創業融資完全ガイド|起業資金を確実に調達する方法

起業を決意したものの、資金調達の方法が分からず困っていませんか。創業融資は、これから事業を始める方や開業間もない事業者が利用できる融資制度で、実績がない段階でも資金を借り入れることができます。本記事では、創業融資の種類から申込方法、審査通過のポイントまでを網羅的に解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

創業融資とは?基本知識を理解する

創業融資とは、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の事業者を対象とした融資制度のことです。


通常の融資と異なり、営業実績や決算書がなくても申し込むことができる点が最大の特徴となります。

創業融資の定義と対象者

創業融資は「これから事業を始める方」または「事業開始後税務申告を2期終えていない方」を主な対象としています。


個人事業主として開業する場合でも、法人として会社を設立する場合でも利用可能です。営業実績が乏しいことを理由に民間金融機関からの借り入れが困難な創業期において、事業の立ち上げに必要な資金を調達できる重要な制度といえます。


審査では事業計画の実現可能性や経営者の経験、自己資金の有無などが総合的に評価されます。

一般的な融資との違い

一般的な融資では決算書や事業実績が重視されますが、創業融資では「事業計画の妥当性」「経営者の経験や能力」「自己資金の準備状況」が審査の中心となります。また創業融資は無担保・無保証人で利用できる制度が多く、連帯保証人を立てることなく資金調達が可能です。


金利についても創業者を支援する目的から比較的低めに設定されており、返済期間も長期にわたって設定できるケースが一般的です。ただし審査通過率は一般融資よりも厳しく、事前の準備が成功の鍵を握ります。

創業融資を利用するメリット

創業融資の最大のメリットは、実績がない段階でもまとまった資金を調達できる点です。自己資金だけでは不足する開業資金を補うことで、設備投資や運転資金を確保し、事業を軌道に乗せることができます。


特に日本政策金融公庫の新創業融資制度では最大3,000万円まで無担保・無保証で借り入れが可能であり、開業時の資金需要に幅広く対応できます。


また低金利で長期返済が可能なため、月々の返済負担を抑えながら事業に集中できる環境を整えられます。創業融資を活用することで、資金面での不安を軽減し、事業計画の実現に専念できるのです。

創業融資の種類|主要な制度を比較

創業融資には大きく分けて「日本政策金融公庫の融資」「自治体の制度融資」「民間金融機関の創業融資」の3種類があります。


それぞれ特徴や条件が異なるため、自分の事業に最適な制度を選ぶことが重要です。

日本政策金融公庫の新創業融資制度

日本政策金融公庫は政府が100%出資する政府系金融機関で、民間金融機関では対応が難しい創業期の資金需要に積極的に応えています。代表的な制度である新創業融資制度は、無担保・無保証人で最大3,000万円まで借り入れが可能です。


融資対象は「新たに事業を始める方」または「事業開始後税務申告を2期終えていない方」で、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることが要件となります。


金利は2025年時点で年2.30〜3.35%程度と低めに設定されており、女性や若年層、高齢者による起業の場合はさらに優遇金利が適用されるケースもあります。


返済期間は運転資金で最長10年、設備資金で最長20年と長期にわたって設定できるため、無理のない返済計画を立てることができます。

自治体の制度融資(信用保証協会付き融資)

制度融資は都道府県や市区町村などの自治体が、民間金融機関、信用保証協会と連携して提供する融資制度です。信用保証協会が保証人となることで、実績のない創業者でも民間金融機関から融資を受けやすくなる仕組みです。


自治体によっては利子補給や保証料の補助を受けられるケースもあり、実質的な負担を軽減できます。融資限度額は自治体によって異なりますが、1,000万円〜3,000万円程度が一般的です。


制度融資のメリットは地域密着型のきめ細かい支援を受けられる点ですが、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が関与するため、融資実行までに時間がかかる傾向があります。また保証料の負担が発生する点も考慮が必要です。

民間金融機関の創業融資プログラム

メガバンクや地方銀行、信用金庫などの民間金融機関でも創業融資を取り扱っています。


特に地方銀行や信用金庫は地域経済の活性化を目的として、地元で起業する事業者への支援に力を入れているケースが多く見られます。


民間金融機関の創業融資は、既存の取引関係がある場合や、信用保証協会の保証を付けることで審査が通りやすくなります。融資条件は各金融機関によって異なりますが、一般的には公庫よりも金利が高めに設定されています。


ただし民間金融機関との取引実績を早期に構築することで、将来的な融資や金融サービスの利用がスムーズになるメリットがあります。


創業時から地元の金融機関と良好な関係を築くことは、長期的な事業運営において重要な意味を持ちます。

それぞれの制度の選び方

どの創業融資を選ぶべきかは、事業内容や資金需要、準備状況によって異なります。初めて起業する方や自己資金が限られている場合は、日本政策金融公庫の新創業融資制度が最も利用しやすい選択肢となります。


無担保・無保証で利用でき、審査基準も比較的明確だからです。一方、自治体の支援を手厚く受けたい場合や、地域に根差した事業を展開する場合は制度融資が適しています。


複数の制度を併用することも可能なため、必要な資金額や調達スピードを考慮しながら、最適な組み合わせを検討することが重要です。

創業融資の審査で見られるポイント

創業融資の審査では、通常の融資とは異なる基準で評価が行われます。実績のない段階での融資判断となるため、事業計画の質や経営者の資質が重視されます。

自己資金の重要性

自己資金は創業融資の審査において最も重視される要素の一つです。自己資金の有無は「事業に対する本気度」「計画性」「返済能力の基礎」を示す指標として評価されます。


日本政策金融公庫の新創業融資制度では、原則として創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要とされています。自己資金が多いほど審査では有利に働き、融資限度額も大きくなる傾向があります。


自己資金として認められるのは、通帳などで形成過程が確認できる預貯金が基本となります。タンス預金や直前に用意した資金は自己資金として認められない可能性が高いため注意が必要です。


少なくとも創業の半年前から計画的に資金を貯めている実績を示すことが重要です。

事業計画書の作成方法

事業計画書は創業融資の審査で最も重要な書類です。


金融機関は事業計画書を通じて「事業の実現可能性」「収益性」「返済能力」を総合的に判断します。優れた事業計画書には、創業の動機や事業内容、取扱商品・サービス、ターゲット顧客、競合分析、販売戦略、収支計画などが論理的に記載されています。


特に重要なのは売上予測の根拠を明確に示すことです。「なぜこの売上が達成できるのか」を具体的な数値やデータで説明できなければ、審査担当者を納得させることはできません。


また収支計画は楽観的すぎず、現実的な数字を設定することが信頼につながります。事業計画書の作成に自信がない場合は、創業融資に詳しい税理士や中小企業診断士などの専門家にアドバイスを求めることも有効な選択肢です。

経営者の経験と信用情報

創業融資では経営者の経験や能力も重要な審査項目となります。これから始める事業に関連する業界での勤務経験や実績があれば、事業の成功可能性が高いと評価されます。


同業種での6年以上の勤務経験や、管理職としての経験などは大きなプラスポイントとなります。また経営者個人の信用情報も確認されます。


過去にクレジットカードやローンの返済遅延、債務整理などの金融事故がある場合は、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。創業融資を検討する段階で、自身の信用情報を信用情報機関で確認しておくことをお勧めします。


経営者の人柄や熱意も評価対象となるため、面談では誠実な態度で臨み、事業への情熱を伝えることが大切です。

返済計画の妥当性

融資の審査では「借りた資金を確実に返済できるか」が最も重視されます。返済計画の妥当性を示すためには、事業の収支計画と返済スケジュールを整合的に組み立てる必要があります。


事業開始当初は売上が安定しないことを前提に、現実的な収支予測を立てることが重要です。月々の返済額が事業収支を圧迫しないよう、返済期間を適切に設定し、余裕を持った返済計画を提示することで、審査担当者の信頼を得ることができます。


また返済財源の裏付けとなる売上計画の根拠を明確に説明できることも重要です。

創業融資の申込から融資実行までの流れ

創業融資を受けるには、申込から融資実行まで一連の手続きを適切に進める必要があります。ここでは日本政策金融公庫を例に、具体的な流れを解説します。

必要書類の準備

創業融資の申込には多くの書類が必要となります。主な書類として、借入申込書、創業計画書、設備資金の見積書、不動産の登記簿謄本、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類、通帳のコピー、源泉徴収票などがあります。


創業計画書は日本政策金融公庫の所定様式がありますが、別途詳細な事業計画書を添付することで説得力を高めることができます。自己資金の確認では、通帳の過去6ヶ月分程度のコピーが必要となるケースが一般的です。


書類に不備があると審査に時間がかかったり、印象を悪くしたりする可能性があるため、事前にチェックリストを作成し、漏れなく準備することが重要です。

面談対策のポイント

書類審査を通過すると、金融機関の担当者との面談が実施されます。面談は審査において非常に重要なプロセスであり、ここでの印象が融資の可否を左右することも少なくありません。面談では事業計画の内容について詳しく質問されるため、創業計画書の内容を完全に理解し、自分の言葉で説明できるよう準備しておく必要があります。


想定される質問として、創業の動機、事業内容の詳細、競合との差別化ポイント、売上予測の根拠、資金の使い道、返済計画などが挙げられます。これらの質問に対して、具体的かつ論理的に回答できるよう、事前にシミュレーションしておくことが効果的です。


また服装や態度にも気を配り、誠実で信頼できる経営者という印象を与えることが大切です。

審査期間と融資実行のタイミング

日本政策金融公庫の場合、申込から融資実行までの期間は通常2週間から1ヶ月程度です。


ただし書類に不備がある場合や、審査内容が複雑な場合はそれ以上の時間がかかることもあります。自治体の制度融資では、複数の機関が関与するため、1ヶ月半から2ヶ月程度かかるケースも珍しくありません。


融資が必要なタイミングから逆算して、余裕を持って申込手続きを開始することが重要です。融資が承認されると融資決定通知が届き、契約手続きを経て口座に資金が振り込まれます。

創業融資の成功率を高める戦略

創業融資の審査通過率は一般に50〜60%程度といわれていますが、適切な準備と対策により成功率を大きく高めることができます。

専門家のサポート活用

創業融資に詳しい税理士や中小企業診断士、創業融資コンサルタントなどの専門家のサポートを受けることで、審査通過率を大幅に向上させることができます。


専門家のサポートを受けた場合、審査通過率は90%程度まで上昇するというデータもあります。


専門家は事業計画書の作成支援、審査のポイント指導、面談対策など、融資獲得のためのノウハウを持っています。特に初めて創業融資に挑戦する方や、事業計画書の作成に不安がある方は、専門家への相談を検討する価値があります。


費用は発生しますが、融資獲得の確実性が高まることを考えれば、投資対効果は高いといえるでしょう。

金融機関との関係構築

創業融資を検討する段階から、金融機関との良好な関係を築くことも重要な戦略です。日本政策金融公庫では創業前の相談窓口を設けており、事前相談を通じて融資制度の詳細や審査のポイントを確認することができます。


また創業セミナーや個別相談会に参加することで、融資担当者と直接コミュニケーションを取る機会を得られます。こうした接点を通じて、自分の事業への理解を深めてもらうことが、審査においてプラスに働く可能性があります。


民間金融機関の場合も、普通預金口座の開設など、小さな取引から関係を始めることで、将来的な融資相談がスムーズになります。

複数の資金調達手段の検討

創業融資だけに頼るのではなく、複数の資金調達手段を組み合わせることも賢明な戦略です。自己資金の充実はもちろん、家族や友人からの出資、クラウドファンディング、補助金や助成金の活用なども視野に入れることで、資金調達のリスクを分散できます。


特に補助金や助成金は返済不要の資金調達方法であり、創業時に利用できる制度も多数存在します。複数の資金源を確保することで、創業融資の必要額を減らし、審査通過の可能性を高めることにもつながります。

信用情報の管理と準備期間の確保

創業融資を受けることを決めたら、少なくとも半年前から準備を始めることをお勧めします。この期間に自己資金を計画的に貯蓄し、事業計画を練り込み、必要な許認可の取得や物件の選定などを進めます。


また個人の信用情報に傷がつかないよう、クレジットカードやローンの返済は必ず期日通りに行うことが重要です。


携帯電話料金の滞納なども信用情報に記録されるため、日常的な支払いにも注意を払いましょう。準備期間を十分に確保することで、審査に万全の状態で臨むことができます。

まとめ|創業融資で成功するために

創業融資は、実績のない段階でも事業資金を調達できる貴重な制度です。


しかし無計画に申し込んでも成功することは難しく、入念な準備と戦略が必要となります。


自己資金を十分に用意し、実現可能性の高い事業計画を作成し、面談対策を徹底することで、審査通過の可能性は大きく高まります。また専門家のサポートを活用することも、成功率を向上させる有効な手段です。


創業融資を適切に活用し、十分な資金を確保することで、事業を安定的にスタートさせ、成長軌道に乗せることができます。本記事で解説した内容を参考に、あなたの起業を成功に導く資金調達を実現してください。

現状の準備で創業融資を受けられるか、不安はありませんか?

金融機関の融資審査では、以下のような基準が重視されます。

・開業予定の業種に関する経験や実績
・融資希望額に対してどの程度の自己資金を準備しているか
・信用情報や返済に関する過去の履歴

ProdX Crowd は、創業期の方に向けて 創業計画書の作成支援から審査対応の準備までを一貫してサポートしています。創業融資に不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

無料相談する

ProdXマガジン