創業融資の利率は?主な融資制度を比較し、金利を下げるコツを完全解説

創業融資を受ける際、多くの起業家が気になるのが利率(金利)です。融資制度によって金利は大きく異なり、1年間で支払う利息額も変わります。

本記事では、日本政策金融公庫、制度融資、銀行融資など主な創業融資の利率を詳しく比較し、金利を低くするための工夫を完全解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

創業融資の利率とは|相場と特徴を理解する

創業融資とは、新たに事業を始める起業家や経営者が、起業・開業資金を調達するための融資制度です。通常の企業融資では営業実績がない起業家への融資は難しいため、国や自治体が支援する特別な融資制度が用意されています。

 

創業融資の利率は、一般的に1~3%程度の範囲に収まることが多く、民間銀行の通常融資よりも低く設定されています。これは、起業家を支援する政策金融の特徴です。ただし、融資制度の種類、担保の有無、返済期間、事業内容など多くの条件によって利率は変動するため、実際の借入前に詳細を確認することが重要です。

主な創業融資制度の利率比較

創業融資にはいくつかの主要制度があり、それぞれの利率が異なります。自分の事業に最適な融資制度を選ぶためには、制度ごとの利率と特徴を把握することが必須です。

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」

日本政策金融公庫が提供する創業融資の代表的制度です。利率は基本的に基準利率が適用され、2024年時点では約2~3%の範囲が一般的です。ただし、担保の有無や返済期間によって利率幅は変動します。

 

最大のメリットは無担保・無保証人で融資を受けられる点です。新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方の場合、原則として0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の利率軽減が適用されます。この軽減により、実際の金利は約1~2.5%程度に抑えられることになります。

 

融資限度額は4,800万円(うち運転資金3,000万円)で、返済期間は最大20年です。創業期の資金ニーズを広くカバーできるため、多くの起業家に利用されています。

制度融資(自治体と金融機関が連携)

東京都などの自治体が提供する制度融資は、民間金融機関と信用保証協会が連携する融資制度です。金利は民間銀行の優遇金利にもとづき、約1.5~2.5%程度が一般的です。

 

制度融資の場合、金利に加えて信用保証協会の保証料が上乗せされます。保証料は約1%程度であり、金利と保証料を合計すると2.5~3.5%になるケースが多いです。そのため、表面金利だけで判断すると損をする可能性があるため、総合コストで比較することが重要です。

 

金利と保証料の合計が安い場合でも、返済期間や担保要件など他の条件も確認してから判断しましょう。

中小企業経営力強化資金

日本政策金融公庫が提供するもう一つの創業融資制度です。基準利率が適用される場合もあれば、特別利率A~Dが適用される場合もあります。利率は約1.6~2.5%程度が目安です。

 

この制度の特徴は、「中小企業の会計に関する基本要領」を適用することで、特別利率の対象になれば、さらに利率が低くなる可能性があります。会計知識が豊富で、正確な会計書類を作成できる起業家向けの制度といえます。

信用金庫の創業融資

信用金庫では独自の創業融資を提供している場合があります。利率は約2~3%程度が一般的で、地元密着型の細かいサービスが特徴です。

 

ただし、信用金庫では保証人や担保を要求するケースも多いため、日本政策金融公庫の無担保・無保証制度と比べると条件が異なります。事前に融資条件を確認することが重要です。

創業融資の利率が変動する主要な要因

同じ制度を利用しても、申請者の条件によって適用される利率が異なることがあります。利率が変動する主要な要因を理解することで、低い利率での借入の可能性が高まります。

担保の有無による利率変動

日本政策金融公庫の場合、担保を提供することで利率が低くなります。無担保の場合と有担保の場合では、0.1~0.5%程度の利率差が生じることもあります。

 

不動産を担保に提供できる場合は、融資条件の交渉時に担保提供を検討する価値があります。ただし、担保評価額によっては希望額の融資が受けられない可能性もあるため、事前にシミュレーションが必要です。

返済期間による利率変動

融資の返済期間が長いほど、金融機関のリスクが高まるため、利率が高くなる傾向があります。創業融資では返済期間が最大20年までのケースもあり、返済期間を短く設定できれば、より低い利率が適用される可能性があります。

 

ただし、短い返済期間を設定すると月々の返済額が増加するため、事業の初期段階では資金繰りが厳しくなる可能性もあります。バランスの取れた返済期間設定が重要です。

資金使途による利率変動

融資の使い道によっても利率が異なります。設備投資向けの融資と運転資金向けの融資では、適用される利率が異なる場合があります。

 

一般的に、設備投資向け融資のほうが、運用資金向け融資より利率が低く設定される傾向があります。これは、設備という具体的な担保価値がある資産に対する融資のため、リスクが低いと判断されるためです。

連帯保証人の有無による利率変動

法人が融資を申し込む際に、代表者が連帯保証人になる場合と、経営者保証免除制度を利用する場合で利率が異なります。連帯保証人ありの場合、利率が0.1%低くなるケースもあります。

創業支援貸付利率特例制度による利率軽減

創業支援貸付利率特例制度は、新たに事業を始める起業家向けの特別な利率軽減制度です。この制度を活用することで、通常よりも0.65~0.9%低い利率での融資が可能になります。

特例制度の適用条件

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。さらに、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

 

認定特定創業支援事業を受けていること、業務経歴が3年以上であること、または大学などの職業訓練校で対象訓練を受けていることなどが条件です。これらの条件を満たせば、確実に利率軽減が適用されます。

利率軽減による実際の節約額

1,000万円の融資を5年間で返済する場合、基準利率が2.5%だと、利率軽減後は1.85~1.6%になります。年間の利息負担は、基準利率では約25万円ですが、軽減後は約18.5~16万円になり、年間5~9万円の節約が実現します。

 

5年間で合計すると25~45万円の利息削減効果が期待でき、これは無視できない金額です。適用条件を満たすかどうかを、融資申請前に必ず確認しましょう。

創業融資の利率を低くするための5つのコツ

融資審査で有利な評価を受けることで、より低い利率での借入の可能性が高まります。利率交渉を成功させるための5つのコツを解説します。

1. 説得力のある事業計画書を作成する

事業計画書の質が高いほど、金融機関の信頼を得られ、より低い利率が適用される可能性があります。市場分析、競合分析、売上予測、損益計画など、根拠のある詳細な計画書を作成しましょう。

 

特に、売上予測の根拠が明確で、実現可能性が高いと判断されれば、「リスク低い」と評価され、利率優遇の対象になることもあります。

2. 十分な自己資金を準備する

融資額に対して自己資金の割合が高いほど、金融機関のリスクが低いと判断されます。融資限度額は自己資金の2倍程度とされており、自己資金が多いほど借入額も増え、相対的に利率も低くなりやすいです。

 

理想は融資総額の10%以上の自己資金を準備することです。この基準を大きく上回れば、利率交渉で有利に働く可能性があります。

3. 業界経験を積極的にアピールする

金融機関は、経営者の業界経験を重視します。同じ業種に3年以上勤務した経験があれば、審査において大きなプラス評価を得られます。

 

経歴書に具体的な職務経歴を記載し、面談時に経験をしっかり説明することで、「この人なら事業を成功させられる」という信頼を獲得でき、利率優遇の対象になる可能性が高まります。

4. 複数の融資制度を組み合わせる

単一の融資制度ではなく、複数の融資制度を組み合わせることで、より有利な条件を引き出せることがあります。例えば、新規開業資金と新創業融資制度を組み合わせると、無担保・無保証での融資が可能になり、利率優遇が適用されるケースもあります。

 

金融機関の担当者に「複数制度の組み合わせは可能か」を事前に相談してみましょう。

5. 税理士や専門家のサポートを受ける

税理士や中小企業診断士のサポートを受けた融資申請は、金融機関から高い信頼を得られます。専門家による会計的根拠のある事業計画書は、審査担当者に強い説得力を持ち、利率優遇の対象になる可能性が高まります。

 

特に、融資後の顧問契約を前提とした税理士のサポートは、金融機関の心証が良くなる傾向にあります。

創業融資の利率選択時の注意点

低い利率に惹かれて融資制度を選ぶと、後々思わぬコストが発生することもあります。利率選択時の重要な注意点を5つ解説します。

1. 保証料と利率の合計で判断する

制度融資を選ぶ際、金利だけでなく信用保証協会の保証料も加算される点に注意が必要です。見かけの金利が低くても、保証料が高ければ、実質的な借入コストは高くなります。

 

金利と保証料を合計した総合コストで比較することが重要です。

2. 返済期間による月々負担の違い

同じ利率でも、返済期間が長いと総支払利息が増えます。短期返済は月々の支払負担が大きくなる反面、総利息は少なくなります。

 

事業の初期段階での資金繰りを考慮して、バランスの取れた返済期間を選択することが重要です。

3. 無担保・無保証条件の確認

低い利率でも保証人が必要な場合、経営者の個人資産がリスクにさらされます。万が一事業が失敗した場合、代表者が個人的に返済責任を負うことになります。

 

無担保・無保証条件の融資を優先的に検討することをお勧めします。

4. 利率固定と変動の選択

融資契約によっては、利率が固定される場合と変動する場合があります。長期返済の場合、金利上昇リスクを考慮して、固定利率の選択も検討する価値があります。

5. 融資実行までの時間コスト

低い利率を提供する制度でも、審査に時間がかかれば、事業開始が遅延するリスクもあります。利率と融資実行スピードの両面を考慮した判断が必要です。

創業融資の利率に関するよくある質問

創業融資の利率について、起業家から頻繁に寄せられる質問と回答をまとめました。

Q1:利率の変動時期は?

利率は定期的に見直されます。日本政策金融公庫の利率は原則として月1回更新されるため、融資申請のタイミングにより適用される利率が異なることがあります。最新の利率情報は、公庫のホームページで確認することができます。

Q2:利率交渉は可能か?

日本政策金融公庫の利率は基本的に固定されており、個別交渉の余地は限定的です。ただし、複数の制度から最適なものを選択することで、結果的に低い利率を実現することは可能です。

Q3:融資後に利率を下げられるか?

一度融資を受けた後は、利率変更は難しいのが一般的です。ただし、特定の条件下では借り換えにより、より低い利率での融資に切り替えられる可能性もあります。詳細は金融機関に相談してください。

まとめ|創業融資の利率を賢く活用する

創業融資の利率は、融資制度、担保の有無、返済期間、事業計画の質など多くの条件に左右されます。一般的には1~3%程度が相場ですが、創業支援貸付利率特例制度などの軽減制度を活用することで、さらに低い利率での借入が可能です。

 

重要なのは、単に利率だけで融資制度を選ぶのではなく、保証料、返済期間、無担保・無保証条件などの総合的なコストを比較することです。説得力のある事業計画書、十分な自己資金、業界経験など、審査評価を高める要素に注力することで、より低い利率での融資成功を実現できるでしょう。

 

専門家のサポートを受けながら、自分の事業に最適な融資制度と利率を選択し、安定した事業スタートを切ることをお勧めします。

現状の準備で創業融資を受けられるか、不安はありませんか?

金融機関の融資審査では、以下のような基準が重視されます。

・開業予定の業種に関する経験や実績
・融資希望額に対してどの程度の自己資金を準備しているか
・信用情報や返済に関する過去の履歴

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