創業融資の面談の進め方は?全体像から当日の対策まで分析

創業融資の面接は、融資審査において極めて重要な段階です。書類選考を通過した後、融資担当者と直接対面し、事業計画や経営姿勢について説明する機会となります。面接での印象や回答内容が、融資の可否を大きく左右することになります。
本記事では、創業融資面接の準備方法から当日の対策、よくある質問への答え方まで、合格するための実践的なノウハウを詳しく解説します。面接を成功させることで、融資承認の可能性を大きく高めることができます。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資面接の全体像
創業融資の面接は、単なる形式的な手続きではなく、融資機関が最終的な判断を下すための重要なプロセスです。融資担当者は、書類では見えない申し込み者の人物像、事業への覚悟、経営能力などを総合的に評価します。面接を通じて、事業計画書の信ぴょう性が本当に高いのか、経営者としての適性があるのか、返済能力があるのかといったポイントが検証されるのです。
面接時間は通常30分から1時間程度で、この限られた時間で自分たちのビジネスの魅力と実現可能性を伝える必要があります。面接の結果は、融資審査の最終的な可否を決定する上で、書類審査と同等かそれ以上の重要性を持つことになります。
面接官が評価する主なポイント
融資機関の面接官は、複数の観点から申し込み者を評価します。第一に、事業計画の現実性と市場理解の深さが重視されます。市場調査に基づいた根拠のある事業計画であるか、競合分析は十分か、ビジネスモデルに説得力があるかなどが判断基準になります。第二に、経営者としての適性と人格が評価されます。
誠実さ、決断力、課題解決能力など、ビジネスを成功させるために必要な資質があるかが見極められます。第三に、業界知識と実行能力が重要です。営もうとする業界についての理解が深いか、実装できる知識やスキルを持っているかが確認されます。第四に、返済意思と返済能力の確認も行われます。融資を受けた後、確実に返済するという意思と、実際に返済できるだけの収益構造があるかが判断されるのです。
面接前に確認すべき基本情報
面接に臨む前に、自分たちの事業計画書に記載した内容を完全に理解し、暗記するくらいの準備が必要です。事業計画書に記載した売上予測、原価率、営業経費、利益などの数字は、詳細に説明できるようにしておくべきです。
また、競合他社の分析内容、市場規模、自分たちのビジネスの差別化要因など、事業計画書の背景となる情報も完全に把握しておく必要があります。融資機関の基本情報、融資制度の詳細、返済期間と金利についても確認しておくと、質問への対応がスムーズになります。さらに、個人の経歴や職務経歴についても、いつでも説明できるようにしておくことが重要です。
創業融資面接の準備方法
面接を成功させるためには、事前の準備が極めて重要です。十分な準備を行うことで、面接での自信が生まれ、焦らずに質問に答えることができます。不十分な準備では、想定外の質問に対応できず、融資機関に悪い印象を与えてしまう可能性があります。
事業計画書の内容理解と説明練習
事業計画書は、面接で最も頻繁に質問される資料です。事業計画書に記載したすべての内容について、詳細に説明できるようにしておくことが必須です。売上予測の根拠、原価計算の方法、営業経費の内訳、利益がいつ出るのかなど、数字に関する質問に対して、その場で計算や説明ができるレベルまで理解を深める必要があります。
事業計画書の説明練習は、何度も繰り返すことが重要です。家族や知人に聞き手になってもらい、実際に説明してみることで、わかりやすさが向上し、説明に必要な時間も短縮できます。説明は、結論から述べ、その後根拠を説明するという構造が効果的です。長々とした説明ではなく、簡潔にポイントを伝える訓練も大切です。
業界知識と市場分析の深掘り
融資面接では、業界知識が深いか、市場を正しく理解しているかが問われることが多いです。営もうとする業界の現状、トレンド、今後の成長見通しなどについて、新聞記事や業界レポートから情報を収集し、自分たちの言葉で説明できるようにしておくべきです。競合他社の分析も重要で、主要な競合企業がどのような戦略で事業展開しているか、どのような強みと弱みを持っているかを理解しておくことが必要です。
自分たちのビジネスが、競合他社と比較してどのような差別化要因を持つのかを明確に説明できることが、面接官の信頼を獲得するポイントになります。業界の課題や市場の隙間について、深い洞察に基づいた事業展開であることをアピールすることで、経営者としての適性が評価されやすくなります。
質問予想と回答の準備
創業融資面接では、ある程度予想できる質問が毎回繰り返されます。事業内容についての質問、起業動機についての質問、自分たちの強みについての質問、資金の使途についての質問など、典型的な質問に対しては事前に回答を用意しておくべきです。ただし、用意した回答を丸暗記して棒読みするのではなく、自然に説明できるレベルまで何度も練習することが重要です。
また、想定外の質問が来る可能性も考慮し、その場で考えて答えられる力を養うことも大切です。質問に対しては、正直に答えることが基本です。わからないことをわかったふりをすると、融資官に見抜かれ、信用を失う可能性があります。わからない場合は、「その点については、さらに調査してからお返事します」と誠実に答えるほうが好印象につながります。
個人の経歴と職務経歴の整理
融資面接では、申し込み者の経歴や職務経歴についても質問されることが多いです。これまでどのような仕事をしてきたか、営もうとする事業とどのような関連性があるか、その経歴で培った知識やスキルがどのように事業に生かされるかを、論理的に説明できる準備が必要です。
職務経歴が業種と無関係の場合でも、管理スキル、営業経験、人材育成経験など、事業運営に役立つ経験があることをアピールするとよいでしょう。個人の強みと弱みについても整理しておき、弱みについてはそれをどのようにカバーするのかという対策案を持っておくことが効果的です。
創業融資面接の当日対策
面接当日は、準備を最大限に活かすための実行が求められます。第一印象から最後の挨拶まで、すべての行動が評価対象になることを念頭に置いておくべきです。
持参すべき書類と確認事項
面接当日には、提出済みの書類に加えて、いくつかの持参物が必要になります。事業計画書の原本、収支予測表、資金計画書、ビジネスプランを視覚的に説明するための資料があれば、説得力が増します。また、実際の商品サンプルや事業展開予定地の写真など、ビジネスの具体性を示す補足資料があると、面接官の理解が深まりやすくなります。
身分証明書、印鑑、筆記用具も持参すべきです。面接前には、面接会場への到着時間、持参物のチェック、トイレの確認などを行い、落ち着いた状態で面接に臨むことが重要です。また、携帯電話はサイレントモードに設定し、面接中に鳴らないようにすることを忘れずに。
身だしなみと第一印象の重要性
融資面接では、身だしなみが第一印象を大きく左右します。経営者として誠実で信頼できる印象を与えるため、清潔感のあるビジネスカジュアルな服装が適切です。男性であれば、きちんとした背広にネクタイ、女性であればジャケットとブラウス、スカートやパンツという組み合わせが標準的です。
髪型、爪、靴などの細部にも気を配り、全体的に清潔感がある状態を心がけるべきです。第一印象は、服装だけでなく、姿勢や表情、握手の力加減なども含まれます。背筋を伸ばし、面接官の目を見て、適度な笑顔で挨拶することで、信頼できる人物という印象が形成されやすくなります。
面接中の話し方と態度
面接では、話す速度、声の大きさ、言葉選びなどが重要になります。焦って早口になると、相手が話を理解しにくくなるため、ゆっくりと明確に話すことを心がけるべきです。声は、相手に聞き取りやすい大きさで、自信を持って話すことが大切です。専門用語を使う場合は、必要に応じて説明を加え、相手が理解しやすいようにする配慮も重要です。
質問に対して、長々とした説明をするのではなく、ポイントを簡潔に述べることが効果的です。また、面接官の質問をしっかり聞き、質問に対して的確に答えることが基本です。話し終わったら、相手が次の質問をするまで静かに待つ、という礼儀も守るべきです。
質問への対応と逆質問
面接では、予想していなかった質問が出されることもあります。そのような場合でも、焦らずに、自分の考えを整理してから答えることが大切です。わからないことは、素直に「わかりません」と答え、その後で調査して回答すると約束するほうが、無理な回答をするよりも好印象につながります。逆質問の機会が与えられた場合は、積極的に質問をすることをお勧めします。
融資に関する具体的な手続き、返済スケジュール、追加融資の可能性など、事業運営に関連した質問をすることで、事業に真摯に取り組む姿勢が伝わります。ただし、金利の引き下げを要求するような交渉的な質問は、この段階では避けるべきです。
創業融資面接でよくある質問と答え方
面接では、毎回繰り返される典型的な質問が出されます。これらの質問に対して、事前に考えた回答を持つことで、落ち着いて答えることができます。
起業動機と事業選択の理由
「なぜこの事業を始めようと思ったのか」という質問は、ほぼすべての面接で出されます。この質問への答え方は、融資官の評価を大きく左右するため、十分に準備しておくべきです。単に「儲かりそうだから」という回答では、融資官に悪い印象を与えます。代わりに、自分たちがこの事業を通じて何を実現したいのか、社会にどのような価値を提供したいのか、個人的な経験や課題認識に基づいた起業動機を述べることが効果的です。
例えば、「前職の経験から、この分野に市場需要があることに気づき、より高品質なサービスを提供したいという想いで起業を決断しました」というように、論理的で前向きな動機を説明することが重要です。起業動機が明確で、その実現に向けた計画が緻密であれば、融資官の信頼が高まります。
競合他社との差別化要因
「競合他社と比較して、あなたたちのビジネスにはどのような強みがあるのか」という質問も頻出です。この質問に対しては、自分たちの事業の特徴を、競合他社の弱みと対比させながら説明することが効果的です。例えば、競合他社が提供していないサービスを提供する、より低い価格で同等の品質を実現する、顧客サービスを強化するなど、明確な差別化要因を示すことが重要です。ただし、架空の差別化要因を述べてはいけません。
実現可能で、自分たちが実際に提供できる差別化であることを、融資官が理解できるように説明する必要があります。差別化要因が、単なる願望ではなく、実装可能な戦略に基づいていることをアピールすることで、事業計画の現実性が確認されやすくなります。
売上予測と利益計画の根拠
「売上予測はどのような根拠に基づいているのか」という質問は、特に数字に関する面接官の関心が高いテーマです。売上予測が単なる勘や願望ではなく、市場調査や顧客ニーズの分析に基づいていることを示す必要があります。例えば、「同業他社の売上規模を調査し、市場シェアを仮定した上で売上を予測した」「既存の顧客へのヒアリングを実施し、購買意欲を確認した上での予測である」というように、根拠を明確に述べることが効果的です。
また、売上に至るまでのプロセス、例えば顧客獲得のコスト、顧客一人当たりの平均購買額、リピート率などの要素が、どのように計算されているかを説明できることが重要です。利益計画についても、売上に対する原価率がどの程度か、営業経費がいくらか、いつから利益が出始めるかについて、詳細に説明できる準備が必要です。
資金の使途と使用計画
「融資を受けた資金を、具体的にいつ、どのように使用するのか」という質問も重要です。この質問に対しては、融資資金の全額が明確な使途に充てられることを示す必要があります。例えば、設備資金として購入する機械や什器の見積書を提示しながら、「この機械は〇月に購入予定で、△月から本格的な生産を開始する予定です」というように、タイムラインを含めて説明することが効果的です。
運転資金については、仕入れ代金、給与、家賃など、具体的な経費項目と金額を示すことで、融資資金が適切に管理されることを融資官に理解させることができます。融資を受けた直後は、融資金の大部分が投資に充てられ、その後の営業収入によって運転資金が賄われるという、段階的な資金計画が理想的です。
返済能力と返済計画
「本当に融資を返済できるのか」という質問は、融資官にとって最大の関心事です。この質問に対しては、事業計画に基づいた利益と返済額の関係を示す必要があります。例えば、「初年度の利益見込みが△円であり、これはローン返済額の〇倍である」というように、返済能力の余裕度を数字で示すことが効果的です。
また、事業が当初の計画通りに進まなかった場合の対策についても準備しておくべきです。例えば、「売上が予測を下回った場合は、営業経費を削減する」「必要に応じて経営体制を見直す」というように、リスク対応策を提示することで、融資官に返済への真摯な取り組みが伝わります。
既往債務と信用情報
融資官が過去の金融取引や債務状況について質問することもあります。クレジットカードやその他のローンの返済履歴、過去に債務整理を経験したかどうかなどが確認されることがあります。
これらの質問に対しては、正直に答えることが基本です。問題がある場合でも、それをどのように改善したか、現在はどのような状況にあるか、事業を通じてどのように返済していくのかという前向きな説明が有効です。隠蔽や虚偽の回答は、融資官に見抜かれる可能性が高く、信用を失うリスクが大きいため、絶対に避けるべきです。
創業融資面接後のアフターフォロー
面接が終わった後も、融資が実行されるまでの間、いくつかのフォローアップが必要になる場合があります。
追加資料の提出
面接後に、融資官から追加の資料提出を求められることがあります。例えば、事業計画書の一部を修正するよう指摘されたり、新たな資料を提出するよう求められたりすることです。このような要求に対しては、迅速かつ丁寧に対応することが重要です。
遅延なく、正確な資料を提出することで、融資官に対して真摯な事業態度を示すことができ、融資承認の可能性が高まります。提出期限が指定されている場合は、その期限を守ることは必須です。
融資承認から実行までのプロセス
面接審査に合格すると、融資承認の通知が来ます。その後、融資契約を締結し、契約から数日後に融資金が実行されるのが一般的です。融資実行前に、最終確認事項がないか融資官に確認し、万全の体制で事業をスタートさせることが重要です。
融資が実行された後も、定期的に融資机関と連携を取り、返済状況の報告や事業進捗の相談などを行うことで、良好な関係を維持することができます。
面接不合格時の対応
万が一、融資審査に落ちた場合、その理由を融資官に確認することが重要です。理由を理解することで、改善点が見え、再申し込みに向けた準備が可能になります。
例えば、事業計画の現実性が不十分であったと指摘された場合は、市場調査をさらに深掘りし、より根拠のある計画を作成する。資金計画に問題があったと指摘された場合は、資金使途をより詳細に説明する資料を作成するなど、改善策を講じた上で、別の融資機関に申し込むことも選択肢になります。
まとめ
創業融資の面接は、融資審査の最終段階であり、経営者としての適性や事業計画の現実性を直接評価される重要な機会です。事業計画書の内容の完全な理解、業界知識の深掘り、質問予想と回答準備など、事前準備が合格を左右します。面接当日は、清潔感のある身だしなみ、自信を持った話し方、的確な質問への対応を意識することで、融資官に信頼できる経営者という印象を与えることができます。
典型的な質問に対する回答を準備し、何度も練習することで、本番での焦りが軽減されます。面接後は、追加資料の提出要求に迅速に対応し、融資実行まで誠実な関係を保つことが大切です。これらのポイントを押さえることで、創業融資面接を成功させ、事業を軌道に乗せるための資金調達を実現することができるでしょう。

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