創業融資と補助金を組み合わせた資金調達の完全戦略ガイド

創業時の資金調達で最も効果的なのは、融資と補助金を組み合わせることです。融資は返済が必要ですが、補助金は返済不要な資金です。両方を活用することで、返済負担を軽減しながら、必要な資金を確保できます。しかし、多くの起業家は融資のことしか考えず、補助金の存在や活用方法を知りません。

本記事では、創業に利用できる主要な補助金制度、融資と補助金の最適な組み合わせ方、補助金申請の方法と注意点、補助金と融資の相乗効果など、創業資金調達の完全なガイドを詳しく解説します。

この記事の監修

中小企業診断士 関野 靖也

大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。

中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士

創業融資と補助金の役割と違い

融資と補助金は、共に起業家の資金調達を支援する制度ですが、根本的に異なる特徴を持っています。

融資と補助金の基本的な違い

融資は、融資機関から借り入れる資金であり、返済期間中に金利とともに返済する必要があります。一方、補助金は政府や自治体が支給する資金であり、返済不要です。融資は毎月の返済負担が生じ、利息により実質的な借入コストが発生します。補助金は返済不要であるため、事業の採算性を大きく改善できます。また、融資は個人信用情報に基づいて審査されるのに対し、補助金は事業計画の質や社会的意義に基づいて審査されることが多いです。

融資と補助金の相補的な活用

創業資金の最適な調達方法は、融資と補助金を組み合わせることです。例えば、初期投資1500万円が必要な場合、補助金500万円と融資1000万円の組み合わせにより、返済負担を33%軽減できます。この組み合わせにより、月々の返済額が少なくなり、事業経営に余裕が生まれます。融資だけで1500万円を調達する場合の月々の返済額より、融資と補助金を組み合わせた場合の返済額の方が、著しく少なくなるのです。

資金調達戦略における補助金の重要性

多くの起業家が融資を中心に考えることで、補助金という有利な資金調達手段を見落としています。補助金は、申請要件を満たし、適切に申請すれば、受給できる可能性が高いです。補助金を活用することで、事業立ち上げの負担が大きく軽減され、事業成功の確度が高まるのです。

創業に利用できる主要な補助金制度

複数の補助金制度があり、事業の特性や起業家の属性に応じて選択できます。

小規模事業者持続化補助金

最も一般的な創業向け補助金が、小規模事業者持続化補助金です。この制度は、小規模事業者の経営改善を支援することを目的としており、創業企業も対象です。補助額は50万円から150万円程度が一般的であり、補助率は3分の2から4分の3です。補助対象経費は、設備投資、マーケティング費、人件費など、事業に関連した幅広い経費が対象です。この制度を利用するには、商工会議所の経営指導を受けることが条件になります。

ものづくり補助金

製造業やものづくり関連事業の創業者を対象とした補助金が、ものづくり補助金です。補助額は数百万円から数千万円と、他の補助金より大きいのが特徴です。補助対象は、生産性向上のための設備投資やシステム構築が中心です。この補助金は、中小企業庁が主導し、採択企業の選定は極めて厳格に行われます。

IT導入補助金

IT導入による経営効率化を支援する補助金が、IT導入補助金です。補助額は50万円から450万円程度であり、補助対象はIT導入に関連した経費です。クラウドサービスの利用、システム構築、ソフトウェア購入などが対象になります。デジタル化を重視する国の施策の一環として、この補助金は年々拡充されています。

女性、若年者、シニア創業補助金

女性起業家、35歳以下の若年起業家、55歳以上のシニア起業家を対象とした補助金が、特定層向けの補助金です。自治体や政府が、多様な創業を促進するために提供しています。補助額は自治体によって異なりますが、通常50万円から200万円程度です。申請時に対象層であることを証明する書類を提出することで、申請資格が確認されます。

地域創業補助金

特定の地域での創業を支援する補助金が、地域創業補助金です。過疎地域や地方創生が重要な地域での創業に対して、補助金が提供されます。地域によって補助額や対象が異なるため、事業所がある地域の制度を確認することが重要です。地域に雇用を創出する事業であれば、補助金獲得の可能性が高まります。

自治体独自の創業支援補助金

都道府県や市町村が、独自に提供する創業補助金も存在します。東京都の「新企業育成貸付」、大阪府の「創業支援資金」など、地域ごとに様々な制度があります。事業所がある地域の自治体に問い合わせることで、利用可能な補助金制度を把握することができます。

融資と補助金の最適な組み合わせ戦略

融資と補助金を効果的に組み合わせるための戦略があります。

資金需要に応じた融資と補助金の配分

初期投資の規模と性質に応じて、融資と補助金の配分を決定します。返済不要な補助金を最大限に活用し、返済が必要な融資は最小化することが基本戦略です。例えば、マーケティング費が補助金の対象になる場合、この部分を補助金で賄い、設備投資の一部を融資で賄うというように、補助金対象経費と融資対象経費を明確に分ける戦略が有効です。

補助金申請と融資申し込みのタイミング

補助金と融資の申し込みタイミングは、戦略的に計画する必要があります。補助金は申請から採択まで数ヶ月かかることがあり、採択が決定した後に融資申し込みをする戦略も考えられます。この場合、補助金で賄う部分が確定した上で、融資申し込みを行うため、融資機関の評価が改善される傾向があります。一方、融資と補助金を並行して申し込み、採択と融資実行のタイミングを合わせる戦略もあります。

補助金採択後の融資活用

補助金の採択が決定した場合、その旨を融資機関に伝えることで、融資条件が改善される可能性があります。補助金により、自己資金比率が向上するため、融資機関のリスク認識が低下し、金利が低減されたり、融資限度額が増加したりする可能性があります。

補助金申請の方法と手続き

補助金を獲得するための具体的な申請プロセスを理解することが重要です。

補助金情報の収集

活用可能な補助金を把握するため、複数の情報源から補助金情報を収集します。中小企業庁のウェブサイト、自治体の産業振興部門、商工会議所、などから、最新の補助金情報が提供されています。また、補助金ポータルサイトでは、複数の補助金が一元的に掲載されており、自分たちの事業に活用可能な補助金を検索できます。

申請要件の確認

各補助金には、申請要件があります。創業からの経過期間、事業規模、事業内容、起業家の属性などの要件を確認し、申請資格があるかを判定します。要件を満たさない場合、申請は不可能です。要件の解釈が曖昧な場合は、補助金を提供する機関に直接問い合わせることで、確認することができます。

申請書類の準備

補助金申請には、事業計画書、資金計画書、経営実績書(既に事業を開始している場合)など、多くの書類が必要です。これらの書類は、融資申し込み用の書類と基本的には同じですが、補助金の申請要項に合わせた作成が必要です。事業計画書は、事業の社会的意義、革新性、成長可能性などを重視して作成することが、補助金審査では有効です。

商工会議所の支援の活用

小規模事業者持続化補助金などの補助金では、商工会議所の支援が申請要件になったり、加点要因になったりします。商工会議所に相談することで、事業計画書の作成支援、申請手続きのアドバイス、補助金申請後のサポートなど、総合的な支援が受けられます。商工会議所の支援を受けることで、補助金の採択率が大きく向上する傾向があります。

申請と採択

申請書類が完成したら、補助金を提供する機関に申請します。申請方法は補助金によって異なり、郵送、オンライン、持参など、様々な方法が採用されています。申請後、審査期間を経て、採択結果が通知されます。採択率は補助金によって異なりますが、10%から50%程度が一般的です。

採択後の手続きと補助金受給

採助が決定した後、補助金提供機関との契約を締結します。その後、事業を実施し、経費を支払い、支払い根拠となる領収書や請求書などの書類を保管します。事業完了後、補助金請求を行い、審査を経て、補助金が振込まれます。補助金の受給から事業完了まで、数ヶ月から1年以上の期間がかかることがあります。

補助金と融資の相乗効果

補助金と融資を組み合わせることで、単独での活用より大きな効果が生じます。

自己資金比率の向上

補助金は返済不要であるため、実質的な自己資金と同等に扱われます。補助金を活用することで、自己資金比率が向上し、融資機関の評価が改善されます。融資申し込み時に「補助金として500万円を獲得予定」と説明することで、自己資金比率が高いと認識され、融資条件が改善される傾向があります。

月々の返済負担の軽減

補助金により融資額を削減できるため、月々の返済額が大きく軽減されます。例えば、必要資金1000万円に対して、補助金300万円を活用すれば、融資額を700万円に削減できます。月々の返済額が30%削減されることで、事業経営に大きな余裕が生まれます。

事業採算性の大幅改善

補助金による資金確保により、事業採算性が大幅に改善されます。返済不要な補助金で初期投資を実施できれば、事業から生じる利益がすべて事業成長や給与に充てられます。融資で初期投資をまかなった場合とは異なり、補助金の活用により、事業の自由度と成長速度が向上するのです。

事業成功確度の向上

補助金と融資の組み合わせにより、必要な資金を確保でき、事業立ち上げに必要な投資を充実させることができます。充実した初期投資により、顧客サービスの質が向上し、事業競争力が高まり、事業成功の確度が向上します。

補助金申請時の注意点

補助金申請で失敗を避けるための注意点があります。

補助金対象外経費への誤解

補助金ごとに、対象経費と対象外経費が明確に定められています。補助対象外の経費を申請書に含めると、申請が不適切と判断され、採択が難しくなります。補助金の要項を詳しく読み、対象経費を正確に把握した上で、申請書を作成することが重要です。

申請期限の厳守

補助金の申請には、申請期限が設定されています。期限を過ぎた申請は受け付けられません。補助金によっては、申請期限が極めて短い(1ヶ月から2ヶ月程度)ものもあります。補助金情報を早期に収集し、十分な準備期間を確保した上で、期限内に申請することが重要です。

虚偽記載の回避

補助金申請書に虚偽情報を記載することは、絶対に避けるべきです。発覚した場合、採択取消、補助金返還、信用失失など、極めて深刻な結果が生じます。正確で誠実な申請が、補助金獲得の基本です。

創業融資と補助金の資金計画への統合

融資と補助金を統合した資金計画を作成することが重要です。

全体資金計画の策定

初期投資に必要な資金総額を把握した上で、その資金をどのような組み合わせで調達するかを計画します。自己資金、融資、補助金の3つの資金源の配分を決定することで、実現可能で効率的な資金調達が可能になります。補助金のように獲得確度が不確実な資金については、「補助金採択の場合」と「補助金未採択の場合」の2つのシナリオを作成しておくことが重要です。

融資申し込み時の補助金の説明

融資申し込み時に、補助金の申請状況を説明することで、融資機関の評価が改善されます。補助金採択の可能性が高い場合は、その旨を説明することで、実質的な自己資金比率が向上したと認識され、融資条件が改善される傾向があります。

補助金と融資の実行タイミングの調整

補助金と融資の実行タイミングを調整することで、資金が効果的に活用されます。初期投資の時期に、融資と補助金の両方を活用して資金を確保することで、事業開始が遅延することなく進行します。

補助金活用による事業計画の強化

補助金の活用が、事業計画の実現可能性を高めます。

充実した初期投資による競争力強化

補助金により、初期投資に充てられる資金が増加することで、店舗や設備をより充実させることができます。顧客サービスの質が向上し、事業競争力が高まり、事業成功の確度が向上します。

マーケティング投資の拡大

補助金がマーケティング費に対象になる場合、営業宣伝費を大幅に増加させることができます。ブランド認知度の向上、顧客獲得の加速、営業効果の増加などが期待でき、事業成長が促進されます。

人材投資の充実

補助金により人件費に充てられる資金が増加することで、優秀な人材の確保が可能になります。経営の質が向上し、組織力が強化され、事業成長が加速します。

補助金不採択時の対応

補助金申請が不採択になった場合の対応戦略があります。

不採択理由の把握と改善

補助金提供機関から不採択理由の説明を受けることで、改善すべき点が明確になります。次年度の補助金申請や、別の補助金への申請時に、指摘された改善点を反映させることで、採択率が向上します。

別の補助金への申し込み

1つの補助金が不採択になっても、別の補助金申請の機会があります。複数の補助金を視野に入れ、段階的に申し込みを進めることで、最終的には補助金獲得にたどり着く可能性があります。

融資のみでの資金調達への切り替え

補助金が全く獲得できない場合、融資のみでの資金調達に切り替えることになります。この場合、当初より多くの融資を受ける必要があり、返済負担が増加しますが、事業立ち上げは可能です。

まとめ

創業時の資金調達で最も効果的なのは、融資と補助金を組み合わせることです。補助金は返済不要であり、融資額を削減できるため、月々の返済負担が大きく軽減されます。小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金など、複数の補助金制度が利用可能です。自分たちの事業に活用可能な補助金を把握し、補助金申請と融資申し込みを計画的に進めることで、返済負担を最小化しながら、必要な資金を確保できます。商工会議所の支援を受けることで、補助金申請の成功率が向上します。補助金と融資の相乗効果により、事業立ち上げの負担が軽減され、事業成功の確度が大幅に向上するでしょう。

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