新規事業責任者に求められる役割とスキルを詳しく解説

新規事業の成否を左右する重要なポジションが、新規事業責任者です。ゼロから事業を立ち上げる過程では、戦略立案から実行、チームマネジメントまで多岐にわたる能力が求められます。
本記事では、新規事業責任者の具体的な役割や必要なスキル、直面する課題について詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
新規事業責任者の役割と業務内容
新規事業責任者は、単なる管理職ではなく、まさにミニ社長のような存在です。事業の方向性を決定し、チームを率いながら、ゼロから価値を生み出していく重要な役割を担います。
戦略立案からマネジメントまでの幅広い職務
新規事業責任者の業務は非常に多岐にわたります。まず、市場調査や競合分析を行い、事業の方向性を定める戦略立案が必要です。
どの市場をターゲットにするのか、どのような価値を提供するのかを明確にし、具体的な事業計画に落とし込んでいきます。さらに、プロジェクトのスケジュール管理やリソース配分、予算管理といったマネジメント業務も担当します。チームメンバーの業務進捗を把握し、トラブルが発生した際には迅速に対応する必要があります。
加えて、サービス開発やマーケティング戦略の立案、営業活動の推進など、実務レベルでの関与も求められることが多いでしょう。特にスタートアップや立ち上げ初期段階では、責任者自らが現場で動き、顧客と直接対話しながら事業を前に進めていく姿勢が不可欠です。
社内外の調整業務
新規事業責任者にとって、社内外の調整業務は避けて通れない重要な仕事です。社内では、経営層への進捗報告や稟議書の作成、他部署との連携調整など、多くの時間を費やすことになります。
特に大企業では、社内手続きや承認プロセスに想像以上の時間がかかることが多く、業務時間の半分以上を社内向けの資料作成に割かれるケースも少なくありません。定例会議や全社発表会での報告準備も頻繁に発生します。
新規事業は目立つ存在であるため、常に進捗を問われ、説明責任を果たす必要があります。一方、社外では、顧客やパートナー企業、投資家など、様々なステークホルダーとのコミュニケーションが必要です。契約交渉や提携の調整、外部ベンダーの管理など、社外折衝も責任者の重要な役割となります。
チーム育成と組織作り
新規事業を成功に導くためには、優秀なチームの構築が欠かせません。新規事業責任者は、プロジェクトに必要な人材を見極め、採用活動を行う必要があります。
企画している事業に必要な専門知識を持つ人材、プロジェクトを円滑に進められるコミュニケーション能力の高い人材、課題発見と解決力が高い人材など、多様なスキルを持つメンバーを集める必要があります。
さらに、メンバーの育成やモチベーション管理も重要な業務です。新規事業は既存事業と比べて成果が出づらく、不確実性も高いため、メンバーが不安を感じやすい環境にあります。
そんな中でも、チーム全体が前向きに取り組めるよう、責任者が率先して明るく元気な雰囲気を作り出すことが求められます。メンバーが困っている時には、自分の作業を後回しにしてでも手伝う姿勢が、チームの結束力を高めることにつながります。
新規事業責任者に必要なスキルと資質
新規事業責任者の募集要項を見ると、MBA取得やコンサルティング経験などが求められることがあります。しかし、実際に現場で成功している責任者に共通するのは、学歴や経歴よりも特定の資質やマインドセットです。
高い熱量と前向きな姿勢
新規事業責任者に最も必要とされるのは、圧倒的な熱量です。新規事業開発は基本的に失敗する確率の方が高く、その事業の成功を心の底から信じることは容易ではありません。
そんな困難な状況でも、チームを引っ張っていけるのは責任者の熱量だけなのです。常に楽しく、元気に、前向きな成功イメージを持って取り組む姿勢が、チーム全体の士気を高めます。
例えば、顧客から厳しいフィードバックを受けた時でも、「これは貴重な気づきだ」と捉えて、チーム全体でそのフィードバックから学べることを探していく。
このようなポジティブな姿勢が、逆境を乗り越える原動力となります。ただし、熱量だけでは不十分です。熱い気持ちがなければ苦しいゼロイチのフェーズを乗り越えることはできませんが、頭までヒートアップして盲目的に自分のアイディアを信じてしまっては成功は遠のきます。
冷静な判断力とデータ分析能力
情熱と同時に、冷静な判断力も不可欠です。市場データや顧客の声を客観的に分析し、事業の方向性が正しいかどうかを常に検証する必要があります。
自分のアイデアに固執せず、データや事実に基づいて柔軟に方向転換できる能力が求められます。KPIを設定し、数値をモニタリングしながら、改善点を見つけ出していく分析力も重要です。
また、経営層からの指示や方針転換に対しても、単に従うだけでなく、ロジカルに考えて意見をぶつける勇気が必要です。「それよりもこうしましょう」「今さら方向転換すると契約上トラブルになります」と正面から伝えられる判断力が、事業を守ることにつながります。
データと直感のバランスを取りながら、最適な意思決定を行う能力が、新規事業責任者には求められるのです。
強力なリーダーシップとコミュニケーション力
新規事業責任者には、多方面での強力なリーダーシップの発揮が求められます。スケジュール管理、トラブルシューティング、社内の他部門との連携、外部パートナーとの折衝、ドキュメント作成、計画の策定とモニタリング、メンバーのマネジメントなど、非常にマルチな能力が必要です。
特に重要なのは、コミュニケーション能力です。チームメンバーに対しては、ビジョンを共有し、モチベーションを高めるコミュニケーションが必要です。
ミッションと新規事業開発の接続を常に周りに伝達していくことで、自分自身のモチベーション維持にもつながり、チーム全体の方向性を統一することができます。経営層に対しては、事業の進捗や課題を的確に報告し、必要なリソースを引き出す交渉力が求められます。
顧客に対しては、課題を深く理解し、単にシステムを売るだけでなく、パートナーシップを築いて価値を共創していく姿勢が不可欠です。
新規事業責任者が直面する課題
新規事業責任者は、やりがいのあるポジションである一方で、様々な困難にも直面します。事前にどのような課題があるかを理解しておくことで、心の準備ができるでしょう。
社内調整と根回しの負担
新規事業責任者が最初にぶつかる壁が、社内手続きの複雑さです。稟議書を作成して回覧し、部長承認、役員承認、さらに全社会議での承認と、想像以上に時間がかかるプロセスが待っています。
仕様変更や追加予算が必要になるたびに再申請が必要となり、「こんなのやっているヒマがあったら、もっとサービス開発したい」と感じることも多いでしょう。しかし、この社内調整こそが大企業の宿命であり、避けて通れない業務なのです。
また、定例会議や社内イベントが多く、四半期ごとの全社発表会や部署横断プロジェクトのレビュー会など、進捗報告を求められる機会が頻繁にあります。社内向けの報告資料作成に業務時間の半分以上を奪われることも珍しくありません。
ここをサボると社内の理解が得られず、いざという時に誰も助けてくれなくなるため、泣く泣くでも対応する必要があります。外部の顧客やパートナーとの連携に割ける時間が想定より少なくなるという現実を、受け入れなければなりません。
経営層からの期待とプレッシャー
新規事業には、経営層から大きな期待が寄せられます。会社の未来を担う重要なプロジェクトとして位置づけられるため、常に注目を浴びる存在です。
しかし、その期待はプレッシャーにもなります。経営層の意見は時に変わりやすく、突然の方針転換を指示されることもあります。そんな時、すべて言われた通りにやっていたらイエスマン扱いされるリスクもあります。経営者は実は「そんなに簡単にYESって言うなよ」と内心思っているかもしれません。
だからこそ、正面から意見をぶつける勇気も必要なのです。また、新規事業は常に混乱が起き続けるものです。方針転換の指令があった際、「現場が混乱してしまいます」と言いたくなることもあるでしょう。しかし、現場メンバーが対応してくれるように根気強く説明するか、時には勢いで乗り切るパワーも大切です。
経営層の期待に応えつつ、現場の実態とのバランスを取る、高度な調整能力が求められます。
リソース不足への対応
新規事業は、既存事業と比べてリソースが限られていることが多いです。人材、予算、時間、すべてが不足している中でプロジェクトを進めなければなりません。
特に人材不足は深刻で、必要なスキルを持つメンバーを確保できないケースも多々あります。そんな状況では、責任者自らが様々な役割を兼任し、営業もマーケティングも開発もすべて対応する必要が出てきます。
また、予算の制約も大きな課題です。十分な予算がない中で、いかに効率的に事業を進めるかが問われます。
外部パートナーの活用や、既存リソースの転用など、創意工夫が求められます。時間的なプレッシャーも無視できません。市場の変化は早く、競合も常に新しいサービスを出してきます。限られたリソースの中で、いかにスピーディーに事業を立ち上げるかが成功の鍵となります。
成功する新規事業責任者になるために
困難な課題が多い新規事業責任者ですが、いくつかのポイントを押さえることで、成功確率を高めることができます。
顧客視点を持ち続ける
新規事業で最も重要なのは、顧客視点を持ち続けることです。社内調整や報告資料作成に追われると、つい顧客のことが二の次になってしまいがちです。
しかし、事業の成否を決めるのは顧客です。顧客との共創を常に意識し、単にシステムを売るだけでなく、顧客の課題を深く理解し、パートナーシップを築いて価値を共創していく姿勢が不可欠です。
顧客の真の目的は、ビジネス上の課題を解決し、自社の利益を最大化させることです。だからこそ、顧客の課題を会社としての認識で理解し、課題解決を目的としたプロジェクト立ち上げ支援を行う必要があります。
厳しいフィードバックを受けても、それを貴重な気づきとして捉え、真摯に向き合うことが、事業の成功につながります。
チームメンバーを支える姿勢
新規事業責任者はミニ社長のような存在であり、小さな船の仲間が苦しい時は率先して助ける必要があります。チームメンバーが業務で困っている時には、自分の作業を後回しにしてでも手伝うようにしましょう。
新規事業のメンバーは、既存事業と比べて成果が出づらい苦しい環境にいることが多いです。そんなメンバーに何かがあれば、単なる仕事を超えて声をかけていくことが重要です。
責任者が率先してサポートする姿勢を見せることで、チームの結束力が高まり、困難な状況でも乗り越えていける組織が作られます。また、メンバーの成長を支援することも責任者の重要な役割です。
新規事業は、メンバーにとっても貴重な成長機会です。挑戦を奨励し、失敗を許容する文化を作ることで、チーム全体の能力が向上していきます。
ミッションとの接続を意識する
新規事業開発は、特にスタートアップにおいては、ミッションに圧倒的に貢献する取り組みです。ゼロから1を生み出し、イノベーションを生み出す存在の重要性は、社会的にも注目されています。
新規事業責任者は常に、ミッションと新規事業開発の接続を周りに伝達していく必要があります。なぜこの事業をやるのか、どのような社会的価値を生み出すのかを明確にすることで、自分自身のモチベーション維持にもつながりますし、チーム全体の方向性を統一することにもつながります。
日々の細かい業務に追われる中でも、大きなビジョンを見失わず、ミッションに立ち返ることが、新規事業を成功に導く原動力となります。
まとめ
新規事業責任者は、戦略立案からマネジメント、社内外の調整、チーム育成まで、非常に幅広い役割を担う重要なポジションです。
成功するためには、高い熱量と前向きな姿勢、冷静な判断力、強力なリーダーシップとコミュニケーション力が不可欠です。社内調整の負担や経営層からのプレッシャー、リソース不足など、多くの課題に直面しますが、顧客視点を持ち続け、チームメンバーを支え、ミッションとの接続を意識することで乗り越えることができます。
新規事業責任者は、まさにミニ社長として、会社の未来を創る重要な役割を担っています。困難は多いですが、その分やりがいも大きく、自身の成長にもつながるポジションと言えるでしょう。

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