創業融資 返済不要|誤解を解消!本当に返済しなくて良い資金調達方法とは

「創業融資は返済不要」という情報を目にして、本当なのか疑問に思っていませんか。結論から言うと、返済不要な創業融資は存在しません。
しかし返済負担を軽減する方法や、本当に返済不要な資金調達方法はあります。
本記事では、創業融資の正しい理解と、返済不要で資金調達する方法を徹底解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
創業融資は返済不要ではない|融資の本質を理解する
創業融資について正しく理解するために、まず融資の定義と返済義務について明確にしておく必要があります。誤った情報に惑わされないよう、基本から確認しましょう。
融資とは何か|返済が前提の金銭消費貸借契約
融資とは、金銭を借りた側が一定の利息を付けて元本を返済する金銭消費貸借契約のことです。
法律上、融資を受けた場合は必ず返済する義務が発生します。これは創業融資であっても例外ではなく、日本政策金融公庫からの融資でも、自治体の制度融資でも、返済は必須です。
「返済不要な融資」という言葉自体が矛盾しており、そもそも存在しないということを理解しておく必要があります。融資契約では、借入金額、金利、返済期間、返済方法などが契約書に明記され、その条件に従って返済していくことになります。
契約違反をすると、遅延損害金が発生したり、一括返済を求められたりするリスクがあります。
日本政策金融公庫も返済は必須
日本政策金融公庫は政府が100%出資する政策金融機関ですが、融資である以上、返済義務があります。
新規開業資金の場合、設備資金は20年以内、運転資金は10年以内に返済する必要があります。ただし日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人で利用でき、低金利で長期返済が可能という特徴があります。
返済は必要ですが、民間の融資と比べて返済負担が軽い設計になっているのが大きなメリットです。金利は年2.5%前後で、女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアの場合は特別利率が適用され、さらに低くなります。
返済期間を長く設定することで、月々の返済額を抑えることができ、創業初期の資金繰りを安定させることができます。
「返済不要」を謳う違法業者に注意
SNSやインターネット上で「返済不要の融資」を謳う業者には絶対に注意してください。
これらは貸金業登録をしていない違法なヤミ金業者である可能性が極めて高いです。XやInstagramなどのSNS上では、返済不要を謳って違法業者が融資の勧誘を行っている事例が多数報告されています。
違法業者から融資を受けてしまうと、「実態は高利のヤミ金業者だった」「個人情報が悪用されてしまう」「法外な利息を請求される」などのトラブルにつながります。「審査なし」「即日融資」「返済不要」といった甘い言葉で誘惑してきますが、絶対に関わらないようにしましょう。
正規の金融機関や公的機関では、必ず審査があり、返済計画を立てることが求められます。
創業融資の返済負担を軽減する3つの方法
創業融資は返済不要ではありませんが、返済負担を軽減する方法はいくつかあります。これらの制度を活用することで、創業初期の資金繰りを楽にすることができます。
方法1:据置期間を設定する
据置期間とは、元金の返済を猶予し、利息のみを支払う期間のことです。
この期間中は元金返済の負担がないため、事業開始直後の資金繰りを大幅に改善できます。日本政策金融公庫の新規開業資金では、最大5年間の据置期間を制度上は設定できます。
実務上は、設備資金で1〜2年、運転資金で6ヶ月〜1年程度が一般的です。据置期間を設定する際は、事業計画書で「なぜこの期間が必要なのか」を論理的に説明する必要があります。
例えば、「開業準備に3ヶ月、顧客獲得に3ヶ月かかるため、6ヶ月の据置期間を希望する」といった具体的な理由を示します。据置期間が長すぎると、「事業として本当に成り立つのか」と疑問を持たれる可能性もあるため、適切な期間設定が重要です。
据置期間中も利息は発生するため、完全に返済不要というわけではありませんが、月々の負担は大幅に軽減されます。
方法2:代表者が連帯保証人にならない
日本政策金融公庫の新規開業資金は、無担保・無保証人での利用が原則となっています。
法人として創業融資を受ける場合、代表者が個人保証人にならなくても融資を受けられます。これにより、万が一事業がうまくいかなかった場合でも、代表者個人の資産を守ることができます。
通常の融資では、法人代表者が連帯保証人となることが一般的ですが、創業融資ではこの負担がありません。ただし無担保・無保証だからといって、返済義務がなくなるわけではありません。返済が滞れば、法人の信用情報に傷がつき、今後の資金調達が困難になります。
また悪質な場合は、代表者個人の責任が問われる可能性もあるため、計画的な返済が重要です。
方法3:利子補給を受ける
一部の自治体では、創業融資の利息の一部または全部を補助する「利子補給制度」を実施しています。
この制度を利用することで、実質的な返済負担を軽減することができます。例えば、東京都の一部の区では、制度融資を利用した創業者に対して、利息の一部を補助する制度があります。
利子補給の期間や補助率は自治体によって異なりますが、2〜3年間、利息の半額程度を補助するケースが多いです。利子補給を受けるには、自治体が指定する創業支援セミナーを受講するなどの条件を満たす必要があります。
自分が創業する地域の自治体に、利子補給制度があるか確認してみましょう。商工会議所や商工会、自治体の産業振興課などで情報を入手できます。利子補給を受けても元金の返済は必要ですが、長期的には数十万円の負担軽減につながります。
資本性ローン|最長15年間元金返済不要の特例制度
完全に返済不要というわけではありませんが、最長15年間、元金の返済が不要となる特別な融資制度があります。それが資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)です。
資本性ローンとは何か
資本性ローンは、日本政策金融公庫が提供する特別な融資制度で、返済期間中は元金の返済が不要となります。
正確には「据置期間が融資期間全体に設定される融資」であり、返済期日に一括で返済する仕組みです。融資期間は5年、7年、10年、15年から選択でき、その期間中は利息のみを支払います。
元金の返済は期日到来時に一括で行うため、その間の月々の返済負担は利息のみとなります。資本性ローンは、負債ではなく資本とみなされるため、貸借対照表上の自己資本として計上されます。
これにより自己資本比率が改善され、金融機関からの評価が高まり、追加融資を受けやすくなるメリットがあります。業績が不確実な創業期において、元金返済の負担がないことは大きなアドバンテージとなります。
資本性ローンの対象者と条件
資本性ローンは、誰でも利用できるわけではありません。
新規開業資金、女性・若者/シニア起業家支援資金、再挑戦支援資金などの各種融資制度において、一定の条件に該当する場合に適用されます。主な対象者は、新規性や成長性のある事業を行う方、研究開発型の事業を行う方、海外展開を目指す方などです。
また地域経済の活性化に資する事業、雇用創出効果が見込まれる事業なども対象となる可能性があります。資本性ローンの利用には、認定支援機関(税理士、中小企業診断士など)の指導および助言を受けることが条件となります。
事業計画の策定から実行まで、専門家のサポートを受けながら進める必要があります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、金利は業績に応じて変動する仕組みとなっています。
資本性ローンのメリットとデメリット
資本性ローンの最大のメリットは、長期間にわたって元金返済の負担がない点です。
創業初期は売上が不安定で、返済負担が重くなりがちですが、資本性ローンなら利息のみの支払いで済みます。また自己資本とみなされるため、財務指標が改善し、追加融資や取引先からの信用も得やすくなります。
一方、デメリットとしては、通常の創業融資よりも審査が厳しく、利用のハードルが高い点があります。新規性や成長性のある事業計画が求められるため、一般的な飲食店や小売店などでは利用が難しいケースが多いです。
また金利が業績連動型となっており、赤字の場合は低金利ですが、黒字になると金利が上昇する仕組みです。返済期日には一括で元金を返済する必要があるため、その時点で十分な資金を用意しておく必要があります。資本性ローンは、将来性のある事業で大きく成長を目指す場合に適した選択肢といえます。
本当に返済不要な資金調達方法3選
創業融資は返済が必要ですが、本当に返済不要な資金調達方法も存在します。これらの方法を組み合わせることで、より安定した資金基盤を作ることができます。
方法1:補助金・助成金を活用する
補助金と助成金は、国や地方自治体が事業者を支援するために給付する返済不要の資金です。
原則として返済義務がなく、事業が失敗しても返金を求められることはありません。代表的な創業期の補助金として、小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金などがあります。
助成金では、雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金、特定求職者雇用開発助成金など)が創業期でも利用しやすいです。補助金・助成金のメリットは、返済不要で資金を調達できる点ですが、いくつかの注意点もあります。まず、ほとんどの補助金は後払い方式のため、自己資金で一旦立て替える必要があります。審査も厳しく、必ずしも採択されるとは限りません。
また事業計画書や報告書の作成など、申請手続きが複雑で時間がかかります。補助金・助成金だけで創業資金のすべてを賄うことは現実的ではないため、創業融資と組み合わせて活用することが推奨されます。
方法2:出資を受ける
親族や友人、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける方法もあります。
出資は融資と異なり、返済義務がありません。ただし出資者は株主となるため、経営に対する一定の発言権を持つことになります。
親族や友人からの出資は、比較的ハードルが低く、創業期でも受けやすい選択肢です。ただし金銭トラブルが人間関係に悪影響を及ぼす可能性があるため、契約書を作成するなど、きちんとした手続きを踏むことが重要です。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資は、成長性の高いスタートアップ企業が対象となります。一般的な飲食店や小売店などでは、出資を受けることは難しいでしょう。
出資を受ける際は、株式の持分比率に注意が必要です。過半数を出資者に握られると、経営の主導権を失う可能性があります。出資は返済不要ですが、事業が成功した場合は配当を支払う義務が発生することも理解しておく必要があります。
方法3:クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。
購入型クラウドファンディングの場合、支援者にはリターン(商品やサービス)を提供しますが、返済義務はありません。CAMPFIRE、Makuake、READYFORなどのプラットフォームが有名で、様々なプロジェクトが資金調達に成功しています。
クラウドファンディングのメリットは、資金調達だけでなく、商品やサービスの市場テストができる点です。支援者からのフィードバックを受けることで、商品改善やマーケティング戦略の見直しにもつながります。
また支援者がファンとなり、事業の応援団として継続的に応援してくれる可能性もあります。一方、目標金額に達しない場合は資金を受け取れない(All or Nothing方式)リスクもあります。プロジェクトページの作成、支援者への情報発信、リターンの発送など、相応の労力も必要となります。クラウドファンディングは、ストーリー性のある商品やサービス、社会的意義のある事業に向いています。
創業融資と返済不要な資金調達を組み合わせる戦略
最も現実的で効果的なのは、創業融資と返済不要な資金調達を組み合わせる方法です。それぞれの特徴を理解し、最適なバランスで活用しましょう。
創業融資をベースに補助金で上乗せする
基本的な開業資金は創業融資で調達し、補助金で設備投資や販促費を補う戦略が有効です。
例えば、日本政策金融公庫から1,000万円の創業融資を受け、小規模事業者持続化補助金で50万円を獲得するといった組み合わせです。創業融資は審査から融資実行まで2週間〜1ヶ月と比較的早いため、開業準備を進めることができます。
補助金は後払いのため、創業後に申請し、認められれば返済不要の資金を追加で獲得できます。この方法により、自己資金の負担を最小限に抑えながら、十分な開業資金を確保することができます。
自己資金+融資+補助金の3本柱で資金計画を立てる
最も安定した資金調達の形は、自己資金、創業融資、補助金の3本柱で構成することです。
例えば、総額1,500万円の開業資金が必要な場合、自己資金500万円、創業融資800万円、補助金200万円といった配分です。自己資金を3分の1程度用意することで、創業融資の審査通過率が大幅に高まります。
創業融資で大部分の資金を調達し、補助金で設備投資や販促活動の資金を補います。この方法により、返済負担を適切な範囲に抑えながら、事業に必要な資金を確保できます。
また万が一、事業がうまくいかなかった場合も、自己資金と補助金の割合が高いほど、返済負担が軽くなります。
創業融資の返済実績で追加融資を受けやすくする
創業融資を計画通りに返済していくことで、金融機関からの信用が蓄積されます。
返済実績があれば、事業拡大のための追加融資を受けやすくなります。創業から6ヶ月〜1年程度経過し、売上が安定してきた段階で追加融資を申し込むのが一般的です。
追加融資の審査では、初回融資時よりも実績が重視されるため、売上や利益の推移、計画との対比などを明確に示す必要があります。また創業融資を完済すれば、その実績が信用情報として残り、将来的な資金調達がさらにスムーズになります。
創業融資は単なる資金調達手段ではなく、金融機関との信頼関係を構築する第一歩でもあるのです。
創業融資の返済で困ったときの対処法
計画通りに事業が進まず、返済が困難になった場合の対処法も知っておきましょう。早めの対応が、問題解決の鍵となります。
返済が難しくなったらすぐに相談する
返済が困難になった場合、最も重要なのは、返済日を過ぎる前に金融機関に相談することです。
日本政策金融公庫では、返済条件の変更(リスケジュール)に応じてくれる可能性があります。返済期間の延長、一時的な返済額の減額、据置期間の追加設定など、状況に応じた対応が検討されます。
黙って延滞することが最も悪い対応で、信用を大きく損ない、今後の融資が一切受けられなくなる可能性があります。早期に相談することで、金融機関も協力的に対応してくれるケースが多いです。
相談の際は、現在の経営状況、返済が困難になった理由、今後の改善計画などを具体的に説明しましょう。一時的な売上減少であれば、リスケジュールで乗り切れる可能性が高いです。
経営改善計画を立てて再建を目指す
返済条件の変更を受けるには、経営改善計画の提出が求められることが一般的です。
経営改善計画では、現状分析、問題点の特定、改善策、具体的な行動計画、収支見通しなどを示します。税理士や中小企業診断士などの専門家のサポートを受けながら、実現可能な計画を立てることが重要です。
認定支援機関の支援を受けることで、経営改善計画の策定から実行までをサポートしてもらえます。また各都道府県の「中小企業再生支援協議会」でも、無料で経営改善の相談に応じています。
事業を継続する意思があり、改善計画が妥当であれば、金融機関も協力してくれる可能性が高いです。返済が困難になっても、諦めずに専門家に相談し、再建に向けて行動することが大切です。
まとめ
創業融資は返済不要ではありません。
融資である以上、必ず返済する義務があり、「返済不要の融資」という言葉自体が矛盾しています。しかし据置期間の設定、無担保・無保証の活用、利子補給制度などにより、返済負担を軽減することは可能です。
また資本性ローンを利用すれば、最長15年間、元金返済が不要となる特例制度もあります。本当に返済不要な資金調達方法としては、補助金・助成金、出資、クラウドファンディングがあります。
最も効果的なのは、創業融資をベースに、補助金などの返済不要な資金を組み合わせる戦略です。自己資金、創業融資、補助金の3本柱で資金計画を立てることで、返済負担を適切に抑えながら、事業に必要な資金を確保できます。
本記事で解説した内容を参考に、正しい知識を持って、最適な資金調達を実現してください。

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・開業予定の業種に関する経験や実績
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