創業3年目の融資を成功させるための実績活用と成長資金調達ガイド

創業3年目は、事業が軌道に乗り始め、成長への投資が必要になる重要な時期です。この段階での融資は、創業初期の融資とは異なり、実績に基づいた評価が行われるため、融資が通りやすくなります。一方で、初期投資が回収されつつある時期であり、新たな成長投資のための資金確保が課題になります。
本記事では、創業3年目での融資の特徴、実績を活用した融資申し込み、追加融資の条件、事業拡大への資金調達戦略、融資機関との関係構築など、創業3年目の融資成功のための完全ガイドを詳しく解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業3年目の事業段階と融資の特徴
創業3年目は、事業発展において極めて重要な転換点です。
創業3年目における事業の段階
創業直後の最も困難な1年目を乗り越え、初期段階の事業運営ノウハウが蓄積された2年目を経て、創業3年目は事業の本格的な成長段階に入ります。顧客基盤が形成され、売上が安定し始め、事業モデルの有効性が検証される時期です。同時に、この段階で黒字化を達成する企業が多く、事業の生存可能性が確認されます。創業3年目までに廃業する企業が多い現実を考えると、この段階に到達した企業は、既に事業生存の最大の関門を通過した企業です。
創業3年目での融資の有利性
創業3年目での融資申し込みは、創業初期の融資と比較して、極めて有利な条件で行われます。理由は、実績が存在するからです。実際の売上、経費、利益データが存在し、事業計画書の予測と実績がどの程度乖離していたのかが客観的に評価できます。事業計画が大きく外れていない場合、融資機関の信頼が高まり、融資が容易に承認される傾向があります。金利も初期融資より低く設定されることが多く、返済期間も長く設定される可能性があります。
創業3年目で必要とされる融資の性質
創業初期の融資は、事業立ち上げに必要な初期投資が中心でした。これに対し、創業3年目での融資は、事業拡大に必要な成長投資が中心になります。追加店舗の出店、生産設備の増強、営業人員の拡大、新市場への進出など、事業を次のステップへ発展させるための投資が必要になります。同時に、運転資金も必要です。事業規模が拡大する場合、それに応じた運転資金の増加が不可欠です。
創業3年目での融資申し込み前の準備
3年間の実績を最大限に活用するための準備が重要です。
3年間の経営実績の正確な把握と整理
創業から3年間の経営実績を、詳細に整理することが最初のステップです。年度別の売上、経費、利益、従業員数、顧客数などの数字を、正確に把握します。月別の推移も把握することで、事業の成長パターンが明確になります。経営実績が、事業計画書の予測とどの程度異なっていたのかを分析することも重要です。予測と実績の乖離が大きい場合、その理由を明確に説明できる準備が必要です。
財務書類の正確な準備と提出
過去3年間の決算書、税務申告書、給与台帳などの財務書類を、正確に準備します。青色申告を行っている場合は、青色申告決算書も必要です。これらの書類から、事業の経営状況が正確に把握されます。特に、黒字化の実現、経営の安定性、キャッシュフロー状況などが評価されます。
現在の事業課題と成長見込みの明確化
3年間の経営を通じて、事業の強みと弱みが明確になっています。これらを冷静に分析し、今後の事業発展のための課題を特定します。課題を解決するために、どのような投資が必要か、その投資でどのような成果が期待できるのか、を明確にします。融資申し込み時に、この分析に基づいた説得力のある説明ができることが重要です。
新たな事業計画の作成と実現可能性の検証
追加融資を活用して、事業をどのように拡大・発展させるのかについて、新たな事業計画を作成します。追加店舗の出店計画、新製品の開発計画、新市場への進出計画など、具体的な成長戦略が必要です。この計画が、過去3年間の実績に基づいて、現実的であることが求められます。
創業3年目での融資申し込みの特徴
初期融資と異なる申し込み方法とポイントがあります。
実績に基づいた融資申し込み
初期融資では、実績がないため、事業計画書と経営者の適性が審査の中心でした。これに対し、創業3年目での融資申し込みでは、過去3年間の実績が審査の中心になります。売上の成長傾向、経営効率の改善、利益率の推移など、実績に基づいた評価が行われます。実績が良好な場合、融資申し込みが極めて容易になります。
追加融資の位置づけ
初期融資後、良好な返済実績がある場合、次の融資は初期融資よりも有利な条件で承認される傾向があります。融資機関は、既に申し込み者の経営能力と返済能力を確認しているため、二次審査はより簡潔に行われることが多いです。
融資機関との既存関係の活用
初期融資を受けた融資機関があれば、その機関での追加融資申し込みが最も有利です。既に申し込み者と事業について理解があり、信頼関係が構築されているからです。初期融資の返済実績が良好であれば、追加融資の審査が極めて迅速に進みます。
創業3年目での追加融資を受けるための条件
融資機関が要求する条件を理解することが重要です。
黒字経営の実現
融資機関が最も重視するのが、事業が黒字経営を達成しているかどうかです。創業3年目で黒字化を実現している場合、融資申し込みが極めて通りやすくなります。赤字経営が継続している場合、融資承認が困難になる傾向があります。
良好な返済実績
初期融資を受けている場合、その融資の返済が滞りなく行われていることが、次の融資申し込みの前提条件です。返済遅延がある場合、新規融資は承認されない可能性が高いです。
拡大計画の現実性
追加融資で得た資金をどのように使用するのか、その投資で事業がどのように成長するのか、を具体的に説明する必要があります。単に「事業拡大のため」という漠然とした理由では、融資は承認されません。
十分な運転資金の維持
事業拡大に伴って、運転資金の必要性が増加します。追加融資によって、事業規模拡大に必要な運転資金が確保されることが重要です。運転資金不足により事業継続が困難になることを避ける必要があります。
創業3年目での融資申し込み方法
実績を活用した効果的な申し込み方法があります。
初期融資機関への相談
初期融資を受けた融資機関に、追加融資の相談をすることが最初のステップです。既に申し込み者と事業について理解がある融資機関への相談により、スムーズに進行する傾向があります。相談では、過去3年間の経営実績、現在の事業課題、今後の成長戦略について説明します。
必要書類の準備
追加融資申し込みには、過去3年間の決算書、税務申告書、現在の経営状況を示す月次決算、新たな事業計画書などが必要です。初期融資申し込み時と異なり、実績を示す書類が最も重要です。
申し込み書類の作成
初期融資申し込み時の事業計画書に、過去3年間の実績を反映させた修正版を作成します。当初の計画と実績の乖離について説明し、その乖離から学んだ教訓を、新たな成長計画に反映させたことを示します。
融資機関への提出と面接
書類の提出後、融資担当者との面接が設定されることがあります。初期融資時より簡潔な審査になる傾向があります。面接では、過去3年間の経営について説明し、今後の成長戦略について説得力のある説明ができることが重要です。
創業3年目での異なる融資機関への申し込み
初期融資機関以外の融資機関への申し込みも検討する価値があります。
民間銀行での融資申し込み
初期段階では、日本政策金融公庫のような低金利の公的融資機関を利用していた場合、創業3年目で民間銀行への融資申し込みを検討することも有効です。黒字経営の実績があれば、民間銀行から低金利での融資を受けられる可能性があります。複数の融資機関から見積もりを取得し、最も有利な条件を比較検討することが重要です。
信用金庫・地方銀行での融資
信用金庫や地方銀行は、地域密着型の経営方針を持ち、創業企業の成長を支援することに意欲的です。黒字経営の実績があれば、これらの金融機関から有利な条件での融資を受けられる可能性があります。
複数融資機関からの分割融資
追加融資の必要額が大きい場合、複数の融資機関から分割して融資を受けることも検討する価値があります。初期融資機関から一部、民間銀行から一部というように、各機関の特徴を活かした融資構成が可能です。
創業3年目での事業拡大融資の活用
追加融資の活用方法には複数のパターンがあります。
追加店舗出店のための融資
飲食店や小売店の場合、追加店舗出店に必要な融資が重要です。1号店で成功したビジネスモデルを、複数店舗で展開することで、事業規模を大きく拡大できます。追加融資は、複数店舗展開に必要な初期投資と運転資金に充てられます。
生産設備増強のための融資
製造業の場合、生産設備の増強に必要な融資が重要です。生産能力を増加させることで、売上拡大が可能になります。追加融資は、高価な生産設備の購入に充てられます。
営業人員拡大のための融資
営業人員を拡大することで、営業売上を増加させることができます。追加融資は、新規営業人員の人件費と営業活動に必要な費用に充てられます。
新市場進出のための融資
新しい市場や新しい顧客層への進出に必要な費用に、追加融資を充てることもあります。市場調査、マーケティング、初期営業活動など、新市場進出に必要な投資に融資が活用されます。
創業3年目での返済計画と資金管理
追加融資を受けた後の適切な管理が重要です。
返済スケジュールの現実的な計画
追加融資の返済期間は、初期融資より短く設定されることが多いです。月々の返済額が、事業拡大後の予想利益でカバーできることが、前提条件です。返済計画が現実的であることが求められます。
キャッシュフロー管理の強化
事業拡大に伴って、キャッシュフロー管理がより複雑になります。月別のキャッシュフロー計画を詳細に作成し、資金不足に陥らないようにすることが重要です。
融資金の適切な使用管理
追加融資で得た資金が、申し込み時に説明した目的に限定して使用されることが重要です。融資金の使用状況を記録し、融資機関から問い合わせがあった場合に説明できるようにしておくことが重要です。
創業3年目での経営改善と融資条件の改善
既存融資との関係を継続・強化することが重要です。
初期融資機関との関係継続と強化
初期融資機関との良好な関係を継続することで、今後の融資や経営支援が容易になります。定期的に経営状況を報告し、経営課題について相談することで、融資機関との信頼関係が深まります。
経営実績の透明な報告
決算後、融資機関に経営結果を定期的に報告することで、融資機関の信頼が高まります。良い実績だけでなく、困難な状況についても透明に報告することで、誠実さが示されます。
追加融資以外のサポート要望
融資機関の相談窓口を活用して、経営課題についてのアドバイスを受けることも重要です。多くの融資機関は、融資だけでなく、経営支援サービスも提供しています。
創業3年目での融資以外の資金調達手段
融資以外の選択肢も検討する価値があります。
増資による資金調達
株式会社の場合、株式発行による増資により、返済不要の資金を調達することが可能です。ただし、経営支配権に影響が生じることに注意が必要です。
利益剰余金の活用
黒字経営を実現している場合、毎年の利益の一部を事業拡大投資に充てることで、外部融資への依存を減らすことができます。
補助金の活用
事業拡大時に活用可能な補助金制度があります。経営革新、新製品開発、新市場進出など、特定のテーマの事業拡大に対して補助金が提供されることがあります。
創業3年目の融資成功のための総合戦略
複数の要素を統合した戦略が重要です。
経営実績の最大活用
3年間の経営実績を、最大限に活用することが重要です。実績が良好な場合、融資申し込みが極めて容易になります。実績を数字で明確に示し、事業の成功を証明することが、融資申し込み成功の鍵になります。
初期融資機関との関係継続
初期融資機関との関係を継続し、信頼関係を深めることで、追加融資の承認確度が大幅に向上します。返済を滞りなく行い、経営状況を透明に報告することが重要です。
複数融資機関の条件比較
初期融資機関への申し込みと並行して、複数の融資機関の条件を比較検討することで、最も有利な融資条件を確保できます。
まとめ
創業3年目での融資は、初期融資と異なり、実績に基づいた評価が行われるため、融資が通りやすくなります。3年間の経営実績を正確に把握し、黒字化を達成している場合、融資申し込みが極めて有利になります。初期融資機関との良好な関係を継続し、過去3年間の実績を透明に報告することで、追加融資の承認が容易に実現できます。
事業拡大計画が現実的であり、追加融資による成長が見込まれる場合、融資機関の信頼が高まり、有利な条件での融資が期待できます。複数融資機関の条件を比較し、最も有利な融資を選択することで、事業拡大に必要な資金を効率的に確保することができるでしょう。

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