創業融資 公庫|2025年最新版|審査通過率を90%にする完全マニュアル

起業したいけれど資金が足りない、そんな悩みを抱えていませんか。
日本政策金融公庫(通称「公庫」)は、政府が100%出資する政策金融機関で、創業期の事業者を積極的に支援しています。
本記事では、公庫の創業融資について、2024年4月の最新制度変更を踏まえながら、審査通過のノウハウまで徹底解説します。
この記事の監修
中小企業診断士 関野 靖也
大学卒業後、大手IT企業にて、システムエンジニアとして勤務。株式会社ウブントゥ創業後は補助金申請支援実績300件以上、経営力向上計画や事業継続力向上計画など様々な公的支援施策の活用支援。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関
中小企業庁 情報処理支援機関
中小企業庁 M&A支援機関
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会
経済産業大臣登録 中小企業診断士
公庫の創業融資とは?2024年4月の制度変更で何が変わった
公庫の創業融資は、営業実績がない創業期でも利用できる融資制度です。2024年4月に大きな制度変更があり、これまで以上に利用しやすくなりました。
公庫が創業者に選ばれる3つの理由
公庫が創業者から圧倒的に支持される理由は、民間金融機関にはない3つの強みがあるからです。
第一に、無担保・無保証人で融資を受けられる点です。
法人代表者であっても個人保証が不要となるため、万が一事業がうまくいかなかった場合でも個人資産を失うリスクがありません。
第二に、実績がなくても融資審査の対象となる点です。
民間銀行では決算書や営業実績を重視しますが、公庫では事業計画の実現可能性や経営者の経験を中心に評価します。
第三に、低金利で長期返済が可能な点です。
2025年時点で年2.5%前後の金利で借り入れでき、返済期間も設備資金で最長20年、運転資金で最長10年と長期に設定できます。
2024年4月の制度変更|3つの重要ポイント
2024年4月に新創業融資制度が廃止され、新規開業資金に統合される形で大幅にリニューアルされました。この変更により、創業者にとって使いやすい制度へと進化しています。
ポイント1は、自己資金要件の撤廃です。
従来は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必須要件でしたが、この要件が撤廃され、理論上は自己資金ゼロでも申込が可能になりました。ただし実際の審査では自己資金の有無が重視されるため、十分な準備が必要です。
ポイント2は、融資限度額の大幅引き上げです。
従来の3,000万円から7,200万円(うち運転資金4,800万円)へと2倍以上に拡充されました。
これにより設備投資が必要な業種や、規模の大きい創業でも十分な資金を調達できるようになりました。
ポイント3は、返済期間の延長です。
運転資金の返済期間が原則7年以内から10年以内に延長されたことで、月々の返済負担を軽減し、資金繰りに余裕を持った経営が可能になりました。
新創業融資制度廃止後の新規開業資金
新創業融資制度は2024年3月末で廃止されましたが、その機能は新規開業資金に統合されています。新規開業資金は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。
無担保・無保証人での利用が原則となり、基準利率から0.65%の利率引下げが適用されます。業種や事業規模を問わず幅広い創業者が利用できる、最もスタンダードな創業融資制度といえます。
融資の審査では、創業計画書の内容、経営者の経験、自己資金の準備状況などが総合的に評価されます。
公庫の創業融資の種類|自分に最適な制度を選ぶ
公庫では、創業者の状況や事業内容に応じた複数の融資制度を用意しています。自分に合った制度を選ぶことで、より有利な条件で資金調達が可能になります。
新規開業資金(最もスタンダードな制度)
新規開業資金は、公庫の創業融資の中で最も基本となる制度です。新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象となります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内です。
据置期間は5年以内で設定でき、創業直後の返済負担を軽減できます。基準利率から0.65%の引下げが適用され、年2.5%前後の低金利で借り入れが可能です。
業種や規模を問わず利用できる汎用性の高い制度で、多くの創業者がこの制度を活用しています。申込に際しては創業計画書の提出が必須となり、事業内容や資金計画を明確に示す必要があります。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアによる起業を支援する特別な制度です。融資条件は新規開業資金と同じですが、特別利率が適用されるため、さらに低い金利で借り入れができます。この制度は、多様な人材による起業を促進し、経済の活性化を図ることを目的としています。
女性起業家の増加や、若年層・シニア層の経験を活かした起業を後押しする重要な役割を担っています。年齢や性別の要件を満たしていれば、特別な手続きなく優遇金利が自動的に適用されます。該当する方は積極的に活用すべき制度といえるでしょう。
融資審査の基準は新規開業資金と同様ですが、金利面での優遇により長期的な返済負担を軽減できます。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
過去に事業に失敗した経験がある方の再起業を支援する制度です。廃業歴があっても、その経験を活かして新たな事業に挑戦する場合、融資を受けることができます。対象となるのは、廃業時の負債を返済している、または返済計画が明確になっている方です。融資限度額や返済期間は新規開業資金と同様で、特別利率が適用されます。
一度の失敗で起業を諦めることなく、再チャレンジできる環境を整えることは、イノベーション創出の観点からも重要です。公庫は、こうした再起業を積極的に支援する姿勢を明確にしています。
審査では、前回の失敗から何を学び、どう活かすのかという点が重視されます。失敗の原因分析と対策を明確に示すことで、審査担当者の信頼を得ることができます。
中小企業経営力強化資金
認定支援機関(税理士、中小企業診断士など)のサポートを受けて事業計画を策定する場合に利用できる制度です。専門家の関与により、より精度の高い事業計画を作成でき、融資審査においても有利に働きます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、特別利率が適用されます。
「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用することが要件の一つとなります。事業計画の策定から融資後のフォローまで、認定支援機関の継続的なサポートを受けられるため、創業後の経営安定にもつながります。
初めての起業で不安がある方や、事業計画の作成に自信がない方に特におすすめの制度です。専門家の費用は発生しますが、融資獲得の確実性が高まることを考えれば、投資価値は十分にあるといえます。
公庫の創業融資|申込から融資実行までの完全ガイド
公庫の創業融資を受けるには、適切な手順で申込を進めることが重要です。各ステップでのポイントを理解し、スムーズな融資獲得を目指しましょう。
ステップ1:事前相談と情報収集
融資申込の前に、まず事前相談を行うことを強くおすすめします。
公庫では全国152の支店で相談を受け付けており、創業ホットライン(0120-154-505)では平日9:00〜19:00まで専任スタッフが相談に応じています。事前相談では、利用できる融資制度の確認、必要書類の説明、審査のポイントなどを聞くことができます。また各支店で定期的に開催される創業支援セミナーや個別相談会に参加することもおすすめです。
セミナーでは創業計画書の書き方や審査のポイント、先輩起業家の体験談などを学べます。オンライン相談も可能で、Microsoft Teamsを使った面談を希望日の2営業日前16時までに予約することができます。近くに支店がない方や、忙しくて支店に行けない方でも気軽に相談できる環境が整っています。
ステップ2:必要書類の準備
創業融資の申込には、以下の書類が必要となります。
借入申込書、創業計画書、設備資金の見積書(該当する場合)、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類、預金通帳のコピー(過去6ヶ月分程度)、源泉徴収票または確定申告書のコピー、不動産の登記簿謄本(担保提供する場合)などです。
特に重要なのが創業計画書です。
公庫の所定様式がありますが、それに加えて詳細な事業計画書を添付することで、審査担当者への説得力が大幅に増します。
創業の動機、経営者の略歴、取扱商品・サービス、ターゲット顧客、競合分析、販売戦略、収支計画などを具体的に記載しましょう。
売上予測については、根拠となるデータや計算式を明確に示すことが重要です。
「初月から満席」「初年度から黒字」といった楽観的すぎる計画ではなく、事業が軌道に乗るまでの期間を考慮した堅実な計画を示すことが信頼につながります。
書類に不備があると審査が遅れたり、印象が悪くなったりする可能性があるため、チェックリストを作成して漏れのないよう準備することが大切です。
ステップ3:申込と面談
書類が揃ったら、管轄の支店に申込を行います。
原則として、創業する場所(事業を行う場所)を管轄する支店に申し込むことになります。管轄支店は公庫のウェブサイトで確認できますが、不明な場合は最寄りの支店に電話で問い合わせるのが確実です。
申込後、書類審査を経て面談の日程が調整されます。
面談は融資の可否を左右する非常に重要なプロセスで、通常30分〜1時間程度行われます。
想定される質問として、創業の動機、事業内容の詳細、競合との差別化ポイント、売上予測の根拠、資金の使い道、返済計画などがあります。
これらの質問に対して、創業計画書の内容を完全に理解した上で、自分の言葉で説明できるよう準備しておく必要があります。
特に売上予測については、「なぜその数字が達成できるのか」を具体的な根拠を示しながら説明することが最重要です。
ステップ4:審査と融資実行
面談後、公庫内部で融資の可否が審査されます。
申込から融資実行までの期間は、通常2週間〜1ヶ月程度です。
ただし書類に不備がある場合や、審査内容が複雑な場合は、それ以上の時間がかかることもあります。特に確定申告時期(2月〜3月)や決算期は混雑するため、余裕を持ったスケジュールで申込を進めることをおすすめします。
融資が承認されると融資決定通知が届き、契約手続きを経て指定の口座に資金が振り込まれます。
融資実行後は、資金使途通りに資金を使用し、定期的に経営状況を報告する義務があります。
公庫は融資後のフォローにも力を入れており、経営相談や各種セミナーを通じて継続的な支援を提供しています。
審査通過率を90%にする|公庫が重視する4つのポイント
公庫の創業融資審査通過率は一般に50〜60%程度といわれています。
しかし適切な準備により、審査通過率を90%程度まで高めることが可能です。
ポイント1:自己資金は創業資金総額の3分の1を目指す
自己資金は、審査において最も重視される要素の一つです。
2024年4月から自己資金要件は撤廃されましたが、実際の審査では自己資金の有無が大きく影響します。創業融資を成功させたいなら、創業資金総額の3分の1程度は自己資金を用意しておくのが理想的です。自己資金が多いほど「事業への本気度」「計画性」「返済能力」が高いと評価され、融資額も大きくなる傾向があります。
自己資金として認められるのは、通帳などで形成過程が確認できる預貯金です。タンス預金や直前に借りた資金、見せ金などは自己資金として認められません。少なくとも創業の半年前から計画的に資金を貯めている実績を示すことが重要です。
「毎月コツコツ通帳に貯める」のが鉄則で、貯金箱やタンス預金では記録が残らないため、「誰かに借りたお金では?」と疑われる可能性があります。
通帳には不自然な入出金がないよう注意し、公共料金やクレジットカードの支払い遅延がないようにしましょう。
ポイント2:事業計画書は「実現可能性」と「具体性」が命
事業計画書は、審査担当者が事業の実現可能性を判断する最重要書類です。
優れた事業計画書には、具体性、実現可能性、論理性が求められます。
売上予測については、楽観的すぎる数字ではなく、根拠のある現実的な計画を立てることが信頼につながります競合分析では、競合他社の強みと弱みを分析し、自社の差別化ポイントを明確に示すことが重要です。「競合はいない」「すべて自社が優位」といった分析は現実的でなく、かえって信頼を損ないます。
また取引先候補や仕入先の具体名を挙げることで、事業の実現可能性を高めることができます。すでに見込み顧客がいる場合は、その具体的な情報(企業名、取引予定額など)を示すことで、大きなプラス評価となります。
ターゲット顧客についても、「20〜30代の女性」といった漠然とした設定ではなく、「子育て中の30代女性で、年収400万円以上、都心在住」といった具体的なペルソナ設定が効果的です。
収支計画では、売上、原価、経費を詳細に積み上げ、月次の収支推移を示すことが重要です。
ポイント3:経営者の経験と信用情報は事前にチェック
創業する事業に関連する業界での勤務経験は、大きなプラス要因となります。
同業種での6年以上の勤務経験や、管理職としての経験があれば、審査で高く評価されます。
全く未経験の業種で起業する場合は、なぜその事業を選んだのか、どのようにノウハウを獲得したのかを説明できるようにしましょう。
また経営者個人の信用情報も厳しくチェックされます。過去にクレジットカードやローンの返済遅延、債務整理、自己破産などの金融事故がある場合、審査に悪影響を及ぼします。携帯電話料金の滞納も信用情報に記録されるため、日常的な支払いにも注意が必要です。
融資を検討する段階で、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターなどの信用情報機関で自身の信用情報を確認しておくことをおすすめします。
もし信用情報に問題がある場合は、その理由を正直に説明し、現在は改善されていることを示すことが重要です隠そうとすると、かえって印象が悪くなる可能性があります。
ポイント4:返済計画は保守的に、据置期間は6ヶ月が標準
「借りた資金を確実に返済できるか」は、審査の核心部分です。
事業の収支計画と返済スケジュールを整合的に組み立て、返済原資の裏付けを明確に示す必要があります。月々の返済額が事業収支を圧迫しないよう、返済期間を適切に設定することが重要です。
据置期間(元金返済を猶予し、利息のみを支払う期間)は6ヶ月で設定するケースが多いです。創業直後は、顧客の獲得や販路の確保、オペレーションの整備など、収益化に向けた準備期間が必要です。一般的に、開業から売上がある程度安定するまでに最低でも3〜6カ月かかるといわれており、公庫もそれを見込んでいます。
一方で、1年以上など長い据置期間を希望すると、「事業として大丈夫か?」と公庫に不安を与える可能性もあります。もし据置期間を1年以上と長めに設定したい場合は、きちんと理由を説明する必要があります。
理由もなく据置期間を長く設定すると、売上の目途が立っていないのではないか、きちんと返済できるのだろうかと、いらない心配をされてしまい、融資の審査にも影響が出る可能性があります。
専門家サポートで審査通過率を90%にする方法
創業融資の成功率を劇的に高めるために、専門家のサポートを活用することも有効な戦略です。適切なサポートを受けることで、審査通過率を大幅に向上させることができます。
認定支援機関のサポートを受けるメリット
通常、創業融資の審査通過率は50〜60%程度といわれています。
しかし、税理士など専門家のサポートを受けると、審査通過率は90%程度までアップします。
認定支援機関とは、中小企業の経営支援に関する専門的知識や実務経験を持つ機関として、国から認定を受けた税理士、公認会計士、中小企業診断士などの専門家です。認定支援機関のサポートを受けて事業計画を策定すると、中小企業経営力強化資金という有利な融資制度を利用できます。また専門家の関与により、事業計画の質が向上し、審査担当者からの信頼も得やすくなります。
認定支援機関は、事業計画書の作成支援、融資申込書類のチェック、面談対策、融資後のフォローまで、トータルでサポートしてくれます。特に事業計画書の数値計画(売上予測、収支計画)の精度を高めることができ、審査担当者を納得させる説得力のある計画を作成できます。
税理士サポートの選び方
税理士は数多く存在しますが、創業融資に強い税理士を選ぶことが重要です。
創業融資の支援実績が豊富で、公庫との関係が良好な税理士を選びましょう。具体的な選定ポイントとして、創業融資の支援実績件数、審査通過率、サポート内容の具体性、報酬体系の明確さなどが挙げられます。報酬体系については、着手金と成功報酬の組み合わせが一般的です。
完全成功報酬を謳う業者もありますが、出資法との関係で違法となる可能性があるため注意が必要です。初回相談は無料で受け付けている税理士が多いため、複数の税理士に相談してから決定することをおすすめします。
相談時には、自分の事業について理解し、適切なアドバイスをしてくれるか、相性が良いかなども確認しましょう。
創業支援セミナーと個別相談会の活用
公庫では、定期的に創業支援セミナーや個別相談会を開催しています。
これらのイベントに参加することで、融資制度の最新情報を得られるだけでなく、融資担当者と直接コミュニケーションを取る機会も得られます。セミナーでは、創業計画書の書き方や、審査のポイント、先輩起業家の体験談などを学ぶことができます。また個別相談会では、自分の事業計画について具体的なアドバイスを受けることができます。
こうした機会を通じて、融資担当者に自分の事業を知ってもらうことは、審査においてプラスに働く可能性があります。
公庫のウェブサイトでセミナー情報を確認し、積極的に参加することをおすすめします。参加は無料で、予約制となっているため、早めに申し込むことが重要です。
公庫と制度融資の違い|どちらを選ぶべきか
創業融資を検討する際、公庫と自治体の制度融資のどちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に最適な選択をすることが重要です。
公庫のメリット・デメリット
公庫のメリットは、申込から融資実行までのスピードが速い点です。通常2週間〜1ヶ月程度で融資が実行されるため、急ぎの資金需要にも対応できます。また全国152の支店で統一された審査基準が適用されるため、地域による差がありません。
無担保・無保証人での利用が原則で、法人代表者の個人保証も不要です。融資実行後のフォローも充実しており、経営相談や各種セミナーを通じた継続的な支援を受けられます。
デメリットとしては、金利が制度融資よりも若干高くなる場合がある点です。また審査に落ちてしまうと6か月間は再申請が難しいため、初回申請での成功が重要となります。
制度融資のメリット・デメリット
制度融資は、自治体が主体となり金融機関と信用保証協会が提携して行う融資制度です。
メリットは、自治体によっては利子補給や保証料の補助を受けられるため、実質的な負担を軽減できる点です。地域密着型のきめ細かい支援を受けられることも魅力です。
デメリットは、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が関与するため、融資実行までに1ヶ月半〜2ヶ月程度と時間がかかる点です。また保証料の負担が発生し、法人代表者の個人保証が原則として必要となります。自治体によって制度内容や条件が異なるため、自分の地域の制度をよく確認する必要があります。
協調融資という選択肢
公庫と制度融資(または民間金融機関)から同時に融資を受ける「協調融資」という方法もあります。
複数の融資を組み合わせることで、一つの融資では足りない金額を確保することができます。ただし、どちらかの融資の審査を通過できなかった場合、どちらからも融資を受けられなくなってしまうリスクもあります。そのため、まずは審査に通る可能性の高い公庫の融資を申し込み、その後に銀行や信用金庫からの融資を検討するとよいでしょう。
公庫からの融資実績があると、民間金融機関からの信用も得やすくなり、将来的な融資相談がスムーズになります。
よくある失敗事例と対策
公庫の創業融資で失敗する事例には、いくつかの共通パターンがあります。これらを事前に理解し、対策を講じることで審査通過の可能性を高めることができます。
失敗事例1:自己資金不足と見せ金の問題
最も多い失敗事例は、自己資金が不足しているケースです。
特に直前に親族から借りた資金や、タンス預金を通帳に入金したものは、自己資金として認められない可能性が高いです。対策としては、少なくとも創業の半年前から計画的に通帳に貯金していく必要があります。毎月の給与から一定額を貯蓄し、その過程が通帳で確認できる状態にしておくことが重要です。
もし親族から資金援助を受ける場合は、贈与契約書を作成し、贈与税の申告を行うなど、正式な手続きを踏むことで自己資金として認められる可能性が高まります。
また退職金や保険の解約返戻金なども、その出所が明確であれば自己資金として認められます。
失敗事例2:楽観的すぎる事業計画
「初月から満席」「初年度から黒字」といった楽観的すぎる事業計画は、審査担当者の信頼を得られません。
特に飲食店や美容室など競合が多い業種では、顧客獲得に時間がかかることが一般的です。対策としては、事業が軌道に乗るまでの期間を現実的に見積もり、その間の資金繰りも計画に含めることです。同業種の先輩起業家にヒアリングを行い、実際の売上推移を参考にすることも有効です。
また売上予測の根拠を明確に示すことが重要です。「1日〇〇人の来客×客単価〇〇円×営業日数」といった具体的な計算式を示し、その前提条件(来客数の根拠など)を説明できるようにしましょう。
失敗事例3:事業経験の不足を説明できない
全く未経験の業種で起業する場合、審査で不利になる可能性があります。
特に専門知識や技術が必要な業種(飲食、美容、IT、建設など)では、経験の有無が重視されます。
対策としては、未経験でも起業できる理由を明確に説明することです。例えば、業界の専門家をアドバイザーとして招聘する、フランチャイズに加盟して本部のサポートを受ける、十分な研修期間を設けるなどの対策を示すことで、不安を払拭できます。
また開業前に短期間でも関連業種で働いたり、資格を取得したりすることで、準備の本気度を示すことができます。
失敗事例4:信用情報の問題
クレジットカードやローンの返済遅延、携帯電話料金の滞納などがあると、審査に大きく影響します。
特に直近1〜2年以内の遅延は致命的です。対策としては、融資申込の少なくとも1年前から、すべての支払いを期日通りに行うことです。もし過去に遅延歴がある場合は、その理由を正直に説明し、現在は改善されていることを示すことが重要です。
また融資申込前に、自分の信用情報を確認しておくことをおすすめします。CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターで開示請求ができます。
融資実行後の注意点|公庫との良好な関係を維持する
融資を受けたら終わりではありません。融資実行後も公庫との良好な関係を維持することで、追加融資や経営支援を受けやすくなります。
資金使途を守り、報告義務を果たす
融資で受け取った資金は、申込時に申請した使途通りに使用する必要があります。
設備資金として借りたのに運転資金に使う、運転資金として借りたのに別の目的に使うといった流用は厳禁です。資金使途違反が発覚すると、一括返済を求められたり、今後の融資が受けられなくなったりする可能性があります。
また公庫からは定期的に経営状況の報告を求められます。試算表や決算書の提出、事業の進捗状況の説明などに誠実に対応することで、信頼関係を築くことができます。報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりすることは、今後の融資や支援に悪影響を及ぼします。
返済は絶対に遅らせない
融資の返済は必ず期日通りに行うことが鉄則です。返済が遅れると、遅延損害金が発生するだけでなく、信用を大きく損ないます。
今後の追加融資も受けられなくなる可能性が高いです。もし事業がうまくいかず返済が困難になった場合は、返済日を過ぎる前に必ず公庫に相談しましょう。
早期に相談することで、返済計画の見直し(リスケジュール)などの対応を検討してもらえる可能性があります。黙って延滞するのが最も悪い対応です。
追加融資のタイミング
事業が軌道に乗り、さらなる成長のために資金が必要になった場合、追加融資を検討することができます。
追加融資を受けるための条件として、当初の融資を計画通りに活用していること、返済を延滞なく行っていること、事業が順調に成長していることなどが挙げられます。
一般的に、初回融資から6ヶ月〜1年程度経過し、事業実績を示せる段階で追加融資を申し込むのが適切なタイミングです。追加融資の審査では、初回融資時よりも実績が重視されるため、売上や利益の推移、計画との対比などを明確に示すことが重要です。
公庫との定期的なコミュニケーションを通じて、事業の成長を報告し続けることで、追加融資の相談もスムーズに進められます。
まとめ|公庫の創業融資で起業を成功させる
公庫の創業融資は、実績のない創業期でも資金調達できる貴重な制度です。
2024年4月の制度変更により、融資限度額が7,200万円に拡充され、より多くの創業者が十分な資金を調達できる環境が整いました。融資獲得のためには、十分な自己資金の準備(創業資金総額の3分の1が目安)、質の高い事業計画書の作成、面談対策の徹底が不可欠です。
また専門家のサポートを活用することで、審査通過率を50〜60%から90%程度まで高めることができます。
公庫の創業融資は、単なる資金調達の手段ではなく、事業を成功に導くパートナーを得ることでもあります。融資実行後も公庫との良好な関係を維持し、経営相談や追加融資などの支援を活用することで、事業の成長を加速させることができます。
本記事で解説した内容を参考に、しっかりと準備を進めて、あなたの起業を成功に導く資金調達を実現してください。公庫の創業融資を活用し、夢の実現に向けて確実な一歩を踏み出しましょう。

現状の準備で創業融資を受けられるか、不安はありませんか?
金融機関の融資審査では、以下のような基準が重視されます。
・開業予定の業種に関する経験や実績
・融資希望額に対してどの程度の自己資金を準備しているか
・信用情報や返済に関する過去の履歴
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