創業支援 融資|2025年版|起業資金を確実に調達するための完全ガイド

起業を決意したものの、資金調達の方法や創業支援制度について悩んでいませんか。
創業支援融資とは、国や自治体が創業者を後押しするために用意した、実績がなくても利用できる特別な融資制度です。
本記事では、日本政策金融公庫や自治体の創業支援融資について、2024年4月の最新制度変更を踏まえながら徹底解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業支援融資とは?国や自治体が起業を後押しする制度
創業支援融資は、これから事業を始める方や創業間もない事業者が利用できる公的な融資制度です。
通常の融資とは異なる優遇条件が設定されており、創業期の資金調達を強力にサポートします。
創業支援融資の定義と目的
創業支援融資とは、国や地方自治体が創業促進と地域経済の活性化を目的として提供する融資制度の総称です。
日本では起業率を高めることが経済成長の重要な鍵と位置付けられており、政府は「スタートアップ育成5か年計画」を推進しています。
この計画の一環として、創業期の資金調達をスムーズにするための支援制度が整備されています。創業支援融資の最大の特徴は、営業実績や決算書がなくても申し込める点です。
通常の融資では過去の業績が重視されますが、創業支援融資では事業計画の実現可能性や経営者の経験、自己資金の準備状況などが評価の中心となります。また無担保・無保証人で利用できる制度が多く、低金利で長期返済が可能なため、創業者の負担を大幅に軽減できます。
一般的な融資との違い
一般的な融資と創業支援融資の最大の違いは、審査の視点です。
通常の融資では決算書や営業実績、担保や保証人が重視されますが、創業支援融資では「これから何をするか」という将来性が評価されます。具体的には、事業計画の妥当性、市場の成長性、経営者の経験や能力、自己資金の準備状況などが審査のポイントとなります。
また金利面でも優遇されており、日本政策金融公庫の創業融資では年2.5%前後で借り入れが可能です。民間金融機関の通常融資と比較すると、1〜2%程度低い金利設定となっています。返済期間も設備資金で最長20年、運転資金で最長10年と長期に設定できるため、月々の返済負担を抑えながら事業に集中できます。
創業支援融資を利用するメリット
創業支援融資を利用する最大のメリットは、実績がない段階でまとまった資金を調達できる点です。
自己資金だけでは不足する開業資金を補うことで、設備投資や運転資金を確保し、事業を軌道に乗せることができます。特に日本政策金融公庫の新規開業資金では、2024年4月から融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡充されました。
従来の3,000万円から大幅に増額されたことで、より大規模な創業にも対応できるようになっています。また創業支援融資を利用することで、金融機関との信頼関係を早期に構築できます。
返済実績を積むことで、将来的な追加融資や他の金融サービスの利用がスムーズになります。さらに専門家による経営サポートを受けられる制度もあり、融資だけでなく経営ノウハウの習得にもつながります。
日本政策金融公庫の創業支援融資制度
日本政策金融公庫は、政府が100%出資する政策金融機関として、創業支援に最も力を入れている機関です。
全国152の支店で創業相談を受け付けており、地域を問わず利用できます。
新規開業資金(2024年4月拡充版)
新規開業資金は、公庫の創業支援融資の中で最も基本となる制度です。
新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象となります。2024年4月の制度変更により、融資限度額が3,000万円から7,200万円(うち運転資金4,800万円)へと大幅に拡充されました。
返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、据置期間は5年以内で設定できます。据置期間とは元金の返済を猶予し、利息のみを支払う期間のことで、創業直後の資金繰りを楽にする効果があります。基準利率から0.65%の引下げが適用され、年2.5%前後の低金利で借り入れが可能です。
無担保・無保証人での利用が原則となり、法人代表者の個人保証も不要です。業種や事業規模を問わず幅広い創業者が利用できる、最もスタンダードな創業支援融資制度といえます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアによる起業を支援する特別な制度です。
融資条件は新規開業資金と同じですが、特別利率が適用されるため、さらに低い金利で借り入れができます。この制度は、多様な人材による起業を促進し、経済の活性化を図ることを目的としています。
女性起業家の増加や、若年層・シニア層の経験を活かした起業を後押しする重要な役割を担っています。年齢や性別の要件を満たしていれば、特別な手続きなく優遇金利が自動的に適用されます。該当する方は積極的に活用すべき制度で、長期的な返済負担を軽減できます。審査基準は新規開業資金と同様ですが、金利面での優遇により総返済額を数十万円から数百万円削減できる可能性があります。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援)
過去に事業に失敗した経験がある方の再起業を支援する制度です。
廃業歴があっても、その経験を活かして新たな事業に挑戦する場合、融資を受けることができます。対象となるのは、廃業時の負債を返済している、または返済計画が明確になっている方です。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、特別利率が適用されます。返済期間は運転資金が15年以内と、通常の新規開業資金よりも長く設定されています。
前事業の債務返済に充てることも可能で、再起業のハードルを下げる工夫がなされています。一度の失敗で起業を諦めることなく、再チャレンジできる環境を整えることは、イノベーション創出の観点からも重要です。審査では、前回の失敗から何を学び、どう活かすのかという点が重視されます。
中小企業経営力強化資金
認定支援機関(税理士、中小企業診断士など)のサポートを受けて事業計画を策定する場合に利用できる制度です。専門家の関与により、より精度の高い事業計画を作成でき、融資審査においても有利に働きます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、特別利率が適用されます。
「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用することが要件の一つです。事業計画の策定から融資後のフォローまで、認定支援機関の継続的なサポートを受けられるため、創業後の経営安定にもつながります。
初めての起業で不安がある方や、事業計画の作成に自信がない方に特におすすめの制度です。専門家の費用は発生しますが、審査通過率の向上と融資額の増額を考えれば、投資価値は十分にあります。
自治体による創業支援融資(制度融資)
都道府県や市区町村などの自治体も、地域の創業促進を目的とした独自の融資制度を提供しています。
自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携して実施する制度融資は、地域密着型のきめ細かい支援が特徴です。
制度融資の仕組みと特徴
制度融資は、自治体が信用保証協会と民間金融機関と連携して提供する融資制度です。
信用保証協会が保証人となることで、実績のない創業者でも民間金融機関から融資を受けやすくなる仕組みです。自治体が貸付原資の一部を預託し、利子補給や保証料の補助を行うことで、創業者の負担を軽減しています。
融資限度額は自治体によって異なりますが、1,500万円〜3,500万円程度が一般的です。返済期間は設備資金で10年以内、運転資金で7年以内が標準的な設定となります。金利は年1.0〜2.5%程度で、自治体の利子補給により実質的な負担がさらに軽減されるケースもあります。
制度融資のメリットは、地域に根差した支援を受けられる点です。自治体の創業支援施設や経営相談窓口と連携した総合的なサポートを受けることができます。
東京都の創業支援融資
東京都では「創業」という制度融資メニューを提供しており、都内で創業する方を幅広く支援しています。
融資限度額は3,500万円で、設備資金は10年以内、運転資金は7年以内の返済期間が設定されています。据置期間は1年以内で、創業直後の負担を軽減できます。金利は年1.9〜2.5%程度(2025年時点)で、信用保証協会の保証料についても東京都が一部補助を行っています。
また区市町村の認定特定創業支援等事業による支援を受けた場合、融資利率が0.4%優遇される制度もあります。創業支援セミナーや個別相談を受けることで、より有利な条件での融資が可能になります。
さらに「女性・若者・シニア創業サポート事業」という特別メニューもあり、該当する方はより低金利で融資を受けられます。
神奈川県・大阪府など各地の制度
神奈川県では「創業支援融資(創業特例)」を提供しており、融資限度額は2,500万円です。
創業支援機関の経営指導を受けることが要件となっており、融資後も継続的なサポートを受けられます。大阪府では「開業サポート資金」として、融資限度額3,500万円の制度を用意しています。保証料の一部補助があり、創業者の初期負担を軽減する工夫がなされています。
愛知県では「創業等支援資金」として、融資限度額3,500万円の制度を提供しています。自治体によって制度内容や条件が異なるため、自分が創業する地域の制度を詳しく調べることが重要です。
各自治体のウェブサイトや商工会議所、商工会などで詳細な情報を入手できます。地元の金融機関や税理士に相談することで、最適な制度を見つけることができます。
日本政策金融公庫と制度融資の使い分け
日本政策金融公庫と制度融資のどちらを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。
それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った選択をすることが重要です。公庫のメリットは、申込から融資実行までが2週間〜1ヶ月と比較的早い点です。全国統一の基準で審査されるため、地域による差がありません。
無担保・無保証人が原則で、法人代表者の個人保証も不要です。一方、制度融資のメリットは、自治体の利子補給や保証料補助により、実質的な負担を軽減できる点です。地域密着型のきめ細かい支援を受けられることも魅力です。
デメリットは、融資実行までに1ヶ月半〜2ヶ月程度かかる点と、法人代表者の個人保証が原則として必要になる点です。急ぎの資金需要がある場合は公庫、時間に余裕があり地域の支援を手厚く受けたい場合は制度融資が適しています。
創業支援融資の審査を通過するための5つのポイント
創業支援融資の審査通過率は一般に50〜60%程度といわれています。
適切な準備により、審査通過の可能性を大幅に高めることができます。
ポイント1:自己資金は創業資金総額の3分の1を目指す
自己資金は、審査において最も重視される要素の一つです。
2024年4月から日本政策金融公庫では自己資金要件が撤廃されましたが、実際の審査では自己資金の有無が大きく影響します。創業融資を成功させたいなら、創業資金総額の3分の1程度は自己資金を用意しておくのが理想的です。
自己資金が多いほど「事業への本気度」「計画性」「返済能力」が高いと評価され、融資額も大きくなる傾向があります。自己資金として認められるのは、通帳などで形成過程が確認できる預貯金です。
タンス預金や直前に借りた資金、見せ金などは自己資金として認められません。少なくとも創業の半年前から計画的に資金を貯めている実績を示すことが重要です。通帳には不自然な入出金がないよう注意し、公共料金やクレジットカードの支払い遅延がないようにしましょう。
ポイント2:現実的で説得力のある事業計画書を作成する
事業計画書は、審査担当者が事業の実現可能性を判断する最重要書類です。
優れた事業計画書には、具体性、実現可能性、論理性が求められます。売上予測については、楽観的すぎる数字ではなく、根拠のある現実的な計画を立てることが信頼につながります。「初月から満席」「初年度から黒字」といった計画ではなく、事業が軌道に乗るまでの期間を考慮した堅実な計画を示しましょう。
競合分析では、競合他社の強みと弱みを分析し、自社の差別化ポイントを明確に示すことが重要です。「競合はいない」という分析は現実的でなく、かえって信頼を損ないます。また取引先候補や仕入先の具体名を挙げることで、事業の実現可能性を高めることができます。すでに見込み顧客がいる場合は、その具体的な情報を示すことで、大きなプラス評価となります。
ポイント3:業界経験と専門性をアピールする
創業する事業に関連する業界での勤務経験は、大きなプラス要因となります。
同業種での6年以上の勤務経験や、管理職としての経験があれば、審査で高く評価されます。全く未経験の業種で起業する場合は、なぜその事業を選んだのか、どのようにノウハウを獲得したのかを説明できるようにしましょう。
業界の専門家をアドバイザーとして招聘する、フランチャイズに加盟して本部のサポートを受ける、十分な研修期間を設けるなどの対策を示すことで、不安を払拭できます。
また資格や免許が必要な業種では、それらを取得していることが前提条件となります。飲食店なら食品衛生責任者、美容室なら美容師免許など、必要な資格は開業前に必ず取得しておきましょう。
ポイント4:信用情報を事前にチェックする
経営者個人の信用情報も厳しくチェックされます。
過去にクレジットカードやローンの返済遅延、債務整理、自己破産などの金融事故がある場合、審査に悪影響を及ぼします。携帯電話料金の滞納も信用情報に記録されるため、日常的な支払いにも注意が必要です。
融資を検討する段階で、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターなどの信用情報機関で自身の信用情報を確認しておくことをおすすめします。各機関で1,000円程度の手数料で開示請求ができます。
もし信用情報に問題がある場合は、その理由を正直に説明し、現在は改善されていることを示すことが重要です。
隠そうとすると、かえって印象が悪くなる可能性があります。
ポイント5:創業支援機関のサポートを受ける
各自治体には、商工会議所、商工会、産業振興センターなどの創業支援機関があります。
これらの機関では、無料または低料金で創業相談、事業計画書の作成支援、融資申込のアドバイスなどを受けることができます。
特に認定特定創業支援等事業の支援を受けることで、融資の金利優遇を受けられる場合があります。また認定支援機関(税理士、中小企業診断士など)のサポートを受けることで、審査通過率を大幅に向上させることができます。
専門家の支援を受けた場合、審査通過率は90%程度まで上昇するというデータもあります。費用は発生しますが、確実に融資を獲得したい場合は、専門家への依頼を検討する価値があります。
創業支援融資の申込から融資実行までの流れ
創業支援融資を受けるには、適切な手順で申込を進めることが重要です。
各ステップでのポイントを理解し、スムーズな融資獲得を目指しましょう。
ステップ1:創業相談と情報収集
融資申込の前に、まず創業相談を行うことを強くおすすめします。
日本政策金融公庫では全国152の支店で相談を受け付けており、創業ホットライン(0120-154-505)では平日9:00〜19:00まで専任スタッフが相談に応じています。自治体の制度融資については、各自治体の商工担当課や商工会議所、商工会で相談できます。
事前相談では、利用できる融資制度の確認、必要書類の説明、審査のポイントなどを聞くことができます。また各支店で定期的に開催される創業支援セミナーや個別相談会に参加することもおすすめです。
セミナーでは創業計画書の書き方や審査のポイント、先輩起業家の体験談などを学べます。オンライン相談も可能で、近くに支店がない方でも気軽に相談できる環境が整っています。
ステップ2:必要書類の準備
創業支援融資の申込には、多くの書類が必要となります。
主な必要書類として、借入申込書、創業計画書、本人確認書類(運転免許証やパスポート)、預金通帳のコピー(過去6ヶ月分程度)、源泉徴収票または確定申告書のコピー、設備資金の見積書、許認可証のコピー(該当業種の場合)などがあります。
特に重要なのが創業計画書です。日本政策金融公庫や各自治体の所定様式がありますが、それに加えて詳細な事業計画書を添付することで、審査担当者への説得力が大幅に増します。創業の動機、経営者の略歴、事業内容、市場分析、競合分析、販売戦略、収支計画などを具体的に記載しましょう。
書類に不備があると審査が遅れたり、印象が悪くなったりする可能性があるため、チェックリストを作成して漏れのないよう準備することが大切です。
ステップ3:申込と面談
書類が揃ったら、金融機関に申込を行います。
日本政策金融公庫の場合は管轄の支店に、制度融資の場合は取扱金融機関に申し込みます。申込後、書類審査を経て面談の日程が調整されます。
面談は融資の可否を左右する非常に重要なプロセスで、通常30分〜1時間程度行われます。想定される質問として、創業の動機、事業内容の詳細、競合との差別化ポイント、売上予測の根拠、資金の使い道、返済計画などがあります。これらの質問に対して、創業計画書の内容を完全に理解した上で、自分の言葉で説明できるよう準備しておく必要があります。
服装は清潔感のあるビジネスカジュアル程度で問題ありませんが、誠実で信頼できる経営者という印象を与えることを心がけましょう。質問には正直に答え、分からないことは素直に「分かりません」と言うことも大切です。
ステップ4:審査と融資実行
面談後、金融機関内部で融資の可否が審査されます。
日本政策金融公庫の場合、申込から融資実行までの期間は通常2週間〜1ヶ月程度です。制度融資の場合は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が関与するため、1ヶ月半〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
特に確定申告時期(2月〜3月)や決算期は混雑するため、余裕を持ったスケジュールで申込を進めることをおすすめします。融資が承認されると融資決定通知が届き、契約手続きを経て指定の口座に資金が振り込まれます。
融資実行後は、資金使途通りに資金を使用し、定期的に経営状況を報告する義務があります。
まとめ
創業支援融資は、国や自治体が創業者を後押しするために用意した、実績がなくても利用できる特別な融資制度です。
日本政策金融公庫の新規開業資金は、2024年4月から融資限度額が7,200万円に拡充され、より多くの創業者が十分な資金を調達できる環境が整いました。また各自治体の制度融資では、利子補給や保証料補助により、実質的な負担を軽減できます。
融資獲得のためには、十分な自己資金の準備(創業資金総額の3分の1が目安)、現実的で説得力のある事業計画書の作成、業界経験のアピール、信用情報の管理、創業支援機関のサポート活用が重要です。
本記事で解説した内容を参考に、しっかりと準備を進めて、あなたの起業を成功に導く資金調達を実現してください。創業支援融資を最大限活用し、夢の実現に向けて確実な一歩を踏み出しましょう。

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金融機関の融資審査では、以下のような基準が重視されます。
・開業予定の業種に関する経験や実績
・融資希望額に対してどの程度の自己資金を準備しているか
・信用情報や返済に関する過去の履歴
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