創業融資の申し込み方は?具体的なステップや注意点を解説

創業融資の申し込みは、新しく事業を始める際に必要な重要なステップです。ビジネスを立ち上げるには多くの資金が必要ですが、すべてを自己資金でまかなえる人は稀です。そこで活用されるのが創業融資です。
本記事では、申し込みから実行までの全体的なプロセスや、融資を受けるための条件、注意点などを詳しく解説します。創業融資について理解を深め、成功確率を高めるための知識を身につけましょう。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資とは何か
創業融資は、新しく事業を開始する際に、銀行や公的機関から借り入れる資金のことを指します。通常の事業ローンとは異なり、創業段階の企業でも利用しやすいように設計されています。
特に日本政策金融公庫による創業融資は、低金利で返済期間が長く、多くの創業者に利用されています。創業融資を受けることで、必要な運転資金や設備資金を確保でき、事業の安定した立ち上げが可能になります。創業融資にはいくつかの種類があり、融資機関によって条件や金利が異なるため、自分のビジネスに最適なものを選ぶことが重要です。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫が提供する創業融資は、創業者にとって最も利用しやすい融資制度です。この融資は、返済期間が最大20年と長く、金利も比較的低く設定されています。担保や保証人が必要ない場合もあり、個人事業主から法人まで幅広い創業者が対象となります。日本政策金融公庫の創業融資には「新規開業ローン」と「女性・若年者・シニア向けローン」など複数の商品があり、申請者の属性や事業内容に応じて適切なものを選択できます。
特に創業してから1年以内の企業や、新しい事業分野への挑戦をサポートする仕組みになっており、多くの起業家に信頼されています。申し込み条件としては、日本国内で新しく事業を始める人、もしくは事業開始から2年以内の人が対象です。
民間銀行の創業融資
民間銀行も創業融資を提供していますが、日本政策金融公庫と比べて審査基準が厳しい傾向にあります。民間銀行の融資は、借り手の信用情報や事業計画の精度をより重視する傾向があり、実績のない創業者にとっては審査が難しいことが多いです。しかし、政府系金融機関と異なり、より大きな金額の融資を受けられる可能性があり、また金利交渉の余地がある場合もあります。
民間銀行の創業融資は、信用金庫や地方銀行でも取り扱っており、地域密着型のサービスが受けられるメリットがあります。事前に複数の金融機関に相談し、自分たちの事業に最も適した条件の融資を比較検討することが大切です。
自治体や商工会議所の創業支援融資
自治体や商工会議所も創業者向けの融資制度を用意しており、地域によって異なる特色のある融資が提供されています。これらの融資は、地域経済の活性化を目的としているため、その地域での創業を希望する人に対して有利な条件が設定されることが多いです。
自治体の融資は利息補給制度を備えていることもあり、実質的な負担が軽くなる場合があります。商工会議所では融資だけでなく、経営相談や事業計画書の作成支援なども行っており、トータルでのサポートが受けられます。自分が事業を始める地域の制度を事前に調べることで、より有利な条件での融資を受けられる可能性があります。
創業融資の申し込み条件
創業融資の申し込みには、融資機関ごとに異なる条件がありますが、基本的な要件をクリアしておく必要があります。一般的には、申し込み時点での年齢や国籍、信用情報などが審査対象になります。
また、事業計画書の質やビジネスの実現性も重要な判断基準となり、単に資金が必要というだけでは融資を受けられません。本章では、創業融資の主要な申し込み条件について詳しく説明します。
年齢と経験要件
創業融資の申し込みには、年齢に関する条件が設定されていることがあります。日本政策金融公庫の創業融資では、基本的に20歳以上であれば申し込みが可能ですが、一部の制度では満18歳以上という条件もあります。ただし、高齢である場合の上限年齢は特に設定されていないため、シニア層の創業者も申し込める制度が充実しています。
経験要件としては、営もうとする事業と同じ業種での職務経歴が3年以上あることが有利に働く傾向があります。ただし、経験がない場合でも、充実した事業計画書があれば申し込み可能です。金融機関は、申し込み者の事業への適性や知識の深さを総合的に判断するため、業界経験だけに頼るのではなく、ビジネスモデルの説得力が重要です。
自己資金の要件
創業融資を申し込む際、自己資金がどの程度必要かは融資機関によって異なります。日本政策金融公庫の新規開業ローンでは、原則として事業に必要な資金の3分の1以上を自己資金で用意することが条件とされています。これは、融資を受ける側が真摯に事業に取り組む姿勢を示すためのものです。
自己資金の定義は、融資機関によって厳密に定められており、単に銀行口座に入っている預金だけでなく、親からの援助金や保有している有価証券も対象に含まれることがあります。一方、消費者金融からの借金や最近になって短期間で貯蓄した資金は、自己資金として認められない傾向があります。融資申し込み時には、自己資金の出所を明確に説明できる書類を用意しておくことが重要です。
信用情報と納税状況
融資機関は、申し込み者の信用情報を調査します。過去に債務整理を経験していたり、クレジットカードの返済を延滞していたりすると、審査に悪影響を与える可能性があります。ただし、創業融資は個人の信用情報をすべてが否定的に評価されるわけではなく、事業計画の質や返済能力の見込みなども総合的に判断されます。
納税状況も重要で、個人事業主として活動していた場合や、給与所得者として働いていた場合でも、税務申告が適切に行われていることが審査のプラス要因になります。逆に、脱税や納税遅延の履歴がある場合は、審査において大きなマイナス要因となり、融資を受けられない可能性があります。申し込み前に、自分の信用情報と納税状況を確認し、問題がないか把握しておくことをお勧めします。
創業融資の申し込みに必要な書類
創業融資の申し込みには、多くの書類が必要になります。融資機関によって要求される書類は異なりますが、事業計画書や収支計画表など基本的な書類はどの機関でも共通して求められます。書類が不備のあると、審査がスムーズに進まないため、申し込み前に必要な書類を完全に揃えておくことが重要です。
事業計画書の作成方法
事業計画書は、創業融資の申し込みにおいて最も重要な書類です。融資機関は、この書類を通じて申し込み者の事業の実現性や採算性を判断します。事業計画書には、事業の概要、市場分析、競合他社の分析、営業戦略、財務予測など、事業を成功させるために必要な要素をすべて含める必要があります。
市場調査に基づいた現実的な売上見込みを記載することが重要であり、根拠のない楽観的な数字を記載するのは避けるべきです。また、事業を始める理由や創業者の想いを明確に述べることで、融資担当者の共感を得ることができます。事業計画書は通常、A4用紙で5ページ程度の分量となり、図表を使用してわかりやすく作成することが効果的です。
個人情報と履歴書
融資機関に提出する個人情報としては、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報が必要です。また、履歴書も提出が求められることが多く、学歴や職歴、業界経験などが記載されます。履歴書では、申し込み者がこれまでどのような経験を積んできたか、そしてそれが今回の創業とどのように関連しているかを明確に示すことが重要です。
特に、営もうとする事業と関連性の高い職務経歴がある場合は、その経験が事業成功にどのように生かされるかを説明することが有利になります。履歴書の作成では、正確さと誠実さが評価されるため、記入ミスや改ざんは絶対に避けるべきです。
資金計画書と使途内訳
融資申し込み時には、資金計画書を作成し、融資希望額と自己資金の合計がいくら必要かを明記します。さらに、その資金がどのように使用されるのかを示す使途内訳も重要です。
設備資金として購入する機械や什器の見積書、運転資金として必要な仕入れ代金の計算など、詳細な内訳を提示することで、融資機関の信頼が増します。融資希望額が多すぎたり、少なすぎたりしないか、事業運営に必要な金額かどうかを客観的に評価することが大切です。資金計画書では、融資金で何を購入するのか、いつ必要になるのかなど、タイムラインも明示すると、より説得力が増します。
その他必要書類
融資申し込みの際には、身分証明書、印鑑登録証明書、個人の所得税申告書の写しなどが求められます。すでに個人事業主として営業している場合は、過去数年分の所得税申告書や青色申告決算書の提出が必須です。また、不動産を担保に提供する場合は、登記簿謄本や不動産鑑定書が必要になることもあります。
法人設立予定の場合は、定款や登記予定者の住民票なども提出対象になります。融資機関によって要求される書類は異なるため、事前に確認し、不足しないように準備しておくことが重要です。申し込み手続きの際に、担当者に必要書類の全リストをもらい、チェックリストを作成して管理するとよいでしょう。
創業融資の審査プロセス
創業融資の申し込み後は、融資機関による審査が行われます。審査では、申し込み者の信用度、事業計画の実現性、返済能力などが総合的に判断されます。審査期間は通常、申し込みから1ヶ月程度ですが、追加書類の提出が求められる場合は、さらに時間がかかることもあります。
書類審査と面接
融資機関はまず、提出された書類の内容をチェックする書類審査を行います。この段階では、必要な書類がすべて揃っているか、記入に誤りや不備がないか、事業計画書に矛盾がないかなどが確認されます。書類審査に通過すると、融資担当者との面接が設定されます。面接では、事業計画書の内容についての質問や、創業者の適性、業界知識の深さなどが評価されます。
面接は通常、30分から1時間程度の時間が割かれ、落ち着いて丁寧に質問に答えることが重要です。事業計画書に記載した内容については、詳細に説明できるように準備しておくべきです。
融資担当者との面接対策
面接に臨む際には、事業計画書の内容を完全に理解し、いかなる質問にも対応できるようにしておくことが必須です。面接担当者は、申し込み者が本当に事業を成功させる覚悟があるか、現実的な認識を持っているか、返済能力があるかなどを見極めようとします。質問に対しては、はっきりと簡潔に答え、わかりやすい説明を心がけてください。
また、事業に関する知識や業界理解が不足していると感じられないよう、事前準備を充分に行うことが大切です。面接の前には、競合他社の分析、市場動向、自分たちのビジネスの強みなど、事業計画の背景となる情報を整理しておくと、説得力のある説明ができます。
審査結果と融資実行
審査が完了すると、融資機関から結果通知があります。融資が認可された場合、融資契約を締結し、その後融資金が実行されます。融資実行のタイミングは、契約日から数日後が一般的です。
融資金は、通常申し込み者の銀行口座に振込まれ、その後事業資金として使用されます。融資が不認可になった場合、再申し込みも可能ですが、理由を融資機関に確認し、改善点を反映させてから再度申し込むことが重要です。
創業融資申し込み時の注意点
創業融資の申し込みを成功させるためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。これらを守ることで、審査に通りやすくなり、融資を受けられる可能性が高まります。
事業計画書の信ぴょう性
事業計画書の信ぴょう性は、融資審査において最も重要な要素です。売上予測が過度に楽観的であったり、根拠のない数字が記載されていたりすると、融資機関の信頼を失います。市場調査に基づいた現実的な数字を提示することが重要で、最初は控えめな売上見込みから始めるのが賢明です。
競合他社の分析も詳細に行い、自分たちのビジネスが市場でどのような位置づけにあるかを明確にしてください。また、事業計画書は完成度の高い見た目も重要で、誤字脱字がないか、図表が見やすいかなど、細かい点にも注意を払うべきです。
融資希望額の適切な設定
融資希望額は、事業に必要な金額に基づいて、慎重に設定する必要があります。融資希望額が多すぎると、融資機関は返済能力に疑問を持ち、審査に落ちやすくなります。一方、融資希望額が少なすぎると、事業運営に支障が出る可能性があります。
事業開始に必要な資金と運転資金を詳細に計算し、根拠のある融資希望額を提示することが重要です。また、複数回の融資を受けることで、初期段階のリスクを軽減するという戦略も検討する価値があります。
自己資金の準備と証明
融資を受ける上で、自己資金の準備は不可欠です。融資機関は自己資金がどの程度用意されているかを重視するため、事業に必要な資金の3分の1以上を自己資金で用意することが望ましいです。自己資金の出所を明確に説明できるよう、銀行口座の通帳や贈与契約書など、証拠資料を準備しておくことが大切です。
また、申し込み直前に大金が入金されたように見える場合は、融資機関から問題視される可能性があるため、計画的に自己資金を貯蓄しておくことをお勧めします。
税務申告と信用情報
個人事業主として既に活動している場合は、税務申告が適切に行われていることが重要です。未申告や脱税の履歴がある場合、融資審査に大きなマイナス影響を与えます。
また、クレジットカードやローンの返済遅延がないか、過去の金融取引に問題がないかを事前に確認しておくことが大切です。信用情報機関に自分の情報開示を請求し、誤った情報が登録されていないかを確認することをお勧めします。
まとめ
創業融資の申し込みは、事業を成功させるための第一歩です。日本政策金融公庫、民間銀行、自治体など、複数の融資先があり、それぞれに異なる特徴と条件があります。申し込み時には、充実した事業計画書の作成、現実的な資金計画の立案、十分な自己資金の準備が不可欠です。また、面接対策を含む審査プロセスの理解も重要です。
本記事で紹介した条件や注意点を踏まえ、計画的に準備を進めることで、融資承認の可能性を高めることができます。創業融資は、新しい事業の立ち上げに必要な資金調達方法として、多くの起業家に活用されています。自分たちのビジネスに最適な融資制度を選択し、成功する創業を実現させましょう。

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