創業融資で保証協会を活用するメリットと申込方法を徹底解説

これから起業や開業を考えている方にとって、創業資金の調達は大きな課題です。

信用保証協会を活用した創業融資は、実績のない創業者でも民間金融機関から融資を受けやすくなる制度として、多くの起業家に利用されています。

本記事では、信用保証協会の創業融資について、仕組みやメリット・デメリット、申込方法まで詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

信用保証協会とは?創業融資における役割

信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が民間金融機関から融資を受ける際に、公的な保証人となる公的機関です。全国47都道府県と4つの市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)に設置されており、地域の中小企業の資金調達を支援しています。

信用保証協会の基本的な仕組み

創業融資における信用保証協会の最大の役割は、創業者の信用を補完することです。

 

創業間もない事業者は、経営実績や信用力が不足しているため、民間金融機関から直接融資を受けることが困難です。そこで信用保証協会が公的な保証人となることで、金融機関は融資のリスクを軽減でき、創業者は融資を受けやすくなります。

 

具体的には、万が一返済が滞った場合、信用保証協会が金融機関に対して代位弁済(肩代わり)を行います。ただし、これは債務が消えるわけではなく、返済先が金融機関から信用保証協会に変わるだけという点に注意が必要です。

創業融資で利用できる主な保証制度

信用保証協会では、創業者向けに様々な保証制度を用意しています。

 

代表的な制度として、創業関連保証や創業等関連保証があり、これから事業を始める方や創業後5年未満の方が対象となります。融資限度額は一般的に3,500万円程度で、保証期間は運転資金で10年以内、設備資金で15年以内が目安となっています。

 

また、都道府県や市区町村の制度融資と組み合わせることで、より有利な条件で融資を受けられる場合もあります。制度の詳細は各地域の信用保証協会によって異なるため、事業を始める地域の保証協会に確認することをおすすめします。

保証協会付き創業融資のメリット

信用保証協会を活用した創業融資には、創業者にとって多くのメリットがあります。

実績がなくても融資を受けやすい

最大のメリットは、創業間もない時期でも民間金融機関から融資を受けやすくなることです。

 

通常、メガバンクや地方銀行は実績のない創業者への融資に慎重ですが、信用保証協会の保証があることで、金融機関側のリスクが軽減されます。

 

特に創業関連保証は100%保証となるため、金融機関にとって融資を実行しやすい環境が整います。

無担保・無保証人で利用できる

個人事業主の場合、原則として連帯保証人は不要です。

 

法人の場合も、代表者のみが連帯保証人となるケースが一般的で、第三者の保証人を立てる必要はありません。また、多くの創業融資制度では無担保での融資が可能なため、担保となる不動産などを持っていない創業者でも利用できます。

長期間・低金利での借入が可能

信用保証協会を利用した融資は、返済期間を長く設定できるのが特徴です。運転資金で7~10年、設備資金で10~20年という長期の返済期間を設定できるため、月々の返済負担を軽減できます。

 

また、自治体の制度融資を利用する場合、信用保証料の一部補助や利子補給が受けられるケースもあり、実質的な負担を抑えられます。

創業相談やサポートが受けられる

多くの信用保証協会では、創業相談窓口を設けています。創業計画書の作成方法や事業計画のアドバイス、金融機関への申込方法など、創業に関する様々な相談に無料で対応してもらえます。

 

また、創業セミナーや創業スクールを開催している保証協会もあり、経営ノウハウを学べる機会も提供されています。

保証協会付き創業融資のデメリットと注意点

メリットが多い保証協会付き融資ですが、いくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。

信用保証料の負担が発生する

保証協会を利用する場合、信用保証料を支払う必要があります。

 

保証料率は企業の財務状況や保証制度によって異なりますが、一般的に年0.5%~2.0%程度です。例えば、1,000万円を5年間借り入れる場合、約25万円~100万円程度の保証料負担が発生します。

 

ただし、自治体の制度融資では保証料の一部または全額を補助してくれるケースもあるため、利用する制度の詳細を確認しましょう。

融資実行までに時間がかかる

保証協会付き融資は、金融機関と信用保証協会の両方で審査を受ける必要があります。

 

そのため、申込から融資実行まで1~2ヶ月程度かかるのが一般的です。日本政策金融公庫の新創業融資制度が1ヶ月程度で実行されるのに比べると、やや時間がかかります。

 

急ぎで資金が必要な場合は、余裕を持ったスケジュールで申込を行うことが重要です。

法人の場合は代表者保証が必要

個人事業主は原則不要ですが、法人の場合は代表者が連帯保証人になることが求められます。

 

これは、万が一返済ができなくなった場合、代表者個人にも返済義務が生じることを意味します。

 

経営者保証に関するガイドラインに基づき、一定の条件下では代表者保証を不要とする取り組みも進んでいますが、創業時は原則として代表者保証が必要と考えておきましょう。

代位弁済後も返済義務は残る

万が一返済が困難になり、信用保証協会が代位弁済を行った場合でも、債務そのものが消えるわけではありません。返済先が金融機関から信用保証協会に変わるだけで、引き続き返済義務は残ります。

 

また、代位弁済が行われると信用情報に傷がつき、今後の融資を受けることが極めて困難になります。

保証協会付き創業融資の申込から融資実行までの流れ

信用保証協会を利用した創業融資の申込方法は、大きく分けて2つのルートがあります。

金融機関経由で申し込む方法

最も一般的な方法は、取引を希望する金融機関に直接申し込む方法です。

 

まず、地方銀行や信用金庫などの金融機関窓口で、保証協会付き融資を利用したい旨を伝えます。金融機関での融資審査と同時に、信用保証協会への保証申込手続きを行います。

 

金融機関が融資適当と判断すると、必要書類を金融機関経由で信用保証協会に提出します。その後、信用保証協会で保証審査が行われ、承認されれば金融機関から融資が実行されます。

信用保証協会に直接申し込む方法

もう一つの方法は、信用保証協会に直接申し込む方法です。

 

地域の信用保証協会を訪問し、創業融資の相談と申込を行います。保証協会での審査通過後、保証協会から金融機関を紹介してもらい、融資手続きを進めます。

 

この方法は、まだ取引金融機関が決まっていない場合や、事前に保証協会の担当者に相談したい場合に適しています。

申込から融資実行までの期間

一般的な流れとしては、申込から融資実行まで1~2ヶ月程度を見込んでおく必要があります。金融機関での融資審査に2~3週間、信用保証協会での保証審査に2~3週間、融資実行手続きに1週間程度が目安です。

 

ただし、金融機関や保証協会の状況、申込時期によって前後する可能性があるため、早めに動き始めることが重要です。

創業融資の申込に必要な書類

信用保証協会を利用した創業融資では、様々な書類の提出が必要です。

法人の場合に必要な主な書類

法人で創業融資を申し込む場合、以下の書類が必要となります。

 

創業計画書(保証協会指定の様式)、信用保証委託申込書、法人の履歴事項全部証明書(発行後3ヶ月以内)、定款、法人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)、代表者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)などです。

 

また、納税証明書(法人税・事業税・都道府県民税)、許認可証(許認可が必要な業種の場合)、設備資金の見積書(設備投資を行う場合)、事務所や店舗の賃貸借契約書なども求められます。

個人事業主の場合に必要な主な書類

個人事業主の場合は、創業計画書、信用保証委託申込書、開業届出書の控え、個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)が基本となります。

さらに、確定申告書の控え(既に事業を開始している場合)、納税証明書(所得税・事業税・住民税)、許認可証、設備資金の見積書、事務所の賃貸借契約書などが必要です。

書類作成のポイント

創業計画書は最も重要な書類の一つです。

 

事業の概要、取扱商品やサービス、販売戦略、市場分析、収支計画などを具体的に記載します。数字の根拠を明確にし、現実的で実現可能な計画を示すことが審査通過のカギとなります。

 

また、自己資金の確認ができる通帳のコピーも重要で、計画的に貯蓄してきた履歴を示すことで、経営者としての信頼性が高まります。書類の記入ミスや漏れがあると、審査が遅れたり、申込自体が受け付けられなかったりする可能性があるため、慎重に準備しましょう。

保証協会の審査で重視されるポイント

信用保証協会の創業融資審査では、いくつかの重要なポイントがあります。

事業計画の実現可能性

最も重視されるのは、事業計画の実現可能性です。市場ニーズがあるか、競合他社との差別化ポイントは明確か、売上予測は根拠があるか、といった点が厳しくチェックされます。楽観的すぎる計画ではなく、保守的かつ現実的な数字を示すことが重要です。

自己資金の準備状況

自己資金の額と、その資金をどのように準備してきたかも重要な審査ポイントです。

 

一般的に、必要資金の3分の1程度の自己資金があることが望ましいとされています。また、コツコツと貯蓄してきた履歴があることで、計画性や本気度が評価されます。

 

タンス預金や、直前に借り入れて用意した資金は自己資金として認められにくいため注意が必要です。

経営者の経験と資質

創業する事業に関連する業界での経験や専門知識も重視されます。同業種での勤務経験があれば、事業の実現可能性が高いと判断されやすくなります。

 

また、面談での受け答えや態度から、経営者としての人柄や誠実さ、事業への熱意も評価対象となります。

返済能力の確認

創業融資では実績がないため、事業計画や自己資金比率から無理なく返済できるかがチェックされます。過去の税金滞納や信用情報に問題がある場合、審査に落ちる可能性が高くなります。

 

創業前から、税金や公共料金、クレジットカードなどの支払いを遅延なく行い、信用を積み上げておくことが大切です。

まとめ:保証協会の創業融資を成功させるために

信用保証協会を活用した創業融資は、実績のない創業者でも民間金融機関から融資を受けられる有効な手段です。無担保・無保証人で利用でき、長期間の返済が可能という大きなメリットがあります。

 

一方で、信用保証料の負担や審査に時間がかかる点、法人の場合は代表者保証が必要といったデメリットもあります。

 

申込にあたっては、具体的で実現可能な事業計画の作成、十分な自己資金の準備、必要書類の正確な準備が成功のカギとなります。また、多くの信用保証協会では創業相談窓口を設けているため、わからないことがあれば積極的に相談することをおすすめします。

 

専門家のサポートを受けながら、しっかりと準備を整えて申込を行いましょう。

現状の準備で創業融資を受けられるか、不安はありませんか?

金融機関の融資審査では、以下のような基準が重視されます。

・開業予定の業種に関する経験や実績
・融資希望額に対してどの程度の自己資金を準備しているか
・信用情報や返済に関する過去の履歴

ProdX Crowd は、創業期の方に向けて 創業計画書の作成支援から審査対応の準備までを一貫してサポートしています。創業融資に不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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