創業間もない企業が融資を受けるための実践的戦略をご紹介

創業間もない企業が追加融資を受けることは、初期融資よりも難しいと考えられがちですが、実は状況によっては容易になることもあります。初期段階の経営実績が存在し、初期融資の返済が滞りなく行われていれば、融資機関は追加融資に応じやすくなります。一方で、経営が計画通りに進まず、赤字が続いている場合は、融資が極めて困難になります。

本記事では、創業間もない企業が直面する融資の課題、融資を受けるための条件、融資申し込みの戦略、融資機関の評価ポイント、資金繰り改善の方法など、創業間もない企業の融資成功のための完全ガイドを詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

創業間もない企業の融資環境

創業間もない企業が直面する融資環境は、独特の課題と機会を持っています。

創業間もない企業の定義

創業間もない企業とは、一般的に事業開始から6ヶ月から2年程度の期間における企業を指します。この段階では、事業が軌道に乗り始めたばかりであり、十分な経営実績が蓄積されていません。初期融資を受けて事業を開始し、数ヶ月から数年の経営を経験した段階です。創業直後より実績があるため、融資評価が改善される傾向があります。

創業間もない企業が融資を必要とする理由

初期融資では不足していたことが明確になり、追加融資が必要になることがあります。売上が予測を上回り、運転資金が不足するケース、初期計画より事業拡大が必要になるケース、予想外の経費が発生するケース、などが考えられます。初期段階で成功が見えている企業ほど、成長投資のための追加融資を必要とします。

創業間もない企業の融資のしやすさと難しさ

創業間もない企業への融資は、相反する要素を持っています。初期実績が良好な場合、融資は容易になります。月間売上が計画を上回っている、顧客基盤が形成されている、初期融資の返済が滞りなく行われている、など良好な実績があれば、融資機関は追加融資に応じやすくなります。一方、初期実績が悪い場合、融資は極めて困難になります。赤字が継続している、返済に不安がある、事業計画との乖離が大きい、などの場合は、追加融資が承認されない可能性が高いです。

創業間もない企業が融資を受けるための基本条件

追加融資を受けるためには、複数の条件を満たす必要があります。

初期融資の返済実績

最も重要な条件が、初期融資の返済実績です。初期融資を滞りなく返済している場合、融資機関の信頼が高まり、追加融資が容易になります。逆に、返済に遅延がある場合、追加融資は極めて困難になります。融資機関にとって、返済実績は最も重要な評価基準です。

初期段階での経営実績

月間売上、経営費用、利益などの初期段階の経営実績が、追加融資の評価に大きく影響します。初期計画と実績が大きく乖離していない場合、事業計画の信ぴょう性が保証されます。売上が計画を上回っている場合は、更に評価が高まります。

赤字から黒字への推移過程

初期段階で赤字が続いている場合でも、赤字が縮小する傾向が見られれば、融資機関は将来の黒字化を期待して追加融資に応じることがあります。赤字が拡大している場合は、融資が承認されない傾向があります。

事業計画の修正と現実化

初期融資時の事業計画と現在の状況が異なる場合、修正版の事業計画を提示することで、融資機関の信頼が高まります。現実に基づいた計画修正と、その計画の実現見込みが示されることが重要です。

追加融資の使途の明確性

追加融資で得た資金をどのような用途に使用するのか、その使途が事業成長にどのように貢献するのか、が明確に説明される必要があります。単に「資金が必要」という説明では、融資が承認されません。

創業間もない企業における融資申し込みの戦略

効果的な融資申し込み戦略があります。

初期融資機関との関係継続

初期融資を受けた融資機関に、追加融資の相談をすることが最初のステップです。既に申し込み者と事業について理解がある融資機関への相談により、スムーズに進行する傾向があります。初期融資の返済実績が良好であれば、追加融資の承認確度が高まります。

経営実績の正確な説明

初期段階の経営実績を、数字で正確に説明します。月別の売上、営業経費、利益などを示し、事業がどのように推移しているかを明確にします。実績が計画と異なる場合、その理由を論理的に説明することが重要です。

修正版事業計画の提示

初期融資時の事業計画に、現在までの実績を反映させた修正版を作成します。実績に基づいた計画修正により、計画の現実性が高まります。同時に、追加融資後の成長計画を説得力を持って説明することが重要です。

追加融資の用途の詳細説明

追加融資で得た資金が、具体的にどのような目的で使用されるのか、その投資でどのような成果が期待できるのか、を詳細に説明します。投資による効果が数値で示されることが、融資機関の評価を高めます。

複数融資機関への相談

初期融資機関との追加融資相談と並行して、複数の融資機関に相談することも戦略として有効です。異なる融資機関からの異なる視点でのアドバイスが得られ、最適な融資戦略を立てることができます。

創業間もない企業の融資審査で重視される要素

融資機関は、複数の要素から総合的に評価を行います。

経営実績と計画の乖離度

融資機関は、初期融資時の計画と現在の実績がどの程度一致しているかを厳しく評価します。大きな乖離がある場合、融資機関は経営能力を疑い、融資を慎重に判断します。

返済能力の現在的評価

初期段階の実績に基づいて、現在の返済能力を評価します。月間利益が融資返済額をカバーできるのか、今後の成長見込みがあるのか、などが評価されます。

事業の成長軌跡

事業がどのような速度で成長しているのか、その成長が継続するのか、などが評価されます。成長が加速している企業ほど、追加融資が容易になります。

経営環境の変化への対応

初期計画が実現できなかった場合、その要因が何であり、どのように対応されているのかが評価されます。経営環境の変化に適切に対応している企業ほど、評価が高まります。

資金繰りの現状

月別のキャッシュフロー状況が、融資審査の重要な要素です。資金が逼迫している企業より、資金に余裕のある企業ほど、融資が容易になります。

創業間もない企業の資金繰り改善戦略

融資を受けることの他に、資金繰りを改善する方法があります。

売上回収の加速化

売掛金の回収期間を短縮することで、キャッシュフローが改善されます。顧客への請求タイミングを早める、前払い制度を導入する、回収条件を厳格化するなど、複数の方法が考えられます。

仕入れ条件の交渉

仕入れ先との支払い条件を交渉し、支払い期間を延長することで、手元の資金が増加します。長期的な取引関係に基づいた交渉が効果的です。

在庫管理の効率化

不要な在庫を最小化することで、運転資金の必要額が減少します。在庫回転率を向上させ、資金を効率的に活用することが重要です。

固定費の削減

可能な範囲で固定費を削減することで、損益分岐点が低下し、黒字化が加速されます。ただし、事業品質や顧客サービスを損なわない範囲での削減が重要です。

営業効率の向上

営業活動を効率化し、顧客獲得コストを削減することで、利益率が向上します。マーケティング投資の最適化、営業プロセスの改善などが考えられます。

創業間もない企業が融資を受けられない場合の対応

追加融資が承認されない場合の対応方法があります。

落選理由の詳細把握

融資機関に、不承認理由を詳しく聞くことで、改善すべき点が明確になります。理由を理解することで、改善策を立てることができます。

一定期間後の再申し込み

数ヶ月後に経営実績が改善された後、再度融資申し込みを行うことを検討します。経営実績の改善により、融資承認の可能性が高まります。

別の融資機関への申し込み

初回申し込みの融資機関で不承認になっても、別の融資機関に申し込む価値があります。異なる融資機関は、異なる審査基準を持っており、承認される可能性があります。

補助金や他の資金調達手段の検討

融資以外の資金調達手段を検討することも重要です。補助金、クラウドファンディング、増資など、複数の選択肢があります。

経営改善計画の実行

融資が受けられない場合、まずは経営改善に注力することが重要です。黒字化を実現し、経営実績を改善することで、その後の融資申し込みが容易になります。

創業間もない企業の融資成功のための総合戦略

複数の要素を統合した戦略が重要です。

初期融資の返済実績の最優先化

追加融資を受けるための最優先事項は、初期融資の返済実績を確実に維持することです。返済実績がすべての融資評価の基盤になります。

経営実績の透明な報告

融資機関に対して、月別の経営実績を定期的に報告することで、融資機関との信頼関係が深まります。良い実績だけでなく、困難な状況についても透明に報告することが重要です。

経営改善と融資申し込みの同時進行

融資申し込みと並行して、経営改善を進めることで、両面からの対応が実現できます。融資が承認される可能性が高まり、融資が承認されない場合でも、経営が改善されているという効果があります。

まとめ

創業間もない企業が融資を受けることは、初期融資より評価が容易になる場合がある一方、経営実績が悪い場合は極めて困難になります。初期融資の返済実績が最も重要な評価基準であり、これが良好な場合、追加融資の承認確度が大幅に向上します。経営実績を数字で正確に説明し、修正版事業計画を提示することで、融資機関の信頼が高まります。追加融資の用途が明確に説明されることが重要です。

 

初期融資機関との関係を継続しながら、複数の融資機関に相談することで、最適な融資条件が得られます。融資が承認されない場合でも、経営改善に注力し、数ヶ月後の再申し込みを検討することが有効です。初期段階での経営実績を最大限に活用し、戦略的に融資申し込みを進めることで、創業間もない企業の成長資金調達が実現できるでしょう。

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