新規事業提案パワポの作り方と通すための構成ポイント

新規事業の提案では、パワーポイント資料の質が承認を左右します。経営層や関係者に事業の価値を短時間で伝え、実現可能性を示すには、論理的な構成と説得力のある内容が不可欠です。
本記事では、新規事業提案パワポの作成方法と、提案を通すための実践的なポイントを詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
新規事業提案でパワポが重要な理由
新規事業提案において、パワーポイントは単なる資料作成ツールではなく、事業の価値を視覚的に伝える戦略的な武器です。
経営層や役員は限られた時間で多くの提案を評価するため、短時間で事業の全体像と収益性を理解できる資料が求められます。パワポは情報を整理し、データをビジュアル化することで、複雑な事業構想を分かりやすく伝えられる最適なツールです。
また、社内の新規事業提案制度や役員会では、プレゼンテーションの場で直接説明する機会が与えられます。この際、口頭説明とパワポ資料が連動することで、提案者の熱意と事業の論理性を同時に示すことができます。優れたパワポ資料は、提案後も関係者間で共有され、意思決定を後押しする材料として機能します。
さらに、パワポ作成のプロセス自体が、事業構想を深める効果があります。スライド1枚ごとに伝えるべきメッセージを明確化する作業を通じて、事業の課題や解決策、収益モデルなどの検証が進み、提案内容の精度が高まります。
新規事業提案パワポに必須の9つの項目
新規事業提案を成功させるには、評価者が知りたい情報を漏れなく盛り込むことが重要です。以下の9つの項目を押さえましょう。
ビジョンと事業背景
事業の最終的な目標と、なぜ今この事業に取り組むべきかを明確に示します。ビジョンは提案者の熱意を伝える羅針盤となり、プロジェクトメンバーやステークホルダーのモチベーションを高める役割を果たします。
事業背景では、市場環境の変化や自社を取り巻く状況、顧客ニーズの変化など、この事業を始める必然性を説明します。「なぜ今なのか」というタイミングの妥当性を示すことで、提案の説得力が大きく向上します。競合他社の動向や技術トレンドなど、客観的な環境分析を含めると効果的です。
解決する課題とターゲット
市場やユーザーが抱える具体的な課題を明示し、誰のどんな困りごとを解決するのかを明確にします。課題が曖昧だと、事業の必要性が伝わらず、提案が通りません。
ターゲットは「30代の共働き世帯」といった属性だけでなく、その人たちが直面している具体的なペインポイントまで掘り下げます。既存のソリューションではなぜ解決できていないのか、その理由を示すことで、新規事業の差別化ポイントが浮き彫りになります。
定量データや顧客インタビューの結果を添えると、課題の深刻度が伝わりやすくなります。
提供する解決策(サービス・プロダクト)
課題に対してどのような解決策を提供するのか、サービスやプロダクトの具体的な内容を説明します。機能やスペックの羅列ではなく、顧客体験がどう変わるのかを中心に伝えることが重要です。可能であれば、プロトタイプやモックアップ、デモ画面などを用いて、視覚的に理解できるようにします。
また、既存事業とのシナジーや、自社の強みをどう活かすのかを明示すると、実現可能性への信頼が高まります。技術的な優位性や特許の有無なども、競合との差別化要素として有効です。
市場分析と競合優位性
事業が参入する市場規模や成長性を示し、十分な収益機会があることを証明します。TAM(Total Addressable Market)、SAM(Serviceable Available Market)、SOM(Serviceable Obtainable Market)のフレームワークを用いると、市場機会を段階的に示せます。
競合分析では、直接競合だけでなく代替手段も含めて整理し、自社の優位性を明確にします。競合との比較表やポジショニングマップを活用すると、差別化ポイントが一目で理解できます。参入障壁や競争戦略についても言及し、持続的な優位性を築ける理由を説明しましょう
ビジネスモデルと収益計画
どのように収益を生み出すのか、ビジネスモデルを明確に示します。収益源、価格設定、販売チャネル、コスト構造など、事業の経済性を具体的に説明します。
収益計画では、初年度から3〜5年後までの売上予測と損益計画を提示します。楽観的すぎる数字は信頼を損ないますが、保守的すぎると事業の魅力が伝わりません。前提条件を明示し、複数シナリオ(ベース・楽観・悲観)を用意すると、リスクを理解した上での計画だと評価されます。投資回収期間やROIも示すと、経営判断の材料になります。
実行計画とマイルストーン
事業をどのように立ち上げ、成長させていくのか、具体的なロードマップを示します。立ち上げから1年、3年、5年といった時間軸で、達成すべきマイルストーンを明確にします。各フェーズで何を検証し、どの指標を達成すれば次のステップに進むのか、ステージゲートの考え方を取り入れると説得力が増します。
特に初期段階では、顧客検証やMVP開発など、リスクを最小化しながら仮説を検証するアプローチを示すと、実現可能性への信頼が高まります。
必要なリソースと体制
事業を推進するために必要な人員、予算、設備などのリソースを明示します。初期投資額だけでなく、各フェーズでどれだけの資金が必要か、資金計画を具体的に示します。
推進体制では、誰がどの役割を担うのか、必要なスキルセットは何かを明確にします。社内リソースで賄えるのか、外部パートナーとの協業が必要かも整理します。特に重要なポジションについては、候補者や採用計画も示すと、実行力があると評価されます。
リスクと対応策
事業を進める上で想定されるリスクを洗い出し、それぞれの対応策を示します。リスクから目を背けるのではなく、主体的に認識し対策を講じている姿勢が、提案の信頼性を高めます。
市場リスク、競合リスク、技術リスク、法規制リスクなど、多角的な視点でリスクを整理します。各リスクの発生確率と影響度を評価し、優先的に対処すべきリスクを明確にします。撤退基準も示すと、失敗時の損失を限定できる計画だと評価されます。
期待される効果とKPI
事業が成功した際に、会社にどのような効果をもたらすのかを示します。売上や利益といった財務的な効果だけでなく、ブランド価値向上や新規顧客獲得、既存事業とのシナジーなど、定性的な効果も含めます。
KPIは、事業の成功を測る具体的な指標を設定します。売上高、顧客数、利用率、継続率など、事業特性に応じた指標を選びます。各指標の目標値と測定頻度を明確にし、進捗をモニタリングできる体制を示すことで、PDCAを回せる事業計画だと評価されます。
パワポ作成で押さえるべき5つのポイント
優れた内容も、伝え方次第で評価が変わります。パワポ作成では以下の5つのポイントを意識しましょう。
ワンスライド・ワンメッセージを徹底する
1枚のスライドに複数のメッセージを詰め込むと、聞き手の注意が分散し、何を伝えたいのかが不明確になります。ワンスライド・ワンメッセージの原則を守り、各スライドで伝えるべき内容を1つに絞ります。
スライドタイトルには、そのスライドの結論や主張を簡潔に記載します。「市場分析」ではなく「市場は年率15%で成長しており参入機会がある」のように、メッセージを明確にします。本文は、そのメッセージを裏付けるデータや説明に徹し、余計な情報は削ぎ落とします。
ビジュアルで理解を促進する
人間は視覚情報を最も効率的に処理します。文字だけのスライドではなく、グラフ、図表、イラスト、写真などを効果的に活用し、情報を視覚化します。
データを示す際は、表よりもグラフを使う方が傾向や変化が直感的に理解できます。市場構造や事業の仕組みを説明する際は、フローチャートや図解を用いると、複雑な内容も分かりやすく伝えられます。ただし、装飾過多は逆効果です。配色は3色程度に抑え、アニメーションも最小限にとどめます。
論理的なストーリー構成を組み立てる
スライドの順序は、聞き手が理解しやすい論理的な流れで構成します。一般的には「問題提起→解決策→実現可能性→期待効果」という流れが効果的です。
目次スライドを設けて全体構成を示すと、聞き手は今どの部分の話を聞いているのか把握でき、理解が深まります。各セクションの冒頭にサマリースライドを入れると、情報の階層構造が明確になり、プレゼン全体の流れがスムーズになります。
数字とデータで説得力を高める
主観的な意見や推測ではなく、客観的なデータに基づいた主張を展開します。市場調査データ、顧客アンケート結果、競合分析、財務予測など、根拠となる数字を示すことで、提案の信頼性が大きく向上します。
数字を示す際は、出典を明記します。「当社調べ」だけでなく、公的機関や信頼できる調査会社のデータを引用すると、より説得力が増します。
また、比較対象を示すことで、数字の意味が明確になります。「売上1億円」よりも「既存事業の20%に相当する売上1億円」の方が、インパクトが伝わります。
シンプルで読みやすいデザインにする
洗練されたデザインは内容の信頼性を高めますが、凝りすぎたデザインは本質を見失わせます。シンプルで統一感のあるデザインを心がけます。
フォントは2種類程度に統一し、サイズは最低でも20ポイント以上にして、後方の席からも読めるようにします。行間や余白を十分に取り、窮屈な印象を避けます。配色は企業カラーやブランドイメージに合わせつつ、コントラストを意識して視認性を確保します。テンプレートサイトを活用すると、デザインの統一感を保ちやすくなります。
提案を通すためのプレゼンテーションのコツ
優れたパワポ資料を用意しても、プレゼンテーションで適切に伝えられなければ提案は通りません。
聞き手に合わせて内容を調整する
経営層向けと現場責任者向けでは、関心事が異なります。経営層は事業の収益性や戦略的意義、リスクを重視し、現場責任者は実行可能性や必要リソースに関心を持ちます。
提案相手が誰かを事前に把握し、その人たちが最も知りたい情報を強調します。時間配分も調整し、重要なスライドにはより多くの時間を割きます。想定される質問を事前にリストアップし、補足資料を準備しておくと、柔軟な対応ができます。
結論から伝えて興味を引く
冒頭で結論を述べることで、聞き手の興味を引き、その後の説明に注意を向けてもらえます。「この事業により3年後に売上10億円、営業利益2億円を見込んでいます」と最初に示すことで、その実現方法を知りたいという期待が生まれます。
ストーリー展開は、問題提起から始めて徐々に盛り上げる方法もありますが、限られた時間では結論ファーストの方が効果的です。最初に全体像を示し、次に各論で詳細を説明する構成にすると、理解が深まります。
質疑応答の準備を入念に行う
プレゼン後の質疑応答は、提案の真価が問われる場面です。想定質問とその回答を事前に準備し、チームメンバーと練習しておきます。
質問に対しては、まず結論を簡潔に答え、必要に応じて理由や根拠を補足します。分からないことを曖昧にせず、「確認して後日回答します」と正直に答える姿勢も大切です。批判的な質問にも冷静に対応し、事業改善の機会と捉えて前向きに受け止める姿勢を示します。
まとめ
新規事業提案のパワポは、事業の価値と実現可能性を短時間で伝える重要なツールです。必須の9つの項目を漏れなく盛り込み、ワンスライド・ワンメッセージやビジュアル活用などの原則を守ることで、説得力のある資料が完成します。
論理的なストーリー構成と客観的なデータに基づく主張、シンプルで読みやすいデザインを意識し、聞き手に合わせたプレゼンテーションを行うことで、提案が承認される確率は大きく高まります。パワポ作成は時間がかかりますが、この投資が事業化への第一歩となります。

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私たちは 中小企業診断士・認定支援機関として、中小企業の新規事業立ち上げを数多く支援してきました。構想段階の壁打ちから、事業計画の整理、補助金・制度活用、さらに必要に応じた販路開拓施策まで、「考える」だけで終わらせず、実行まで見据えて伴走します。
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