新規事業戦略に役立つフレームワークの選び方と活用法

新規事業を成功に導くためには、戦略的な思考と計画が不可欠です。しかし、ゼロベースで考えると時間がかかり、検討の抜け漏れも発生しやすくなります。そこで活用すべきなのがフレームワークです。

本記事では、新規事業戦略の各フェーズで使える具体的なフレームワークと、効果的な活用方法を詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

新規事業戦略におけるフレームワークの重要性

フレームワークは、新規事業開発のプロセスを効率化し、成功確率を高めるための強力なツールです。正しく活用することで、スピーディーかつ論理的な意思決定が可能になります。

 

フレームワークとは、日本語で「枠組み」を意味し、ビジネスにおいて思考や分析を行う際の基本的な構造を提供するものです。特定のタスクやプロジェクトを効果的かつ効率的に進めるための指針として、問題解決や戦略立案を支援する役割を果たします。

 

ゼロベースで新規事業を考えるよりも、実績のあるフレームワークを活用することで、アイデアを整理し、仮説を検証し、意思決定するスピードや精度が飛躍的に向上します。その結果、競合よりもいち早く正解にたどり着けるようになるでしょう。

フレームワークを活用する3つのメリット

フレームワークを活用することで、新規事業開発のプロセスが格段にスムーズになります。

 

第一に、複雑な情報やアイデアであっても、フレームワークを通して整理すれば、はっきりとした形にすることが可能です。アイデアや思考を決まった形式で書き出すこと自体が思考の整理になり、書き出したものを分類することで、アイデア同士の相関性や課題も見えやすくなります。

 

第二に、検討内容の抜け漏れを防ぐことができます。フレームワークは書き出す項目や流れが決まっているため、ルールに沿って項目を埋めるようにアイデアを書き出すことで、検討すべき要素を網羅的に捉えることができます。

 

検討段階で見落としていた要素が後から明らかになると、そのリカバリーには多くの時間や労力が必要になるため、事前の抜け漏れ防止は極めて重要です。

 

第三に、チーム内での情報共有が円滑になります。整理された情報は共有しやすく、全員が同じ方向を向いて進めるようになり、効率的な意思決定が可能になります。共通の型を提供することで、情報の粒度や方向性を統一でき、コミュニケーションが促進されます。

フレームワーク活用時の注意点

フレームワークは非常に有用なツールですが、万能ではありません。まず理解すべきは、フレームワークは答えを出すためのツールではなく、仮説を立てるための手段だということです。

 

フレームワークに要素を当てはめること自体が目的になってしまうケースがあるため、必ず目指すゴールや基準を明確化してからフレームワークを用いることが重要です。

 

また、フレームワークを使う際には、客観的な情報や視点をもとに検討することが求められます。主観的な思い込みや好みで市場やターゲットユーザーのニーズを見誤ると、事業が成功から遠ざかる可能性が高まります。

 

事業への思い入れが強すぎて主観や思い込みが入り込んでしまえば、導き出される結果が信頼性の低いものになってしまいます。

 

らに、フレームワークに時間をかけすぎないことも大切です。手間をかけすぎないよう、時間を決めて作業を行うなどの工夫が必要です。

 

検討の時間を節約できれば、その分サービスの作り込みやPoCに時間を割くことができます。

アイデア創出フェーズのフレームワーク

新規事業の第一歩は、革新的なアイデアを生み出すことです。このフェーズでは、多角的な視点からアイデアを発想するためのフレームワークが役立ちます。

オズボーンのチェックリスト

オズボーンのチェックリストは、アイデア発想をスピーディに行えるフレームワークです。既存事業やよくあるアイデアをさまざまな視点から見ることで、発想の幅を広げることができます。

 

このフレームワークは、転用できないか、応用できないか、変更できないか、拡大できないか、縮小できないか、代用できないか、置き換えできないか、逆転できないか、結合できないかという9つの視点で構成されています。新規事業のアイデアがなかなか出てこないときには、既存事業やアイデアをこれらの視点で再考してみましょう。

 

 

例えば、既存のサービスを「転用」して新しい顧客層にアプローチできないか、機能を「拡大」してより多くの価値を提供できないかなど、具体的な問いかけをすることで、新たな可能性が見えてきます。

マンダラート

マンダラートは、9マスの枠に中心となるテーマを置き、その周囲にアイデアを展開していくフレームワークです。中心のテーマから派生する8つのアイデアを書き出し、それぞれをさらに深掘りすることで、合計81個のアイデアを生み出すことができます。

 

このフレームワークの利点は、強制的にアイデアを広げる仕組みがあることです。最初は思いつかなくても、枠を埋めるために考え続けることで、思わぬアイデアが生まれることがあります。

 

チームでマンダラートを作成すれば、多様な視点が集まり、より豊かなアイデアが生まれるでしょう。

SCAMPER法

SCAMPER法は、既存のアイデアや製品を改良・変革するためのフレームワークです。Substitute(代替)、Combine(結合)、Adapt(適応)、Modify(修正)、Put to other uses(他の用途)、Eliminate(削除)、Reverse/Rearrange(逆転/再配置)の7つの視点から検討を行います。

 

既存のビジネスモデルや製品に対して、これらの問いを投げかけることで、新たな価値提案や差別化ポイントを発見できます。特に、既存事業の強みを活かしながら新規事業を展開したい場合に有効です。

市場分析フェーズのフレームワーク

アイデアが固まったら、次は市場の状況を正確に把握する必要があります。このフェーズでは、環境分析や競合分析のためのフレームワークが重要です。

3C分析

3C分析は、自社を取り巻く3者のステークホルダーの環境を分析する、最も基本的で重要なフレームワークです。Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析します。

 

顧客については、特性やニーズ、未解決の悩みを深掘りします。競合については、強みや弱み、市場での立場を把握します。

 

自社については、強みや弱み、市場での立場を客観的に評価します。これら3つの視点から分析することで、自社が参入すべき市場セグメントや、提供すべき価値が明確になります。

 

3C分析は、アイデア出しから市場理解、競合理解まで全段階で使える汎用性の高いフレームワークです。

SWOT分析

SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を体系的に整理するフレームワークです。Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの観点から分析を行います。

 

内部環境である強みと弱みは、自社が持つリソースや能力を評価します。外部環境である機会と脅威は、市場トレンドや競合状況、規制の変化などを分析します。

 

SWOT分析の結果をもとに、強みを活かして機会を掴む戦略、弱みを補強して脅威を回避する戦略などを立案できます。さらに、クロスSWOT分析を行うことで、より具体的な戦略オプションを導き出すことができるでしょう。

PEST分析

PEST分析は、マクロ環境を分析するフレームワークです。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点から、自社を取り巻く外部環境の変化を捉えます。

 

政治的要因としては、法規制や税制の変化、経済的要因としては景気動向や為替レート、社会的要因としては人口動態やライフスタイルの変化、技術的要因としてはイノベーションや技術革新を分析します。PEST分析により、長期的な市場の変化を予測し、事業機会や脅威を早期に発見することができます。

 

特に、新規事業は環境変化の影響を受けやすいため、マクロ視点での分析は欠かせません。

戦略立案フェーズのフレームワーク

市場分析の結果をもとに、具体的な事業戦略を策定するフェーズです。このフェーズでは、ターゲティングやポジショニングを明確にするフレームワークが重要になります。

STP分析

STP分析は、効果的なマーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。Segmentation(市場細分化)、Targeting(標的市場の選定)、Positioning(自社の位置づけ)の3つのステップで構成されます。

 

まず、市場を細分化し、どのようなセグメントが存在するかを明らかにします。次に、自社が最も価値を提供できるターゲット市場を選定します。

 

最後に、選定した市場において、競合と比較してどのようなポジションを確立するかを決定します。STP分析により、限られたリソースを最も効果的な市場セグメントに集中させることができ、差別化された価値提案が可能になります。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、市場において事業がどのような立ち位置にあるのかを視覚的に配置する表です。競合との差が出やすい比較項目を洗い出し、その中で最も顕著に差が出る項目を2つ抽出して軸にとります。

 

そして、自社や競合の事業がどの位置にあるのかを図示していくことで、マーケットにおける特徴を整理できます。ポジショニングマップを作成することで、競合が少ない市場の空白地帯を発見したり、自社の差別化ポイントを明確にしたりすることができます。

 

また、ターゲット顧客に対してどのような訴求をすべきかも見えてくるでしょう。

4P分析と4C分析

4P分析は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの要素から、マーケティング戦略を検討するフレームワークです。企業視点で、どのような製品を、いくらで、どこで、どのように販売するかを考えます。

 

一方、4C分析は、Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)という顧客視点での分析を行います。4P分析と4C分析を組み合わせることで、企業視点と顧客視点の両面から戦略を検討でき、より効果的なマーケティング施策を立案できます。

事業計画フェーズのフレームワーク

戦略が固まったら、具体的な事業計画に落とし込む必要があります。このフェーズでは、ビジネスモデル全体を可視化するフレームワークが有効です。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、9つの要素でビジネスモデル全体を1枚のシートに可視化するフレームワークです。顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客との関係、収益の流れ、リソース、主要活動、パートナー、コスト構造の9要素を記入します。

 

ビジネスモデルキャンバスを作成することで、事業の全体像を俯瞰でき、各要素間の関係性や一貫性を確認できます。また、チームメンバーとの共有もしやすく、事業計画についての共通認識を形成するのに役立ちます。

 

変更が必要になった際も、どの要素に影響があるかを把握しやすいため、柔軟な事業開発が可能になります。

リーンキャンバス

リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスをスタートアップ向けに最適化したフレームワークです。課題、顧客セグメント、独自の価値提案、解決策、チャネル、収益の流れ、コスト構造、主要指標、圧倒的な優位性の9要素で構成されます。

 

特に、「課題」と「解決策」を明確にすることを重視しており、顧客が本当に困っている問題を解決できているかを検証しやすくなっています。新規事業の初期段階では、仮説検証のスピードが重要であるため、リーンキャンバスは非常に有効です。

 

仮説が変わるたびにキャンバスを更新し、学びを蓄積していくことで、市場に適合したビジネスモデルを見つけることができます。

損益計算の基本フレーム

事業計画では、収益性の検証も欠かせません。売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益といった基本的な損益構造を明確にする必要があります。

 

初期投資額、固定費、変動費を洗い出し、損益分岐点を計算することで、事業の採算性を評価できます。また、キャッシュフローの予測も重要です。

 

利益が出ていても、資金繰りが回らなければ事業は継続できません。月次のキャッシュフロー計画を立て、資金調達のタイミングや必要額を明確にしておきましょう。

フレームワークを効果的に活用するポイント

フレームワークを最大限に活用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

複数のフレームワークを組み合わせる

ひとつのフレームワークだけを使用して検討を進めることは危険です。認知バイアスやフレームワーク自体の性質によって、検討に上がらない側面や見落とされてしまう事項が存在する可能性があるためです。

 

異なるフレームワークを組み合わせることで、ひとつのアイデアに対し、より広い視野からアプローチできるようになります。例えば、顧客目線のフレームワークである4C分析と、プロダクト主体のフレームワークである4P分析は、組み合わせて使うことで最大限の効果を発揮します。

 

マクロとミクロ両方の視点で客観的に市場やユーザーを捉えることで、これまでの経験や先入観で判断を誤ったり、検討すべきことを見落としたりする可能性が低くなります。

自社の状況に合ったフレームワークを選ぶ

フレームワークの定義は幅広く、種類もたくさんあります。その中から自社の状況に応じて適切なものを選び、目標を達成できるようにするのがポイントです。

 

まず、企業の目標、課題、現状を明らかにしたうえで、自社のニーズを特定することが大切です。そのうえで、さまざまなビジネスフレームワークを試して、比較検討しましょう。フレームワークが実際の企画や業務にどの程度適合するかの評価も重要です。新規事業の段階によっても適したフレームワークは異なります。

 

アイデア創出段階では発散系のフレームワーク、市場分析段階では分析系のフレームワーク、事業計画段階では統合系のフレームワークというように、段階に応じて使い分けることが効果的です。

実際の行動に落とし込む

フレームワークは考え事をするための手段ではなく、アイデアを実行に移したり、具体的な課題を見つけたりするためのものです。フレームワークを使って分析した結果を、必ず実際の行動計画に落とし込むことが重要です。

 

例えば、SWOT分析で自社の強みと市場機会を特定したら、それを活かす具体的な施策を立案し、実行スケジュールを決定します。ビジネスモデルキャンバスを作成したら、それをもとに最小限の機能を持つプロトタイプを開発し、顧客に検証してもらいます。

 

フレームワークを埋めることで満足せず、そこから得られた洞察を実務に活かすことで、初めてフレームワークの真価が発揮されます。

まとめ

新規事業戦略の策定において、フレームワークは思考を整理し、検討の抜け漏れを防ぎ、チーム内での情報共有を円滑にする強力なツールです。

 

アイデア創出フェーズではオズボーンのチェックリストやマンダラート、市場分析フェーズでは3C分析やSWOT分析、PEST分析、戦略立案フェーズではSTP分析やポジショニングマップ、事業計画フェーズではビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスなど、各段階に適したフレームワークを活用することが重要です。

 

効果的に活用するためには、複数のフレームワークを組み合わせること、自社の状況に合ったものを選ぶこと、実際の行動に落とし込むことを意識しましょう。ただし、フレームワークは万能ではなく、答えを出すツールではなく仮説を立てる手段であることを忘れてはいけません。

 

客観的な視点を持ち、時間をかけすぎないように注意しながら、フレームワークを補助ツールとして賢く活用することで、新規事業の成功確率を高めることができるでしょう。

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