統計など、信頼できるソースからの引用により、根拠のある予測が示されます。
原価率が業界標準と異なる場合
実際の仕入れ先に見積もりを取得し、実勢価格を把握します。業界標準の原価率と比較して、自社の想定がどの程度リアルであるかを検証します。業界標準より優れた原価率が期待される場合、その根拠を明確に示す必要があります。
営業戦略が現実的でない場合
より具体的で実現可能な営業戦略に修正します。顧客獲得の具体的な方法、営業に必要な投資、営業スタッフの確保方法など、営業戦略の各要素を詳細に示します。理想的な営業計画ではなく、実現可能な営業計画が求められます。
自己資金が不十分な場合
より多くの自己資金を準備するか、融資希望額を減らすことを検討します。自己資金比率を3分の1から50%以上に引き上げることで、融資機関の評価が改善されます。自己資金の出所を明確に説明できる書類を準備することも重要です。
経営者の適性が疑問視された場合
業界に関する学習成果を示す、業界セミナーへの参加、相談会の利用など、業界への真摯な取り組みを示す資料を準備します。経営経験のコンサルタントからのアドバイスを受けることで、経営者としての適性を強化することができます。
別の融資機関への申し込み時の注意点
異なる融資機関に申し込む際の注意点があります。
融資機関ごとの申し込み計画の策定
短期間に多数の融資機関に申し込むと、融資機関に悪い印象を与える可能性があります。各融資機関の特徴と融資条件を比較した上で、優先順位をつけて、計画的に申し込みを進めることが重要です。
各融資機関に応じた事業計画書のカスタマイズ
融資機関によって、重視する項目が異なります。日本政策金融公庫は経営者の適性を重視し、民間銀行は返済能力を重視するなど、各機関の特徴に応じて、事業計画書をカスタマイズすることで、融資機関の関心に合わせた説明ができます。
前回落選の事実の説明方法
別の融資機関に申し込む場合、前回落選の事実をどのように説明するかは慎重に判断する必要があります。隠蔽することは避けるべきですが、落選理由の改善を行ったことを、前向きに説明することが有効です。
落選から再成功へのマインドセット
心理的な対応も重要です。
落選を否定的に捉えないこと
融資申し込みの落選は、決して起業家としての能力を否定するものではありません。事業計画の改善の機会として、ポジティブに捉えることが重要です。多くの成功した起業家が、初回申し込みで落選し、その後の改善を通じて融資を獲得しています。
改善プロセスへの責任感の持つこと
落選後の改善は、融資機関に指摘されたことの修正ではなく、自分たちの事業計画を本当に良くするためのプロセスとして捉えることが重要です。この改善プロセスを通じて、事業計画がより現実的で強固なものになり、事業成功の確度が高まります。
継続的な申し込みの重要性
短期間での複数申し込みは避けるべきですが、落選を理由に申し込みを諦めることは避けるべきです。改善を重ねながら、段階的に複数の融資機関に申し込みを続けることで、最終的には融資獲得にたどり着くことができます。
落選理由の詳細把握のためのアクション
落選後、詳細な理由を把握するための具体的なアクションがあります。
融資担当者との面談予約
不承認通知を受けた後、融資機関に連絡して、担当者と面談する機会を設けることが重要です。書面による説明だけでなく、直接面談することで、より詳細な落選理由が聞けます。
メモの作成と改善リストの作成
面談の内容を詳しくメモし、融資担当者の指摘を整理します。その後、指摘内容に基づいた改善リストを作成し、改善の優先順位をつけます。
複数の専門家への相談
商工会議所、中小企業診断士、経営コンサルタントなど、複数の専門家に相談することで、異なる視点からのアドバイスが得られます。融資担当者の指摘と専門家のアドバイスを統合することで、より効果的な改善が実現します。
融資以外の資金調達手段への切り替え検討
融資獲得が困難な場合、別の資金調達手段も検討する価値があります。
個人投資家からの出資
個人投資家や天使投資家からの出資により、返済不要な資金を調達することが可能です。返済の必要がない出資は、事業にとって極めて有利です。
クラウドファンディング
プロジェクト型のクラウドファンディングにより、事業の構想に賛同する多数の小口投資家から資金を調達することができます。同時に、事業の市場需要を事前に検証することができるメリットもあります。
自己資金での事業スタート
融資を待つのではなく、自己資金の範囲で事業をスタートさせ、事業から生じるキャッシュフローで段階的に拡大する方法もあります。この場合、初期段階は小規模であっても、事業の実績ができた後での融資申し込みは、より通りやすくなります。
まとめ
創業融資の申し込みに落ちることは、決して終わりではなく、改善の機会です。落選理由を正確に把握し、その理由に基づいて事業計画を改善し、改善版で再申し込みすることで、融資獲得にたどり着くことができます。別の融資機関への申し込みも、戦略として有効です。
異なる融資機関は異なる審査基準を持っており、初回落選機関で不承認になった計画が、別の機関では承認される可能性があります。落選を学習の機会として前向きに捉え、計画の改善に真摯に取り組み、段階的に複数の融資機関に申し込みを続けることで、創業融資の獲得は十分に可能です。
融資獲得は、事業を軌道に乗せるための重要なステップですが、融資獲得そのものが目的ではなく、融資を活用して事業を成功させることが最終目標であることを忘れずに、着実に前に進みましょう。

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